2009年12月10日

●インフルエンザについてどれほど知っているか

 インフルエンザの感染がなかなかとまらないでいます。しかし、それ
でいて今のところインフルエンザによる死亡率が一定の範囲におさまっ
ているところから国民の間には根拠のない安心感が生まれ、それに伴い
若干の油断が生じつつあるようです。「なぁんだ!風邪と一緒じゃない
か」、「だいたい日本政府のやっていることは大袈裟なんだ」というよ
うにです。
 しかし、これは大きな間違いです。今回のインフルエンザの死亡率が
この程度でおさまっているのは、各国政府が高病原性鳥インフルエンザ
ウイルスによるパンデミック(大流行)を想定して対策を進めてきたか
らなのです。
 確かに学校閉鎖や保育園の閉鎖によって親が出勤できず、ただでさえ
厳しい雇用情勢を一層悪化させたことや、各種集会の中止による経済的
な被害が出たことから、政府の対応を過剰として非難する声が多く出た
ことは事実です。しかし、そうしたからこそ、インフルエンザのさらな
る拡大を事前に防げたともいえるのです。
 しかしインフルエンザについてあなたはどれほどご存知でしょうか。
いわゆる「風邪」のようなものと誤解していないでしょうか。インフル
エンザを防ぐにはマスクや手洗い、うがいの励行などに加えてインフル
エンザに対して正しい深い知識を持つことが大切なのです。そこで、し
ばらくインフルエンザについてお話しすることにします。

●WHOはなぜパンデミック宣言を躊躇したのか

 2009年6月11日のことです。世界保健機関(WHO)のマーガ
レット・チャン事務局長は、ジュネーブで緊急記者会見を開き、新型イ
ンフルエンザの警戒水準を「フェーズ6」に引き上げる宣言をしたので
す。この「フェーズ6」というのは、新型インフルエンザの警戒水準の
最高ランクであり、パンデミック──世界的大流行を意味するランクな
のです。
 実はWHOとしては、5月の時点で北米だけでなく、英国、スペイン
などでも新型インフルエンザの感染者が急増していることを把握してい
たのですが、なぜかWHOは、パンデミック宣言に慎重であったのです。
 それには2つ理由があります。
 1つは、今回の新型インフルエンザウイルスがA型のH1N1亜型で
あったことです。インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型の3つ
に分類されるのですが、パンデミックを起こす可能性があるのはA型で
す。
 しかし、タイプがH1N1亜型であり、これは1918年に世界で大
流行しスペイン風邪ウイルスと同じ亜型であったのです。このウイルス
はその末裔が依然として毎年のように流行を繰り返しており、ほとんど
の人が免疫を持っていると考えられることです。それなら、パンデミッ
ク宣言を少し待って様子を見た方がよいのではないかという判断が働い
たのです。
 スペイン風邪というのは、規模、死亡率がいずれも大きく、感染者数
が6億人に及んで、2000万〜4000万人の死者を出し、それが第
1次世界大戦終結の遠因にもなったともいわれているのです。
 2つは、冒頭にも述べたように、日本をはじめ各国政府は、高病原性
鳥インフルエンザウイルスによるパンデミックを想定して対策をとって
いるので、下手にパンデミック宣言をすると世界中が混乱する──WH
Oはこのように考えたものと思われます。

●WHOの2つのシナリオのひとつは崩れる

 WHOとしては、今回の新型インフルエンザについて、2つのシナリ
オを立てていたのです。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 第1のシナリオ:比較的早期に感染拡大がおさまり、やがてウイルス
は姿を消す
 第2のシナリオ:感染拡大が続き、夏場の一時的な収束期を経て冬に
大流行する
――――――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、12月に入ってもインフルエンザは収束の兆しがない状態で
あって現在では第2のシナリオに沿ったパンデミックになることは確実
です。このシナリオによると、最悪の場合は3000万人、日本人の4
人に1人は感染する可能性があるとしています。
 これに関連して、WHOのフクダ事務局長補代理は次のように警告し
ているのです。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 新型インフルエンザが世界的な大流行に発展した場合、今後2年以内
に世界人口の20〜40%程度が感染する恐れがある。
──河岡義裕/河本研子著/ブルーバックスB1647
『インフルエンザ パンデミック/新型ウイルスの謎に迫る』
――――――――――――――――――――――――――――――――
 そもそも新型インフルエンザウイルスとは何なのか──次回はこうい
う基本的なことを迫っていきます。
―― [インフルエンザの話/01]

posted by キーヘルス at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | インフルエンザの話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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