2010年05月06日

●救急車が病院に着くまでの時間が過去最長を更新している

 人間には「突然死」のリスクがあります。突然死のほとんどは、「心
臓突然死」です。突然死は年間にして5〜7万人と推定されますが、こ
のうち76%が冠動脈疾患が原因であるといわれます。
 1995年の東京都監察医務院における健康者突然死の死因を示すデ
ータがあります。
――――――――――――――――――――――――――――――――
           全体      男性      女性
         318人    230人     88人
        ―――――――――――――――――――――
   心血管疾患  72%     76%     60%
  冠動脈心疾患  58%     62%     46%
   脳血管疾患  11%      4%     30%
   消化器疾患   8%     11%      1%
   呼吸器疾患   3%      3%      5%
         ──東京都監察医務院/1995データより
――――――――――――――――――――――――――――――――
 心臓病は一刻を争う場合が多いのです。病人を一刻も早く病院に連れ
て行く必要があります。この場合、救急車が通報を受けてから病院に搬
送するまでの時間が生死のカギを握ります。
 2007年のデータですがその時間は「全国平均で33・4分」と、
この時点で過去最長になっているのです。2007年以降多くの病院が
潰れており現在ではこの時間はさらに伸びているものと思います。
 総務省消防庁のまとめたデータによると、全国で救急車で搬送された
合計の490万2753人のうち、病院到着までに2時間以上かかった
人は1万7580人であり、そのうち9282人が「急病人」の扱いだ
ったのです。
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    ≪病院までの到着時間≫
    30分〜1時間 ・・・・・・・・・・ 44.1%
    20分〜30分 ・・・・・・・・・・ 35.7%
    10分〜20分 ・・・・・・・・・・ 13.6%
    ≪地域別≫
     東京 ・・・・・・・・・ 47分 ←最長
     埼玉 ・・・・・・・・・ 39分
     千葉 ・・・・・・・・・ 37分
     岩手・茨城・栃木・・・・ 36分
     富山 ・・・・・・・・・ 25分 ←最短
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●突然死の起きやすい「入浴時」

 突然死の原因になるものはいろいろあります。突然死の第1位は「就
寝中」ですが、第2位は「入浴中」なのです。京都大学保健管理センタ
ーの調査によると、全国で毎年2万人弱が入浴中に突然死しています。
その内訳は「溺死」が2割、「病死」は8割といわれています。
 それでは、入浴中に突然死が起きるのはなぜでしょうか。長山雅俊医
師は次の4つの原因を上げています。
――――――――――――――――――――――――――――――――
         1.水分の不足
         2.水圧が静脈を圧迫する
         3.居眠りが起きやすい
         4.血圧の急降下
     ――長山雅俊著、『心臓が危ない』/祥伝社新書156
――――――――――――――――――――――――――――――――
 入浴すると、200〜300CCの水分が失われるといわれます。若
い人の場合は冷たい水を飲みたくなるので水分は補給されますが、高齢
者になると、喉の渇きは自覚されにくくなり、血管内に血栓のできる原
因になります。
 湯船に入り、体を沈めると、強い水圧が体全体にかかります。これに
よって静脈圧が上昇し、心臓に戻ってくる血液が増加して、それを弱っ
た心臓が処理できなくなると息切れが起きます。したがって、首までど
っぷりと浸からないようにする必要があります。
 また、入浴すると血管が広がるのです。そうすると、副交感神経が働
いて、居眠りをしてしまうことがあります。高齢者の場合、そのまま意
識が薄れて、溺死してしまう恐れがあります。
 このように入浴すれば血圧は上昇するのですが、それよりも危険なの
はその後、血圧が急速に下がることです。とくに高齢者の場合は、入浴
後5分ぐらいで、入浴前より血圧が5〜30%低下します。これによっ
て意識障害がおき、フラフラして倒れてしまう恐れもあるのです。
 これらの4つのことを頭において、入浴をすること──これによって
入浴時の突然死のほとんどは防げるのです。
――――――――――――――― ―― [心臓について知る/10]
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2010年05月13日

●突然死は運動中に起きることが多い

 どういうときに突然死は起きるのでしょうか。
 ある小学校の運動会での話です。運動会当日、あいにく雨が降ってい
たのです。あまり激しい雨ではないし、行事も立て混んでいたので、雨
天強行したのです。肌寒い中無理やり競技をはじめたのですが、ある少
女がリレーでバトンを次の走者に渡した直後に倒れ、意識不明になった
のです。必死の心臓マッサージも空しく少女は亡くなってしまったので
す。
 原因は、準備体操不足でした。晴天であれば、式典のあとで生徒全員
で体操をする予定が組まれていたのですが、雨天のため、式典と準備体
操を省略して競技に入ってしまったのです。
 東京都監察医務院の調査──1948年から1999年にかけて東京
都内で運動中に亡くなった事例によると、52年間に534人が亡くな
り、年齢別では10代が116人と最多であり、第2位は50代の83
人だったのです。
 それでは、どういう競技で亡くなるケースが多いのでしょうか。50
歳未満と50以上に分けて示します。
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      ☆50歳未満       ☆50歳以上
       1.ランニング      1.ゴルフ
       2.水泳         2.ダンス
       3.野球         3.ゲートボール
――――――――――――――――――――――――――――――――
 ちなみに突然死した人の死因を詳しく調べてみると、ほとんどが「病
歴なし」の人が多く、健康体の人が多かったのです。それに一番危険な
のは、自分は健康だと過信することです。とくに運動では準備体操は必
要であり、これを省略して競技に入ることは絶対にしてはならないので
す。

●ゴルフはある意味において「危険なスポーツ」である

 東京都監察医務院の1984年〜1996年の研究によると、ゴルフ
競技中での死亡がかなり高いことがわかっています。ゴルフ競技中での
突然死は、年平均28.7 人となっており、そのうち中高年で心臓病な
どの持病のある人が半数以上を占めていたのです。以下は年齢別の死亡
率です。
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        40代 ・・・・・ 19.3 %
        50代 ・・・・・ 33.5 %
        60代 ・・・・・ 29.0 %
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 実はゴルフ競技中の3つのリスクというものがあるのです。3つのリ
スクとは次のリスクです。
――――――――――――――――――――――――――――――――
        1.朝一番ティーショットの緊張
        2.グリーンに駆け上がるリスク
        3.勝負どころでのパターの瞬間
――――――――――――――――――――――――――――――――
 まず、「朝一番ティーショットの緊張」ですが、多くの視線が集まる
ため、どうしても力が入る人が多く、強い緊張感を感ずるのです。それ
に加えて準備運動不足が加わると、一層リスクが高くなります。
 続いて、「グリーンに駆け上がるリスク」です。ピンが見えない砲台
グリーンのあるコースで、グリーンに乗ったと思われるとき、初心者ゴ
ルファーは自分の打ったショットがどのくらいピンに近寄ったかを見た
いため、砲台グリーンを駆け上がる人が多いのです。ワクワクしながら
急速な運動を起こすと、心臓が異常をきたし、亡くなる人が多いのです。
 最後に「勝負どころでのパターの瞬間」です。すなわち、「これで勝
負が決まる」場面でのパターです。どうしても緊張するし、うまく転が
るとワクワクしながら走り出す人が多いのですが、この瞬間が危険なの
です。
 なぜ、ゴルフはリスクが多いのでしょうか。
 まず、ゴルフという競技が「ハラハラドキドキ」するスポーツである
ということです。それは、ときと場合によっては、実力以上の成績も不
可能ではないスポーツであることを示しています。このこと自体が心臓
にとっては良くないのです。「ハラハラドキドキ」がストレスに変わる
ことも多いのです。
 もうひとつ、ゴルフというスポーツは、いったん約束すると断れない
スポーツであるということです。そのため多少風邪気味でも出かけます
し、雨が降っていても強行するケースが多いのです。
 さらにもうひとつ大きな危険があります。ゴルフは9ホールを終了し
て、クラブハウスに入り、食事をして飲酒──とくに冷たいビールを飲
むことも少なくないのです。この場合、身体をちゃんと休めなければな
らないのに、休みはそこそこにして残りのホールに向かうケースが多い
からです。
 一回ゴルフすると、アベレージ・ゴルファーで約一万歩歩くといわれ
ています。しかし、初心者はボールが思った方向に飛ばないので、一万
歩よりも多く歩くことになるのです。ゴルフというスポーツはかなり重
労働なのです。
――――――――――――――― ―― [心臓について知る/11]
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2010年05月20日

●「心臓がん」というものは存在するか

 「がん」というのは、あらゆるところにできるものと考えている人があります。胃腸、肝臓、すい臓、皮膚、脳、肺、血液、あらゆる部分でがんはできると思っていたのですが、「心臓がん」だけは何故か聞いたことがありません。
 結論からあえていうと、「心臓がん」は存在します。しかし、病名と
しての「心臓癌」は存在しないのです。しかし、心臓がんは、原発性と
してはあり得ず、転移としては可能性があるのです。なぜ、心臓がんに
は原発生のがんはあり得ないのでしょうか。理由は2つあります。
 1つは、心臓の温度の高さです。
 心臓の温度は40〜42度であり、他の臓器よりも高いのです。がん
は熱に弱い性質を持っているので、がんができにくいのです。最近乳が
んの治療法として「温熱療法」というのがありますが、これはがんが熱
に弱い性質を利用したものです。
 2つは、心臓の筋肉の性質です。
 心臓は心筋という筋肉でできています。現代医学では、心筋を「細胞
分裂を終えた筋肉」としており、心筋は細胞分裂をしないのです。がん
は細胞分裂の異常によって起こるので、細胞分裂をしない心臓にはがん
は基本的には発生しないのです。
 がんではありませんが、「左房粘液腫」というのはあります。これは
心臓に発生する腫瘍の中で最も多いのです。しばしば腫瘍の一部が崩れ
て、破片が血液に乗って頭の血管を詰まらせて、脳卒中を発症させるこ
とがあるのです。左心房にできることが多いので、左心房の出口付近に
できると、増幅弁狭窄症のような状態になります。しかし、「左房粘液
腫」は比較的簡単に「心エコー」で発見できますし、手術での摘出も可
能であり、治療はできるのです。
 ところで、このシリーズでは「がん」という呼称を使っていますが、
それは「癌」という言葉のイメージがよくないからです。実は「がん」
と「癌」は医学的には区別して使われているのです。
 胃とか腸の内面とか、皮膚の表面とかをおおっている「上皮」という
種類の細胞の悪性腫瘍が「癌」、それ以外の悪性腫瘍は「肉腫」という
のです。医学的には、ひらがなで「がん」というときは、悪性腫瘍全般
をさすので「癌」と「肉腫」の両方を含んでいます。
 したがって、筋肉の「がん」はあるけれど、筋肉の「癌」はめったに
ないのです。「筋肉」にはもともと「上皮」がないからです。心臓は心
筋という筋肉でできているので、「心臓癌」はないのです。

●心臓リハビリテーションは必要である

 心臓について12回にわたって述べてきましたが、最終回として「心
臓のリハビリテーション」についてお話しします。
 心臓病の治療は、当初は「救命」のために行われたのです。心臓病は
それが死に直結しているだけに何よりも救命が優先します。これを「急
性期医療──救命医療」といいます。したがって、急性期医療によって救命に成功すると、その予後は基本的に患者にまかされてしまいます。
 しかし、心臓病こそ予後が大切なのです。そこで、救命に成功した後
も患者が社会復帰するまでフォローしようという考え方が心臓リハビリ
テーションなのです。日本では、榊原記念病院が率先してはじめたので
す。心臓のリハビリテーションで行う内容には次の3つがあります。
――――――――――――――――――――――――――――――――
1.運動療法の実施
           2.講義による学習
           3.カウンセリング
―――――――――――――――――――――――――――――――― 第1は「運動療法の実施」です。
 運動負荷試験を行い、その結果からその人に最も適した運動の強さや
時間を決定し、医療スタッフが監視する下での運動トレーニングを実施
します。
 第2は「講義による学習」です。
 講義方式による心臓病に対する正しい知識を学習してもらい、日常生
活にそれを生かしてもらうのです。食事療法の指導も行われます。
 第3は「カウンセリング」です。
 医療スタッフによる個人面談によって社会復帰への不安を取り除き、
心理面からサポートします。うつになる人も多いので、うつから解放し
ます。
 20年前までは、心不全の患者が運動するなど考えられなかったので
す。しかし、その後の研究では、心臓のポンプの力が弱い人でも、心臓
リハビリテーションに参加することによって、生命予後が良くなったり
入院することが少なくなったりすることがわかってきたのです。
 しかし、心臓リハビリテーションについて、現代の医師や看護師は必
ずしもその必要性を理解しているとはいえないのです。病院としては、
救命治療が済んで最小必要限度の安全が確認されると患者は退院し、目
の前からいなくなってしまうので、その後のリハビリのことまで考えら
れないからです。しかし、榊原記念病院のような病院も少しずつ出てき
ており、今後に期待するしかないといえます。
                ―― [心臓について知る/12]
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2010年05月27日

●あなたは「プチ欝」にかかっていないか

 最近「鬱/うつ」になる人が多くなり、「鬱病」の存在が一般に知ら
れるようになってきています。以前には十分な理解が得られず、「ノイ
ローゼ」とか「怠け病」などと呼ばれていたのです。
 鬱病は、その原因によって次の2つに分類されていたのですが、現在
は原因を問わなくなっており、鬱病は脳と心の両面から起こるとされて
います。
――――――――――――――――――――――――――――――――
      1.「心」の病気 ・・・・・ 神経症鬱病
      2.「脳」の病気 ・・・・・ 内因性鬱病
――――――――――――――――――――――――――――――――
 最近は、はっきりと「鬱病」になる前の状態の人が激増しています。
例えば、あなたは次のような思考パターンに陥ったことはないですか。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 ◎考え方次第と理屈ではわかっているのにまったく実行できない
 ◎どうしてもプラス思考になれない
 ◎何もせずダラダラとして一日が終わってしまった
 ◎過去の失敗を思い出して落ち込んでしまう
 ◎読もうとしていた本を開くこともできなかった
 ◎散らかった部屋が今日もそのまま
 ◎何をやっても虚しい気がする
 ◎そして、いつもの自己嫌悪
――――――――――――――――――――――――――――――――
 こういう思考パターンには誰でも陥ることがあります。そういう場合
は、多くの人は、物事を前向きにとらえる「ポジティブシンキング」を
行うようにして脱却しているのです。
 しかし、どんなに努力してもポジティブになれない人がいるのです。
そうなってくると、これは「鬱病」の初期症状にかかっているのです。
こういう軽度の鬱状態のことを「プチ鬱」または「軽鬱」と呼んでいま
す。

●鬱病には単一の要因はない

 世界保健機構──WHOによると、鬱病にかかっている人は人口の3
〜5%であり、生活に支障をきたす病気の中で4番目に患者数が多い病
気なのです。今後鬱病の診断技術が向上してくると、現在では病気の中
に入っていない人もカウントされるので、2020年頃には現在の第4
位から第2位にランクされるようになるという予測もあります。
 それでは、なぜ鬱病になるのでしょうか。
――――――――――――――――――――――――――――――――
             1.遺伝
             2.性格
             3.誘因
――――――――――――――――――――――――――――――――
 第1は「遺伝」です。
 遺伝病という意味ではないのです。複数の遺伝子が複雑なしくみで関
係しているという説もあります。しかし、一卵性双生児の場合でも片方
しか鬱病にならないこともあるので、はっきりとしたことはわかってい
ないのです。
 第2は「性格」です。
 鬱病にかかりやすい人はいます。生真面目、几帳面、責任感が強い、
自責などの傾向の強い人です。すなわち、物事に対して真剣に取り組む
人ほど鬱病になる可能性が高いのです。
 第3は「誘因」です。
 「誘因」とは、ストレスになる出来事のことです。例えば、昇進、転
勤、異動、転居、離婚、身体の病気などがそれに該当します。つまり、
環境が変化することがストレスになって鬱病が発症するのです。注意す
べきことは、これらの出来事は鬱病の原因ではなく、誘因であるという
ことです。
 例えば、異動が誘因で鬱病になった人を異動前の部署に戻すケースが
あります。しかし、それでは鬱病は治らないのです。それは、異動が鬱
病の原因ではなくて、誘因に過ぎないからです。
 鬱病には単一の要因はなく、遺伝、性格、ストレスが絡み合って発症
する病気です。したがって、直接的な要因を探し出し、それを取り除い
ても鬱病は治癒されないのです。
 鬱病が増加している背景として、現代の社会環境の急激な変化が考え
られるのです。仕事ではコンピュータや通信に関わるIT技術を使うこ
とが多くなっており、そういうものに弱い人の場合、それは大きなスト
レスとなって鬱病に発展するケースがあるのです。
 鬱病の80%以上は、こうした仕事の環境や生活上の大きな変化を伴
う出来事を誘因として発症するといわれています。これらの社会的変化
は避けることができないので、われわれは鬱病になりやすい時代に生き
ているといえます。鬱病にならないためにも、鬱病という病気に関する
知識を豊富に持つことが必要です。次回から考えていきましょう。
                     ―― [鬱の話/01]

posted by キーヘルス at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 鬱の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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