2010年05月20日

●「心臓がん」というものは存在するか

 「がん」というのは、あらゆるところにできるものと考えている人があります。胃腸、肝臓、すい臓、皮膚、脳、肺、血液、あらゆる部分でがんはできると思っていたのですが、「心臓がん」だけは何故か聞いたことがありません。
 結論からあえていうと、「心臓がん」は存在します。しかし、病名と
しての「心臓癌」は存在しないのです。しかし、心臓がんは、原発性と
してはあり得ず、転移としては可能性があるのです。なぜ、心臓がんに
は原発生のがんはあり得ないのでしょうか。理由は2つあります。
 1つは、心臓の温度の高さです。
 心臓の温度は40〜42度であり、他の臓器よりも高いのです。がん
は熱に弱い性質を持っているので、がんができにくいのです。最近乳が
んの治療法として「温熱療法」というのがありますが、これはがんが熱
に弱い性質を利用したものです。
 2つは、心臓の筋肉の性質です。
 心臓は心筋という筋肉でできています。現代医学では、心筋を「細胞
分裂を終えた筋肉」としており、心筋は細胞分裂をしないのです。がん
は細胞分裂の異常によって起こるので、細胞分裂をしない心臓にはがん
は基本的には発生しないのです。
 がんではありませんが、「左房粘液腫」というのはあります。これは
心臓に発生する腫瘍の中で最も多いのです。しばしば腫瘍の一部が崩れ
て、破片が血液に乗って頭の血管を詰まらせて、脳卒中を発症させるこ
とがあるのです。左心房にできることが多いので、左心房の出口付近に
できると、増幅弁狭窄症のような状態になります。しかし、「左房粘液
腫」は比較的簡単に「心エコー」で発見できますし、手術での摘出も可
能であり、治療はできるのです。
 ところで、このシリーズでは「がん」という呼称を使っていますが、
それは「癌」という言葉のイメージがよくないからです。実は「がん」
と「癌」は医学的には区別して使われているのです。
 胃とか腸の内面とか、皮膚の表面とかをおおっている「上皮」という
種類の細胞の悪性腫瘍が「癌」、それ以外の悪性腫瘍は「肉腫」という
のです。医学的には、ひらがなで「がん」というときは、悪性腫瘍全般
をさすので「癌」と「肉腫」の両方を含んでいます。
 したがって、筋肉の「がん」はあるけれど、筋肉の「癌」はめったに
ないのです。「筋肉」にはもともと「上皮」がないからです。心臓は心
筋という筋肉でできているので、「心臓癌」はないのです。

●心臓リハビリテーションは必要である

 心臓について12回にわたって述べてきましたが、最終回として「心
臓のリハビリテーション」についてお話しします。
 心臓病の治療は、当初は「救命」のために行われたのです。心臓病は
それが死に直結しているだけに何よりも救命が優先します。これを「急
性期医療──救命医療」といいます。したがって、急性期医療によって救命に成功すると、その予後は基本的に患者にまかされてしまいます。
 しかし、心臓病こそ予後が大切なのです。そこで、救命に成功した後
も患者が社会復帰するまでフォローしようという考え方が心臓リハビリ
テーションなのです。日本では、榊原記念病院が率先してはじめたので
す。心臓のリハビリテーションで行う内容には次の3つがあります。
――――――――――――――――――――――――――――――――
1.運動療法の実施
           2.講義による学習
           3.カウンセリング
―――――――――――――――――――――――――――――――― 第1は「運動療法の実施」です。
 運動負荷試験を行い、その結果からその人に最も適した運動の強さや
時間を決定し、医療スタッフが監視する下での運動トレーニングを実施
します。
 第2は「講義による学習」です。
 講義方式による心臓病に対する正しい知識を学習してもらい、日常生
活にそれを生かしてもらうのです。食事療法の指導も行われます。
 第3は「カウンセリング」です。
 医療スタッフによる個人面談によって社会復帰への不安を取り除き、
心理面からサポートします。うつになる人も多いので、うつから解放し
ます。
 20年前までは、心不全の患者が運動するなど考えられなかったので
す。しかし、その後の研究では、心臓のポンプの力が弱い人でも、心臓
リハビリテーションに参加することによって、生命予後が良くなったり
入院することが少なくなったりすることがわかってきたのです。
 しかし、心臓リハビリテーションについて、現代の医師や看護師は必
ずしもその必要性を理解しているとはいえないのです。病院としては、
救命治療が済んで最小必要限度の安全が確認されると患者は退院し、目
の前からいなくなってしまうので、その後のリハビリのことまで考えら
れないからです。しかし、榊原記念病院のような病院も少しずつ出てき
ており、今後に期待するしかないといえます。
                ―― [心臓について知る/12]
posted by キーヘルス at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 心臓について知る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。