鬱の診療に当たる「臨床心理士」──臨床心理士の受験資格は、臨床
心理系の指定大学院を修了していることが基本要件となっています。臨
床心理士は、心理職としての専門的な技法をマスターし、心の問題を抱
えている人への援助を行うのが基本的な仕事です。「心理カウンセラー」
「セラピスト」とも呼ばれています。
現在有資格者は2万人ほどいますが、病院の精神科や心療内科、精神
保健福祉センターなどの医療保健分野、それに教育分野でのスクールカ
ウンセラーなどの幅広い領域で活躍しています。
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≪臨床心理士が働いている領域≫
保健・医療 ・・・・・ 28.3%
教育 ・・・・・ 23.7%
大学・研究所 ・・・・・ 17.4%
福祉 ・・・・・ 12.3%
その他 ・・・・・ 18.3%
──日本臨床心理士会
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しかし、臨床心理士の雇用状況は厳しいのです。2007年に日本臨
床心理士会が行った調査によると「常勤のみ」で働いている人は31.
8%しかいないのです。ほとんどが「常勤+非常勤」や「非常勤のみ」
なのです。
収入については、「300万円台」が最も多く、19.8 %、「20
0万円台」が17.0 %で続き、「400万円台」が14.1 %になっ
ています。それに雇用が不安定でいつ職を失うかわからないのです。
全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合の須田光照氏は次のよ
うに述べています。
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業務委託契約であれば、臨床心理士が自分の責任・管理の下で業務を
行うため、施設は最低賃金や労働基準法を守る必要がなくなる。しか
し実際には、勤務時間や場所、業務に対する諾否の自由が制限されて
いるなど、とても業務委託契約とはいえないケースが多い。雇用関係
にありながら、最低賃金等の保証をされていない状況にかれている臨
床心理士が少なくない。 ──『週刊東洋経済』7/24より
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●「3A」でストレスのサインに気づいたら「4R」
鬱は過度のストレスから生ずるといわれています。実は「過度のスト
レスのサイン『3A』」というものがあるのです。次の3Aに気が付い
たら、医師と相談することが必要です。
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◎第1のA ・・・・・・・・・・ Alcohol/アルコール
・酒の飲み方がいつもと違うときは要注意です。以前にはなかった症
状で、悪酔いや二日酔いをしたり、飲んだ翌日に遅刻をしたり、休
んだりする。
◎第2のA ・・・・・・・・・・ Absenteeism/勤怠の乱れ
・最初は遅刻が増えて、休みが多くなり、しまいに無断欠勤までする
ようになるという状態が続くなら、要注意である。
◎第3のA ・・・・・・・・・・ Accident/事故
・今までミスなくこなせていた業務でのミスが目立つようになり、実
際にケガをしたりするようになる。
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それでは、そういう過度のストレスが生じたときはどう対処すればよ
いかについて考えます。それには、次の「4R」を実施するべきです。
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◎Recreation/レクリエーション
・気分展開を図ることは大切である。気の合う人と会って、談笑する
◎Rest/レスト
・意図的にしっかりと身体を休めることが必要。本当の睡眠が不可欠
◎Relaxation/リラクゼーション
・神経を休める行動が必要である。歌を歌う。森をゆっくり歩くこと
◎Retrest/リトリート
・リゾート地などを選んで、ゆっくりと過ごす転地療法が必要である
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厚労省によると、治療中の鬱病患者(躁うつ病含む気分障害)は、1
996年の43万人から、2008年には104万人と急拡大していま
す。昔と違って、精神科を受診することへの抵抗感が薄くなり、そうい
う意味で患者が増えた傾向はあるものの、今までの鬱病とは特徴が異な
る新しいタイプの鬱病が若い人を中心に増えたことによって患者が増え
た一面もあります。周りにいる人が早く気が付くことが大切です。
──[鬱の話/15]