2008年06月19日

●胃がんの脅威とピロリ菌との関係

●10万人が羅患し半分が死亡している胃がん

 ごく大雑把にいうと、日本では毎年約100万人が亡くなっています。そのうち悪性新生物、すなわち、がんで亡くなる人は30万人ですが、肺がんで亡くなる人は約5万5千人、胃がんによる死亡者は約5万人です。
 もちろん、年度によって数字は違いますが、胃がんの死亡者数については、あまり変わっていないのです。急増したのは肺がんの死亡者であり、1980年に約2万人であったものが、20年の間に3万人以上増加しているのに対し胃がんの死亡者は、1980年から毎年約5万人であって、変わっていないのです。つまり、胃がんの脅威は依然として続いているのです。
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              1980年   2001年
     肺がんの死亡者 21294人  55034人
     胃がんの死亡者 50443人  49958人
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 胃がんによる死亡数は5万人であるとすると、胃がんと診断された人はどのくらいいるのでしょうか。胃がんと診断された人の数を「胃がん羅患数」というのです。
 ところが「胃がん羅患数」を全国的に調べた調査はないのです。これはおかしな話で、胃がんと診断されて治療を行った結果、どのくらいの人が治癒したのか全国的に知ることができないからです。
 しかし、「全国癌羅患率協同調査」というものがあるのです。これは地域で調査しているデータを集めて類推して全国数値を算出したものです。これによると、1999年については次のようになっています。
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     男性胃がん羅患数 ・・・・・ 6万9627人
     女性胃がん羅患数 ・・・・・ 3万4058人
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                   10万3685人
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 羅患数と死亡数の差は治療の成果と考えられるので、約10万人が胃がんと診断され、それに対応する治療の結果、約半分の5万人が生存していることになります。しかし、年間5万人の死亡数は大きな数字なのです。胃がんは依然として人間にとって大きな脅威なのです。

●ピロリ菌は確実な発癌因子/WHOの認定

 胃がんは早期発見が何よりも大切であるとして、「間接胃レントゲン検査」が行われています。しかし、この検査の診断精度は、57%〜90%といわれているのです。これは、胃がんと診断されない見逃し率が10%〜43%あることを意味しています。
 しかも、陽性的中度は0.9%〜2%ときわめて低いのです。これは胃がんの疑いで精密検査を受けても、98%〜99.1%は胃がんではないということを意味しています。胃のレントゲン検査は、レントゲン機器の撮影方法、撮影技術、使っているバリウムの適否などがその精度を左右するのです。
 この検査方法に比べると、内視鏡検査の信頼性は高いのですが、コストの関係上すべての人に実施することは不可能です。その解決策の一つとして、血液検査でできる「ペプシノーゲン」と「ピロリ菌抗体」を併用して、陽性の人について内視鏡検査をするという方法が検討されています。
 ピロリ菌に感染して時間が経つと、慢性胃炎を起こす可能性が高まります。これがそのまま持続・進行すると、胃粘膜萎縮や腸上皮化生という慢性胃炎の進んだ状態になるのですが、とくに萎縮の進んだ胃炎を放置すると、胃潰瘍や胃がんになりやすいのです。
 ピロリ菌陽性者と非感染者を長年経過観察した報告があります。この場合、ピロリ菌感染者からは、8年間に約4.7%の胃がんが発生しましたが、非感染者からは胃がんの発症はなかったといいます。
 また、胃がん患者がピロリ菌感染者であったかどうかを調べた調査では、その感染の有無を正確に診断すればするほど、菌のいる確率がきわめて高い数字になるのです。多くの調査結果を総合すると、現在では胃がん患者の90%以上がピロリ菌感染者であることが常識とされているのです。
 こうした数多い調査報告に基づいて、1994年にWHOのIARC――国際癌研究機関によって、ピロリ菌は「確実な発癌因子」として認定されているのです。しかし、このWHOの認定は、疫学調査に基づくものであったため、「ピロリ菌によって本当に病気を発症させることができるかどうか」という部分はあいまいのままであったのです。そこで、単に自然経過を観察するだけでなく、何らかの治療を施し、その経過に介入して治療の効果を調べる「介入試験」も多く行われているのです。
 中国からピロリ菌感染者を除菌群と非除菌群に分けて、胃がんの発生率を比較した研究では、8年間の追跡期間中に、除菌群246名中1名――0.41%、非除菌群306名中6名――1.96%の胃がんが発見され、除菌群で有意に胃がんが抑制されるという結果が出たのです。          
posted by キーヘルス at 04:36| Comment(0) | TrackBack(0) | ピロリ菌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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