2008年06月26日

●血液検査と内視鏡検査で胃がんは防げる

●ピロリ菌に関する血液検査で何がわかるか

 ある疾患の検診を効果的に行うには、疑いのある人を絞り込んで精密検査を行う方法です。例えば、大腸がんについては、便潜血の検査を事前に行い、陽性者に絞り込んで大腸検査を受けさせる方法が採用されています。
 また、肝がんについては、肝炎ウイルスの検査を行い、陽性者を絞り込む方法がとられることがあります。B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染していると、肝がんを発症するリスクが高まることがわかっているからです。
 しかし、胃がんの検査については、はじめから胃レントゲン検査を行うのが一般的です。これではコストもかかるし、胃レントゲン検査も万全ではないので、最近では血液検査でリスクを見分ける方法が研究されているのです。それは、次の2つです。
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            1.ピロリ菌の抗体検査
            2.ペプシノーゲン検査
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 ピロリ菌の感染は抗体検査でわかるのですが、これだけで判断するには問題があるのです。それは中高年では陽性者が多くてリスクの高い人に絞り込めないことがひとつと、一部のきわめてリスクの高い人で、抗体が陰性化してしまうケースがあることです。
 もうひとつのペプシノーゲン検査は、胃粘膜の萎縮の程度を調べる検査なのです。胃粘膜の萎縮は内視鏡やレントゲンでも評価できますが、ペプシノーゲン検査は血液検査だけで行える簡便性と数値で評価できるので、客観性に優れているのです。ペプシノーゲンの異常は胃粘膜の萎縮をよく反映することがわかっており、その程度を数値によって判断できるのです。
 このことをもう少し詳しく説明します。既に述べたように、ペプシノーゲンとは胃で生成される消化酵素「ペプシン」の前駆物質であり、主として胃底腺の主細胞に分泌されるのです。胃底腺というのは、胃粘膜を構成する細胞であり、その分布領域は、胃の底部から胃体部まで広がり、胃全体の3分の2を占めているのです。
 ペプシノーゲンは胃粘膜の萎縮が進むにつれ、胃底腺領域が縮小していくため、ペプシノーゲンの量や胃底腺領域における比率が減少します。この度合いによって胃全体の萎縮の進行度がわかるというわけです。

●和歌山医大における注目すべき実験

 和歌山医大では、ピロリ菌抗体とペプシノーゲンの2つの血液検査を組み合わせて、胃がんのリスクを測定する試みが行われています。ピロリ菌抗体とペプシノーゲンの2つの血液検査を行い、次のように対象者をAグループからDグループの4つに分け、それぞれの胃がん発見の頻度を算出したのです。
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         ペプシノーゲン「正常」I ペプシノーゲン「異常」
  ピロリ菌抗体「陰性」A       I D 対年間10万人
           胃がんの発症なし I      871人
ピロリ菌抗体「陽性」B 対年間10万人 I C 対年間10万人
           107人     I      238人
  ――伊藤真愼著、『ピロリ菌/日本人6千万人の体に棲む胃癌の元凶』
                         祥伝社新書/034
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 これによると、Aグループは胃がんの発症はゼロであり、以下、Bグループ→Cグループ→Dグループの順でリスクが高まっています。ピロリ菌の感染者は、感染が長期化するにしたがい、胃粘膜収縮が進行し、B→C→Dに変化していくものと予測されているのです。
 Dグループは、ペプシノーゲンが「異常」を示しているのに、ピロリ菌抗体は「陰性」になっています。これは、ピロリ菌の感染状態が長期にわたって続いたために、胃粘膜が高度に収縮し、ついにはピロリ菌自体が棲めなくなってしまった結果、ピロリ菌抗体が陰性となったのです。したがって、Dグループのリスクはきわめて高いのですが、このケースは全体の数パーセントに過ぎないそうです。
 この和歌山医大の研究でも明らかであるように、ピロリ菌は明らかに胃がんの危険分子です。したがって、ピロリ菌に感染していることがわかったら、速やかに除菌治療を受けることが望ましいのです。
 しかし、現在の健康保険では、ピロリ菌に感染しているだけでは除菌治療は健康保険の対象となっていないのです。どうしてかというと、感染者になったからといって、潰瘍やがんという重大な病気を引き起こす割合が必ずしも高くなく、何事もなく一生を終えるケースが多いことなどによるものです。
 しかし、胃がんは現在でも深刻な病気であり、除菌治療によって胃がんを発症するリスクが少しでも減るのであれば、除菌治療を行うべきです。とくに胃がんの手術をして胃を残している場合、その後そこに第2のがんが発症する頻度が高いことが知られているのです。このケースなども除菌治療をした場合としない場合では胃がんの発症に大きな差が生ずるのです。       
posted by キーヘルス at 04:16| Comment(0) | TrackBack(0) | ピロリ菌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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