2008年10月23日

●手術時の出血量をいかにして少なくするか

 駅前でよく行われている献血の採血量の上限は約500CCで
す。したがって、手術時の出血量が500CC以下であれば、輸
血の必要はないわけで、手術ではなるべく出血を500CC以下
で抑えるべく努力をしているのです。
 しかし、かつての肝がんの手術では、5000〜10000C
Cという大量出血は避けられなかったのです。まさに血の海の状
態になったのです。しかしここ20年ほどの間に肝がんの手術は
飛躍的に技術が向上したのです。
 手術後の5年生存率は20年前はわずか20%であったのに、
全国平均で60%に達しています。ステージ1であれば90%、
ステージ2でも70%と高生存率を記録していますし、出血量も
平均で1000CC、がんの個数が少なく、転移がない場合は、
腕のいい外科医であれば献血量レベルの500CC以下に抑える
までに肝がん手術の技術レベルは向上しています。
 しかし、大事なことがあります。このように手術の技術は大き
く向上しているのですが、実際に手術を受けられる人は、全体の
30%でしかなく、70%の人は手術を受けられないのです。
 肝がんと診断されて検査をすると、既に肝硬変が進行していて
手術できないほど肝機能が低下しているケースや手術では取れな
いほど、がんが進行してしまっているケースが多いのです。
 早めに肝炎ウイルスの存在をチェックし、自主的に年に2〜3
回程度の定期的な検診さえ受けていれば、たとえ肝がんになった
としても高度な手術によって完全に治すことができるのです。何
よりも肝炎ウイルスの検査が肝要です。

●肝がんはこうして発見する

 それでは肝がんはどのように見つけるのでしょうか。
 まず、血液検査で肝炎ウイルスの有無を検査します。それに加
えてエコー検査をして肝臓の状態を調べます。ウイルスが陽性だ
った場合は、家族病歴を調べて、ビリルビン(第04号参照)な
どの肝機能を調べる血液生化学検査を行うのです。
 また、血液検査では腫瘍マーカーの値である「AFP」や「P
IVKA−U」の動きをチェックできます。腫瘍マーカーという
のは、肝がんの細胞が産出し血液中に流れ出る異常なタンパク質
のことであり、この値が上昇していると肝がんが疑われます。
 血液検査と並行して行われるエコー検査では、肝がんを直接見
つけることができるのです。しかしエコー検査やCT検査では、
検査者のうでが問われることになります。エコー検査やCT検査
などの画像診断では、次の2つの診断が行われます。
――――――――――――――――――――――――――――
   1.存在診断 ・・・ がんの存在と場所の特定
   2.質的診断 ・・・ 腫瘍ががんかどうか確定
――――――――――――――――――――――――――――
 肝臓は8つのブロックに分かれています。肝臓というところは
1丁目から8丁目まであるといわれるゆえんです。腫瘍があるな
らば、その腫瘍はどこにあるのか――8ブロックのどのブロック
にあるかを特定するのが「存在診断」です。これにはエコー検査
やCTの撮影技術の質が問われます。とくに重要なのが、撮影し
た画像を読む技術です。
 肝臓に見つかった腫瘍が本当にがんであるかどうかを確定する
ことを「質的診断」といいます。肝臓にできる腫瘍には、がんば
かりではなく良性腫瘍も数多く発生するからです。
 画像診断のポイントについて、自らも画像診断のエキスパート
である高山忠利先生は次のように述べています。
――――――――――――――――――――――――――――
 画像のどこを見るか。まず肝臓の全体像です。続いてその中
 を走る血管群。主に門脈と肝静脈を見ます。次に腫瘍の形、
 内部の構造や、周りの変化などを見ていきます。三大肝腫瘍
 といわれる肝細胞がん、転移性肝がん、肝血管腫に、画像上
 それぞれ際立った特徴がありますが、「読影する」という言
 葉どおり、画像検査では腫瘍から得られる間接的な影を読ん
 でいるのです。読影に優れた医師というのは、手術で切り取
 った肝臓の標本から腫瘍の生の姿形を頭に焼き付けています
 から、専門の診療科にかかわらず、この勉強を積んだ医師こ
 そ真に画像を読めるエキスパートといえるのです。
   ――高山忠利著/講談社+アルファ新書/383−1B
 『肝臓病の「常識」を疑え!/世界的権威が説く肝臓メンテ
  ナンス法』
――――――――――――――――――――――――――――
 高山忠利氏が所属する東京大学付属病院では、外科主治医グル
ープ4名と、放射線科グループ2名の独立した2チームがそれぞ
れ読影して、最終的に全体会議で決定するという慎重な体制をと
っているそうです。
 このように考えると、医師にはもっとゆとりとか余裕というも
のが必要であることがわかります。しかし、日本の現状は極端な
医師不足で医師はぎりぎりの診療を行っています。したがって、
一人の患者さんの検査などに多くの時間を割くことが困難になっ
ています。小泉改革で壊された日本の医療制度――根本からの建
て直しが必要であると思います。            
posted by キーヘルス at 07:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 肝臓の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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