2008年11月13日

●「コレステロール悪玉説」の根拠には疑問がある

 「高コレステロールは健康にとって問題である」――これは素
人でも半ば常識化しています。この常識の根拠になっているのは
「グラフ1」です。このグラフを見ると横軸に総コレステロール
値をとって7つの群に分け、縦軸には死亡率がとられています。
 グラフ、とくに棒グラフを見るときはその形状にとらわれます
が、このグラフのようにコレステロール値の上昇によって右肩上
がりで死亡率が伸びていると、コレステロール値を下げないとい
けないなと思ってしまいます。
 しかし、グラフにはいろいろなことが隠されているのです。大
櫛陽一先生は、このグラフについて調査して次のことを指摘して
います。
 まず、このグラフの死亡率は、160〜179mg/dlの群
を「1」としたときの相対死亡率です。しかし、*印のついてい
るのは総コレステロール値が260mg/dl以上だけです。
*印は「有意差あり」をあらわしており、「ns」は「有意差な
し」を意味します。
 ここで、有意差とは統計的に意味のある差のことであり、26
0mg/dl以上の群以外はすべて「ns」になっています。し
かし、このようにグラフ化されると、右肩上がりで死亡率が伸び
ているように見えます。
 さらに、ここでいう死亡者は冠動脈疾患(心筋梗塞とほぼ同意
義)による死亡者のみであり、その人数はたったの12人、全体
の0.1 %です。もっと詳しくいうと、全体の対象者は9216
人、約17年間の観察期間中の死亡者は1841人、その中で冠
動脈疾患の死亡者は128人です。しかし、コレステロールとの
関係で「有意差」があったのは、総コレステロール値が260m
g/dl以上の人だけであり、それが12人であるということで
す。
 一応対象者からは、冠動脈疾患と脳卒中の既往症のある人は除
かれていますが、家族性高脂血症の人は除かれていないのです。
家族性高脂血症とは遺伝的に脂質の高い人であり、0.2 %の割
合で存在します。
 しかし、冠動脈疾患による死亡率だけで見るのはおかしいので
す。大櫛陽一先生は、元の論文に書かれている数値から総死亡率
を計算しています。「グラフ2」がそれです。これを見ると、総
コレステロール値が、160〜259mg/dlまでは死亡率は
ほぼ一定です。また、総コレステロール値が159mg/dlで
も死亡率が高いことがわかります。
 大櫛陽一先生は、次のようにいっています。
――――――――――――――――――――――――――――
  コレステロール値が高すぎて冠動脈疾患で死亡するのは
  0.1 %の人であり家族性高脂血症の率が0.2 %であ
  ることを考慮すると、ガイドラインで示された図(グラ
  フ1)の意味するところは、「家族性高脂血症の人は冠
  動脈疾患に気をつける必要がある」ということです。
  ――大櫛陽一著、『コレステロールと中性脂肪で、薬は
  飲むな』            祥伝社新書/131
――――――――――――――――――――――――――――

●総コレステロールが高いほど長生きする

 2つのグラフを見ても「高コレステロールの人は早死にする」
とはいい切れないのです。これとまったく逆の説もあるからです
2008年3月28日、日本人を対象とした次の大規模な研究成
果について、厚労省記者クラブで発表されたのです。
――――――――――――――――――――――――――――
  コレステロール値が高くても統計的有意な死亡率の上昇は
  なく、むしろ低いと有意に死亡率が上昇する。
        ――2008年3月28日発表
――――――――――――――――――――――――――――
 1995年に発表された日本人5000人以上を含む、5つの
論文に含まれた17万3539人のデータを統合して、男女別に
解析を加えています。このような解析は「メタアナリシス」と呼
ばれています。
 「グラフ3」を見てください。これは横軸に総コレステロール
の値を4群に分け、縦軸にはすべての原因による死亡率(総死亡
率)を示しています。その結果は、すべてに*印(有意差あり―
―科学的に意味のある差)がついているのです。死亡率は相対的
死亡率であり、総コレステロール値が160〜199mg/dl
を基準群として、その死亡率を「1」としています。他の群の死
亡率はその倍率であらわされています。
 男性のデータですが、死亡率は右下がりとなっており、総コレ
ステロール値の高い方が死亡率が低くなっています。むしろ16
0mg/dl未満では、基準値に比べて死亡率が1.60 倍と上
昇しているのに対し、逆に200〜239mg/dl群では0.
82 倍、240mg/dl以上の群では0.76 倍と値が上が
るほど低くなっています。
 これを見ると、コレステロール値が上がると死亡率が高くなる
という結論の根拠になるデータには大いなる疑問があります。デ
ータは恣意的に操作されているとしか思えないからです。200
8年から始まった特定健診では、総コレステロールに代わって
「LDLコレステロール」が測定されることになっています。L
DLコレステロールは、総コレステロールの60%を占めていま
す。LDLコレステロールについては改めてお話しします。 

総コレステロール冠動脈疾患死亡率.jpg
 

総コレステロールと総死亡率.jpg


総コレステロールと死亡率/男性.jpg

出典:大櫛陽一著『コレステロールと中性脂肪で、薬は飲むな』祥伝社新書/131

                          
posted by キーヘルス at 04:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 特定検診 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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