に60兆個もあるのです。それらの細胞のひとつひとつに遺伝情
報を担い、タンパク質を作るための核酸が存在するのです。
その核酸を構成する成分のひとつに「プリン体」というものが
あります。尿酸は、プリン体という物質が原料となって作られる
のです。痛風について知るにはプリン体についての知識が必要で
す。私たちの身体の中では、一部の細胞を除いて古くなった細胞
は壊され、新しい細胞が作られるという代謝が繰り返されていま
す。その細胞が壊され、核酸が代謝される過程でプリン体の一部
が再利用されず、分解されて尿酸ができるのです。すなわち、尿
酸というのは、代謝の結果生じた最終代謝産物――老廃物という
ことになります。
このように、多くの尿酸が体内で作られるのですが、食べ物に
含まれるプリン体からも尿酸は作られるのです。プリン体は、動
物性食品や高エネルギー食品に多く含まれています。これらの食
品が体内に取り込まれ、分解することで尿酸が作られるのです。
どのような食品にプリン体が多いかいくつか上げておきましょ
う。
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豚肉(レバー) ・・・・・ 284.7mg/100g
牛肉(レバー) ・・・・・ 219.7mg/100g
鶏肉(レバー) ・・・・・ 312.2mg/100g
干し椎茸 ・・・・・ 379.5mg/100g
カツオ ・・・・・ 211.4mg/100g
カツオブシ ・・・・・ 493.3mg/100g
ニボシ ・・・・・ 746.1mg/100g
イサキ白子 ・・・・・ 305.5mg/100g
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しかし、プリン体を多く含む食品の代表的存在は「ビール」だ
といわれていますが、本当なのでしょうか。
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ビールS社 ・・・・・ 5.12mg/100g
ビールE社 ・・・・・ 6.86mg/100g
ビールK社 ・・・・・ 4.35mg/100g
ウイスキー ・・・・・ 0.12mg/100g
焼酎25度 ・・・・・ 0.03mg/100g
日本酒 ・・・・・ 1.21mg/100g
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これを見る限り、ビールそのものに含まれるプリン体はたいし
たことはないことがわかります。おそらく他の酒類に比べると高
いということはいえます。ところがです。食べたものから作られ
る尿酸は、体内で自然に作られる尿酸よりもはるかに少ないので
す。そのうえ、食品に含まれるプリン体は、腸内の細菌によって
分解されてしまうので、よほど一度にたくさんを摂取しない限り
尿酸値の上昇には大きく影響しないことがわかってきたのです。
したがって、ビールに関しても普通に飲んでいる限り、そんな
に目くじらを立てる必要はないのです。尿酸値が高いからといっ
て、好物のビールをやめても尿酸値の軽減にほとんど寄与しない
からです。
●尿酸を分解するウリカーゼという酵素がある
プリン体が分解してできる尿酸は、老廃物として対外――尿の
中に排泄されるべき物質なのです。尿中に大量に排泄される酸性
物質ということで「尿酸」と名づけられたのです。尿に出て行く
ということは、水に溶ける物なのだということを覚えておきまし
ょう。
ところで、プリン体というと、お菓子の「プリン」を連想しま
すが、結論からいうと、まったく関係はないのです。プリン体の
語源は次の通りです。
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pure(基) +urine(尿) =尿の中の基本的物質
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尿酸は、代謝の結果生じた最終代謝産物であると書きましたが
「ウリカーゼ」という酵素があると、アンモニアと尿素に分解で
きるのです。この酵素はヒトが属する霊長類を除く哺乳類はすべ
て持っていて、尿酸をアラントインという物質に分解できるので
す。
なぜ、人間に尿酸を分解するウリカーゼがないかについては明
確ではないのですが、おそらく進化の過程で失われたものと思わ
れます。ウリカーゼがないのですから、痛風は人間だけではなく
チンパンジーやゴリラなどの霊長類もかかるということになりま
す。しかし、チンパンジーやゴリラが実際に痛風の発作を起こす
ものかについては、確認されてはいないのです。
もうひとつ尿酸を分解するウリカーゼを持っていない動物がい
るのです。それは鳥類です。鳩やカラスはフンと一緒に尿酸を排
泄しています。フンの大部分は白いもので占められていますが、
その白いものが尿酸なのです。これが自動車などに付くと、酸性
であるだけに塗装にも影響します。