2010年01月07日

●インフルエンザウイルスはどのように細胞内に入り込むか

 空気中に漂うインフルエンザウイルスはそれを吸い込んだ宿主の気道
の粘膜に付着します。そして宿主の細胞内に侵入してRNAを送り込ん
で代謝機構を乗っ取るのです。そして、大量の「子ウイルス」を排出す
るわけです。
 インフルエンザにかかった人が咳やくしゃみをすると、鼻や口からウ
イルスを含んだ分泌物が大量に放出されます。ちなみに、一回の咳で飛
散する飛沫の数は約5万個、くしゃみにいたっては、約10万個の飛沫
が飛び散ることになります。ウイルスはそれらのひとつ一つの飛沫の中
にたっぷりと含まれているのです。
 しかし、ウイルスが宿主の細胞に吸着するためには、外被膜から飛び
出しているスパイクタンパク質HAが正常に機能する必要があります。
もし、HAが物理的に破壊されたり、化学的に変性したりすると、ウイ
ルスは細胞に吸着することはできないのです。ウイルスがこのような状
態になることを「不活化」といい、これはウイルスの死を意味します。
 ところで、体内に侵入したインフルエンザウイルスは、組織細胞の中
にどのようにして、入り込むのでしょうか。次の順序で侵入するのです
が、かなり専門的な話になりますが重要ポイントに絞って解説します。
――――――――――――――――――――――――――――――――
       1.細胞膜表面に吸着
       2.細胞内への侵入
       3.脱殻
       4.ウイルスRNAとタンパク質の合成
       5.粒子の形成と放出
――――――――――――――――――――――――――――――――

●ウイルスの立場で増殖までのプロセスを見る

 感染とは何でしょうか。これをインフルエンザウイルスの立場から見
ていくことにします。まず、1の「細胞膜表面に吸着」です。
 感染というのは、インフルエンザウイルス粒子と細胞との物理的な衝
突により、スタートします。この衝突は偶然の産物ですが、吸着できる
かどうかは、衝突した細胞とウイルスの相性によるのです。
 HAが「鍵」の役割、これに対して侵入される方の宿主細胞の膜の表
面にはさまざまな受容物質が並んでいます。これが「鍵穴」に該当する
のです。HAの鍵と受容物質の鍵穴が合致する場合だけ、ウイルスは細
胞表面に吸着できるのです。ちょっと専門的になりますが、インフルエ
ンザウイルスが吸着できるのは、シアル酸を末端に持つ糖タンパク質や
糖脂質なのです。
 続いて、2の「細胞内への侵入」です。
 生物というのは、細胞膜によって閉じられた空間で、さまざまな化学
反応を行いそこで生まれた産物によって生命活動を営んでいるのです。
そのために細胞は、生命活動の材料となる物質を細胞外から定期的に取り込もうとするのです。インフルエンザウイルスは、この生命活動のシ
ステムを利用して細胞内に入り込むのです。
 3の「脱殻」とは何でしょうか。ここからがちょっと専門的になりま
す。
 細胞内に取り込まれたインフルエンザウイルスは、宿主の細胞膜でで
きたエンドソームという小胞の膜に取り囲まれていて、宿主の細胞質成
分とは隔絶されているのです。増殖を果たすためにはエンドソームを破
壊して、RNP(RNAタンパク質複合体)を細胞質内に送り込む必要
があるのです。
 そのかぎを握っているのが「M2タンパク質」なのです。M2タンパ
ク質は、水素イオンをウイルス内部に導入するチャネルの働きをするの
です。宿主細胞のエンドソーム内部は酸性に保たれているので、ウイル
スがエンドソームに取り込まれると、M2タンパク質のイオンチャネル
が活性化するのです。
 ウイルス粒子内に水素イオンが流れ込み、内部が酸性になると、RN
Pとウイルスの殻(外被膜)との結合が進むのです。ここでもうひとつ
のタンパク質であるHAはエンドソーム内の酸性の条件下でその立体構
造が変化して、宿主細胞のエンドソームとウイルスの外被膜を融合させ
ようとします。この膜融合によって、宿主の細胞質とウイルス粒子の内
部がつながり、ウイルスのRNPが細胞質内に放出されるのです。これ
を「脱殻」というのです。
 続いて4の「ウイルスRNAとタンパク質の合成」です。
 ここからウイルスは大活躍を始めるのです。宿主細胞の細胞小器官を
使って自分のRNAやタンパク質を作っていくのです。このとき子孫ウ
イルスを構成する部品だけでなく、その製造に必要な道具――酵素など
も作るのですが、すべて宿主細胞の中にあるものを拝借してそういう作
業をするのです。これらがウイルスRNAとタンパク質の合成のプロセ
スです。
 最後に5の「粒子の形成と放出」です。
 この最後の段階で、インフルエンザウイルスは増殖され、細胞表面に
次々と作られていくのです。しかも、それらのインフルエンザの子供が
細胞表面から遊離するさい、細胞膜を引きちぎって行くので、細胞は傷
つき、最終的には死にいたるのです。インフルエンザにかかると、発熱
や激しい咳やくしゃみをしますが、これはウイルスと宿主細胞との激し
いせめぎ合いの副産物なのです。
               ―― [インフルエンザの話/04]
posted by キーヘルス at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | インフルエンザの話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス: [必須入力]

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/137559868
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。