2010年01月21日

●遺伝子変異には2つの種類がある

 ウイルスは絶え間ない遺伝子変異を繰り返しているのですが、実はイ
ンフルエンザウイルスで怖いのは、この「変異」なのです。遺伝子変異
には、次の2つがあります。
――――――――――――――――――――――――――――――――
  1.マイナーモデルチェンジ型の変異 ―― 抗原の 連続変異
  2.フル  モデルチェンジ型の変異 ―― 抗原の不連続変異
――――――――――――――――――――――――――――――――
 インフルエンザウイルスは、車のモデルチェンジに例えることができ
ます。「マイナーモデルチェンジ」は、エンジンやシャーシーなどの骨
格部分はそのまま使って、オプション部品を付けたり、塗装の色を変更
したりする――いわゆるマイナーな変更ですが、インフルエンザウイル
スにもそういう変化はあるのです。これを「抗原の連続変異」と呼んで
いるのです。
 人間がインフルエンザウイルスに感染すると体内に抗体ができます。
これがあるので、次にウイルスが入ってきても獲得免疫が働いて、ウイ
ルスを撃退してくれるのです。
 しかし、抗原の連続変異で生まれた基本構造は変わらないものの、周
辺が少し違うウイルスが入ってくると、用意した抗体では対応できない
ことが起きるのです。したがって、人間の抗体防御網をすり抜けたウイ
ルスが生き残り、増殖することになります。
 われわれが抗体があっても毎年インフルエンザウイルスに感染してし
まうのは、この「昔と少しだけ形の異なるウイルス」のせいなのです。
したがって、毎年感染予防のためにワクチンを打ち続けなければならな
いのです。
 問題は、フルモデルチェンジ型の変異です。これが起きると、ウイル
スの抗原性はがらりと一変するのです。このような劇的な変異のことを
「抗原の不連続変異」といいます。
 ここで少し専門的な説明を理解していただく必要があります。インフ
ルエンザウイルスを電子顕微鏡で見ると、ウイルスの外被膜から釘のよ
うなものが出ているのがわかります。この釘状のものはタンパク質であ
り、「スパイクタンパク質」というのです。「スパイク」とは「釘」と
いう意味です。
 スパイクタンパク質は次の2つで構成されています。これら2つは、
インフルエンザウイルスの性質を決定づける重要な役割を果しているの
です。
――――――――――――――――――――――――――――――――
      1. ヘマグルチニン ・・・・・ HA
      2.ノイラミニダーゼ ・・・・・ NA
――――――――――――――――――――――――――――――――
 人間のゲノム――ある生物をその生物たらしめるのに必須な遺伝情報
は2本鎖のDNA(デオキシリボ核酸)であるのに対して、インフルエ
ンザウイルスのゲノムは1本鎖のRNA(リボ核酸)で、しかも8本に
分かれています。
 HAは抗原性の違いにより、16の亜型に分類されます。「H5N1
亜型」の「H5」はHAの亜型が「5」という意味になります。これに
対してNAはNAの抗原性の違いにより、9つの亜型に分類されます。
「H5N1亜型」の「N1」とはNAの亜型が「1」という意味です。

●遺伝子の再集合によって誕生する新型インフルエンザウイルス

 さて不連続変異が起きると、インフルエンザウイルスの抗原性を決め
るHAとNAの両方、あるいはどちらか一つが別の型に変化してしまう
のです。これによって、季節性インフルエンザとは抗原性の異なる新し
いインフルエンザが生まれることになります。
 そのため、以前に感染したときにできた免疫も、現行のワクチンも全
然効果がなくなります。1957年のアジア風邪や、1968年の香港
風邪の原因になった新型インフルエンザウイルスは、こうした仕組みに
よって誕生したのです。抗原の不連続変異をまとめると次のようになり
ます。
――――――――――――――――――――――――――――――――
   ≪抗原の不連続変異≫
    1.遺伝子再集合によりウイルスの抗原が大きく変化
    2.HA亜型のみ、あるいはHA、NA両亜型が変化
    3.パンデミックの一因/現行のワクチンは効果なし
――――――――――――――――――――――――――――――――
 現在世界中で感染が拡大している豚由来の新型インフルエンザウイル
ス――A型、H1N1亜型も遺伝子再集合によって発生した、まったく
新しい顔を持つウイルスなのです。このように、抗原性が著しく異なる
新型のインフルエンザウイルスは、遺伝子の再集合によって誕生するの
です。
 遺伝子の再集合とは、ひとつの細胞に異なるインフルエンザウイルス
が同時に感染することによって、従来とはまったく異なる組み合わせの
RNA分節を有する遺伝子が誕生することをいうのです。
 このウイルスは高病原性インフルエンザに比べて病原性が弱いとされ
ているので、季節性インフルエンザの仲間ではないかと思われています
が、まったくの別物なのです。
――――――――――――――――――[インフルエンザの話/06]
posted by キーヘルス at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | インフルエンザの話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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