2010年02月04日

●ワクチンとは何か――2種類がある

 ワクチンとは何であろうか。
 ワクチンは人類の考えたウイルス感染症を予防する方法の中で最も効
果的なものです。天然痘やポリオ、そしてインフルエンザなど、ワクチ
ンによって、数多くのウイルス感染症が克服されているのです。
 ワクチンの目的は、治療薬ではなく、「感染を予防すること」です。
そのため、ワクチンは感染前に接種するものです。こんな当たり前のこ
とが、よくわかっていない人も多いのです。
 ワクチンを発見したのは英国の開業医エドワード・ジェンナーです。
牛痘にかかった人間は天然痘にかかりにくくなり、かかっても症状が軽
いことを発見し、これにより天然痘ワクチンを作ることに成功したので
す。
 この研究を引き継いだのは、フランス人の生化学者のルイ・パスツー
ルなのです。パスツールは、病原体を培養し、これを弱毒化し、それを
健康な人に感染させるという、当時としては画期的な「ワクチン療法」
を確立したのです。
 その後、ウイルス学の発展とともにワクチン製造の技術革新が進み、
いろいろなタイプのワクチンが開発されるようになったのです。現在使
われているワクチンには次の2つがあります。
――――――――――――――――――――――――――――――――
          1.生ワクチン
          2.不活化ワクチン
――――――――――――――――――――――――――――――――

●「生ワクチン」は効果が高いが副作用がある

 パスツールをはじめとする初期の学者たちが使ったのが、「生ワクチ
ン」なのです。生ワクチンは弱毒化されていますが、文字通り「生きて
いるワクチン」であり、生ワクチンを投与すると、人間の体内で軽度の
感染が起きるのです。
 これによって免疫記憶が生まれ、病原体を体内から排除したあとも、
その免疫記憶は残るので、次に同じ病原体が侵入してきたとき、素早く
抗体を産生して発症を防ぐのです。
 このあたりのことをもう少し詳しく述べることにします。病原体が体
内に侵入すると生体内には病原体をターゲットとする抗体が血清中に作られるのです。抗体を作るのは「B細胞」と呼ばれるBリンパ球です。
B細胞が作った抗体が病原体に付着すると、病原体は自由を奪われ、伝
播力を失うのです。これを「体液性(液性)免疫」といいます。
 この病原体を覚えたB細胞の一部が「免疫記憶細胞」になるのです。
この細胞はリンパ節に残り、同じ病原体が侵入してきたときに、すばや
く抗体を作るB細胞を産生するのです。はしかや風疹などに一度かかる
と、二度と発症しないのは、この免疫記憶の働きによるものです。
 ところが、感染が少し重度に進むと、ウイルスは宿主の細胞内に侵入
するのです。こうなると、B細胞は無力です。しかし、ウイルスによっ
て侵された細胞は、生体内で「感染した細胞」として認識されます。
 そうすると、ウイルスは「細胞傷害性T細胞」によって攻撃され、排
除されます。これを「細胞性免疫」というのです。生体は、この2重の
免疫によってウイルスを排除してくれるのです。

●「不活性ワクチン」が一般的には使われる

 「生ワクチン」と並ぶもうひとつのワクチンが「不活化ワクチン」で
す。生ワクチンの場合、何しろ生きたウイルスであるので、もともと免
疫力の弱い人に接種すると、副作用が発生することがあるのです。その
ため、生ワクチンで日本で認可されたものは少ないのです。
 不活化ワクチンとは一口にいえば「死んだワクチン」ですが、その定
義を示しておきます。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 不活化ワクチンはホルムアルデヒドなどの化学薬品などで不活化させ
 た(感染能力を失わせた)ウイルスや細菌、あるいはそのタンパク質
 の一部をもとに作製する。現在使用されている不括化インフルエンザ
 ワクチンは、ウイルスの構成要素をバラバラにしたスプリットタイプ
 が主流だ。このタイプは副作用のリスクが少ない反面、ウイルス構造
 を壊さずに不括化した全粒子タイプに比べて効き目が悪いとされる。
  ――河岡義裕/堀本研子著『インフルエンザパンデミック/新型ウ
                 イルスの謎に迫る』(講談社刊)
――――――――――――――――――――――――――――――――
 不活化ワクチンの問題点は生ワクチンよりも予防効果が低い点です。
それは、生ワクチンが「体液性免疫」と「細胞性免疫」の2つの免疫でウイルスを防ぐのに対して、不活化ワクチンは、「体液性免疫」だけなのです。
 そのため、細胞内に入ってしまったウイルスには無力になのです。そ
れに加えて、不活化ウイルスを皮下接種しているので、血中には体液性
免疫によって抗体は作られるものの、インフルエンザウイルスの侵入口
である鼻や喉の粘膜面に抗体が分泌されにくいのです。生ワクチンより
も安全ではあるものの、効果はいまひとつなのです。
               ―― [インフルエンザの話/08]     
 
posted by キーヘルス at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | インフルエンザの話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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