2010年02月18日

●M2阻害剤としての「アマンタジン」

 前回ご紹介した現在市販されている2種類の抗インフルエンザ薬を再
現しておきます。
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         1.      M2阻害剤
         2.ノイラミニダーゼ阻害剤
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 M2阻害剤としては「アマンタジン」があります。商品名はシンメト
レルです。アマンタジンは、ウイルス表面にあるM2タンパク質の働き
を阻害することによってウイルスの増殖を抑えるのです。そのため「M
2阻害剤」というのです。しかし、M2タンパク質はB型インフルエン
ザウイルスには存在しないので、アマンタジンはB型ウイルスには効果
がないのです。
 インフルエンザウイルスは、宿主の細胞に取り込まれただけでは増殖
できないのです。インフルエンザウイルスが細胞内で増殖するには、ウ
イルスの命ともいうべきRNAを宿主の細胞質内に移動させなければな
らないのです。
 ところが、ウイルスのRNAは、タンパク質との複合体(RNP)を
形成していて、外皮膜――エンベロープと呼ばれる脂質でできた殻に固
定されているのです。したがって、宿主の核に送り込むには、RNPと
外皮膜との結合を解除させる必要があるのです。
 M2タンパク質というのは、このRNPと外皮膜との結合を解除させ
るうえで重要な働きをするのです。結合の解除には「イオンチャネル活
性」がカギを握っています。M2タンパク質は、ウイルスの外皮膜を貫
通しているタンパク質であり、水素イオンの導入を制御する「イオンチ
ャネル活性」を持っているのです。
 インフルエンザウイルスが宿主細胞の小胞――エンドソームに取り込
まれると、イオンチャネルが活性化され、エンドソームの水素イオンが
ウイルス粒子内に流入するのです。水素イオンが流入して外皮膜の内部
が酸性になると、RNPと外皮膜との結びつきがゆるんで、RNPが外
皮膜から離れることができるのです。
 しかし、アマンタジンを投与すると、M2タンパク質の働きが阻害さ
れ、水素イオンの流入がストップするのです。その結果、RNPは外皮
膜から外れることはできなくなり、ウイルスRNAを細胞質に送り込む
ことを阻止してウイルスの増殖を抑えることができるのです。
 なお、アマンタジンは予防薬として優れた特性を持っており、事前に
服用しておけば、インフルエンザウイルスに感染しにくくなります。ま
た、感染した後に服用すると、発熱などの症状も軽減するので、世界各
国の医療現場で使われたのです。しかし、最近では使われることはない
のです。
 アマンタジンが米国で認可されたのは1966年のことですが、それ
からわずか数十年で抗ウイルス薬としては役に立たなくなっています。
それは耐性ウイルスの出現によるものです。アマンタジン投与の患者の
実に80%に耐性ウイルスが出現することが確認されているのです。

●ノイラミニダーゼ阻害剤としての「タミフル」

 アマンタジンの効力がなくなってしまった現在、最も使われているの
は、ノイラミニダーゼ阻害剤なのです。日本で認可されているノイラミ
ニダーゼ阻害剤は「タミフル」の商品名で知られる経口剤の「リン酸オ
セルタミビル」と、吸入剤の「ザナミビル」――商品名リレンザです。
 ノイラミニダーゼ――NAというのは、ウイルス表面を覆うスパイク
タンパク質の一つです。その名の通りノイラミニダーゼ阻害剤は、NA
の働きを阻害することによって、ウイルスの増殖にブレーキをかけるの
です。
 アマンタジンが、ウイルスRNAの細胞内への侵入を阻止するのに対
し、ノイラミニダーゼ阻害剤は、細胞内で増殖したウイルスが、細胞表
面から遊離していくのを阻害する薬なのです。
 もう少し詳しく説明しましょう。
 インフルエンザウイルスは、赤血球凝集素(HA)とノイラミニダー
ゼ(NA)とを有しています。赤血球凝集素は、ウイルスが宿主細胞に
侵入するさいに必要になります。ウイルスは、赤血球凝集素を介して、
宿主細胞のウイルス受容体に結合します。
 ノイラミニダーゼは、ウイルスが宿主細胞から遊離する際に必要にな
るのです。宿主細胞内で増殖したウイルスは、ノイラミニダーゼにより
ウイルスの赤血球凝集素と宿主細胞のウイルス受容体との結合を外す役
割をするのです。抗インフルエンザウイルス薬のリン酸オセルタミビル
すなわち、タミフルはウイルスのノイラミニダーゼを阻害し、宿主細胞
内で増殖したウイルスが、宿主細胞外への遊離を抑制して、インフルエ
ンザウイルスの増殖を抑制するする働きをするのです。
 タミフルは、ギリアド・サイエンシズ社が1996年に開発した抗イ
ンフルエンザ薬であり、スイスのロシュ社が製造し、日本では中外製薬
が販売しているのです。日本は世界でもっともタミフルの消費量の多い
国であり、季節性インフルエンザが大流行した2002〜2003年に
は全世界でのタミフル生産量の70%が日本で使われたのです。
               ―― [インフルエンザの話/10]
posted by キーヘルス at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | インフルエンザの話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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