2010年07月08日

●性格と鬱病とは関係があるか

 「プチ鬱」──鬱な気分を性格のせいにする人がいます。職場で上司
にミスを指摘され、休日になってもそのことが頭から離れず、寝つきが
悪くなったりしたとき、「つまらないことを気にする性格だからダメな
んですよね」といったりします。
 これは自分自身がそういう性格を持っていることで、自分を責めるこ
とになるので、マイナスなのです。それに性格というものはそう簡単に
変わるものではないので、そういってしまうと、なかなか「プチ鬱」か
ら抜け出せなくなってしまうのです。
 ところで、性格とは何でしょうか。
 性格というものは個人の反応や行動の特徴なのです。性格に似た言葉
に「気質」があります。気質は性格よりも生まれたときからその人が持
っている特質であって、性格よりも変えにくいものであるといえます。
 門倉真人先生は、性格は不変なものではないとし、それと鬱病の関係
について次のように述べているのです。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 性格は不変のものでしょうか。性格を「個人の反応や行動の特徴」と
 すればそれは決して不変のものではなく、私たちの感情、意欲、経験
 などに大きく左右されるものであることがわかります。気分が良いと
 きは、明るい性格になったり、落ち込んでいると暗い性格になったり
 するのは、誰しも経験したことがあるでしょう。とくに、鬱や躁など
 の感情の起伏は、個人の反応・行動パターンに直接的に大きな影響を
 与えます。(省略)鬱病や躁病は性格の問題ではありません。鬱病や
 躁病は感情の障害であり、いわゆる性格の問題ではないのです。鬱病
 では、意欲低下や抑鬱気分という症状によって「個人の反応や行動の
 特徴」が変化します。躁病では多升多動や自己肥大感といった症状が
 出現し、症状によってあたかも性格が変わったようになるのです。
 ──門倉真人著『鬱のパワー/落ち込んだあとに3歩前進する方法』
                      講談社+α新書より
――――――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、一般論として、母が、神経質、生真面目、厳格で、口うるさ
い性格の場合、どうしても子供は親の顔色を見て育つようになります。
そしてその子はさまざまな環境において、いつも他人の目を人一倍気に
してしまうようになり、これは鬱病の引き金になります。

●心の安定のために『歎異抄』を読ませる

 五木寛之氏の話によると、政府から鬱病対策として何をしたらよいか
教えて欲しいという打診があったということです。ちゃんと精神科医と
いうものがいるのに作家に対策を聞くというのもおかしなことですが、
実際は精神科医でも何をすべきかわからない場合が多いことは確かなの
です。
 政府は2006年に「自殺対策基本法」を立ち上げており、予算措置
も行われています。担当部署が自殺者を調べてみると、鬱病の患者が多
く、鬱病を減らせば自殺者は減るのではないかと考えたので、何か良い
知恵はないかと五木氏に話があったのです。
 五木氏が外科医の学会に講演を頼まれたとき、外科医から大きな手術
の患者さんに『歎異抄』が読めるようやさしく書いて欲しいという依頼
があったそうです。五木氏は小説『親鸞』(講談社刊)を上梓している
ので、そういう依頼があったのでしょう。
 『歎異抄』とは文字通り「異義なることを歎く書物」です。「抄」と
いうのは、一般的には、抜き書きし・書き写したものということです。
この書には著者の名前が出ていませんが、親鸞聖人の門弟である唯円と
いう人が書いたものであると推定されています。
 親鸞聖人の亡くなった後、主として関東の門弟が親鸞聖人の信仰と異
なった勝手な主張をしていることに対して、嘆いたうえ間違っている点
を指摘し、正しい伝承に戻し、真実に帰ってもらいたいという願いに燃
えて、前半10章に直接親鸞聖人から聞いた言葉を示し、後半8章に異
義に対する唯円の批判を示して書かれた書物です。       
出典:http://kyoto.cool.ne.jp/otera/tanni/
 多くの病院では、手術を受ける患者に対し、「手術が心配だと思って
いる人はご相談ください」というチラシを配っています。申し出た人は
そういうメンタル・ケアのひとつとして心の安定をもたらす『歎異抄』
を読ませるという方法がとられているようなのです。五木氏はこういっ
ています。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 僕は銀行の頭取に「なんで僕らみたいな、迂遠な話をする人間に話を
 聞くんですか」と訊ねたら、社員の心が壊れているとしか思えない現
 象が毎日起きていると。メンタル・ヘルス・トレーニングをいろいろ
 やるけども、まったく効き目がない。それでようやく、これは心の問
 題ではないか、ということになった。五木さんのような非実用的なお
 話をしていただければ役に立つのではないかと、溺れる者は藁をも掴
 むという気持ちでお願いしました、なんて言うわけです。じゃあ僕は
 藁か、と(笑)。
   ──五木寛之/香山リカ共著/『鬱の力』/幻冬舎新書088
――――――――――――――――――――    [鬱の話/07]
posted by キーヘルス at 01:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 鬱の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めまして。
拙書をご引用いただきありがとうございます。
「うつ病」の概念は、とても広く一般にも浸透しているようにみえて、実はまだまだ誤解されていることがたくさんあります。
そして、そこを説明した本はほとんどなく、特にポジティブシンキングに関する誤解は蔓延していて、そこがとても気になっていたことが拙書を書くきっかけでした。
また、いろいろとご意見、ご感想などいただければ幸いです。
今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by 門倉真人 at 2010年07月08日 10:52
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