2010年07月29日

●鬱病の人は睡眠障害になりやすい

 鬱病のほとんどは不眠などの睡眠障害を伴うとされています。したが
って睡眠障害がひどい場合は、鬱病を疑ってみることが必要です。
 2006年に日本大学医学部が、20歳以上の男女2万4688人を
対象に行ったアンケート調査の解析結果がそれを示しています。鬱病の
人における不眠症の各症状へのなりやすさについて健康な人と比較した
調査ですが、健康な人を「1」としたとき、睡眠障害の次の4つの症状
が鬱病の人にどのぐらいの倍率で出るか調べたものです。これを「オッ
ズ比」といいます。
――――――――――――――――――――――――――――――――
       「入眠障害」 ・・・・・ 1.60倍
       「中途覚醒」 ・・・・・ 1.44倍
       「早朝覚醒」 ・・・・・ 1.21倍
       「日中眠気」 ・・・・・ 1.55倍
                『週刊東洋経済』7/24より
――――――――――――――――――――――――――――――――
 「オッズ比」とは、生命科学の分野において,ある疾患などへの罹り
やすさを2つの群で比較して示す統計学的な尺度です。オッズ比が
「1」とは,ある疾患への罹りやすさが両群で同じということであり,
「1」より大きいとは,疾患への罹りやすさがある群でより高いことを
意味します。
 逆に、オッズ比が「1」より小さいとは,ある群において疾患に罹り
にくいことを意味します。例えば,ある多型が疾患群100名中の40
名で,健常群が100名中の20名で認められたとします。このときの
オッズ比は次のようになります。
――――――――――――――――――――――――――――――――
      (40/60)/(20/80)=2.67
――――――――――――――――――――――――――――――――
 これは,ある多型において疾患群で出現するリスクが、健常群に対し
て2.67倍高いことを意味しています。
 一般的には、鬱病に苦しむ人は、夜中の2時とか3時に目が覚めてし
まい、そのあと眠れなくなる「早朝覚醒」が典型的症状とされていたの
ですが、日本大学の調査結果では、早朝覚醒よりも他の不眠の症状の方
がオッズ比が高くなっている点は注目すべきです。とくにオッズ比の高
いのが「入眠障害」であり、寝つきの悪さが鬱病と関連を持っていると
いえます。

●抗鬱剤にはレム睡眠を抑制する

 鬱病の患者を眠らせないようにして、症状改善を目指す療法がありま
す。なぜ眠らせないようにすると効果があるのかですが、鬱病の症状に
は生体リズムの異常を示すものが多いため一時的に睡眠を断つことで、
生体リズムを改善しようというものです。
 この断眠療法は、1970年代から欧州で研究が始まり、日本では秋
田大学医学部付属病院などが取り入れています。一晩の断眠直後から効
果が出るといわますが、その有効率は60%と高く、抗鬱剤の有効率と
差はないのです。抗鬱剤を飲むのに抵抗のある患者には試みる価値のあ
る療法です。
 しかし、患者を眠らせないようにするには、そのためのスタッフを確
保しなければならないなど、方法論としての難しさを指摘する医師もい
ます。また、東京女子医大の石郷岡純教授は、断眠をした場合、ポジテ
ィブあるいはニュートラルな情報が記憶から減り、ネガティブな情報は
あまり減らないという指摘をしており、賛否が分かれています。
 しかし、一般的には鬱病には不眠が伴うので、抗鬱剤によって睡眠を
誘導させる方法がとられることがあります。抗鬱剤の主なものには次の
3つがあります。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 1.三環系抗鬱剤
 2.SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)
 3.SNRI(セロトニン・ノンアドレナリン再取り込み阻害剤)
――――――――――――――――――――――――――――――――
 これらの抗鬱剤──とくに三環系抗鬱剤には、鬱病患者に多い「レム
睡眠」を抑制する働きのあるものが多いのです。SSRIやSNRIに
もその働きはあるのですが、逆に覚醒的に働くという報告もされている
のです。
 健康な人の睡眠は、入眠後、ノンレムと呼ばれる深い睡眠に入り、そ
の後は周期的に浅いレム──レム睡眠とノンレム睡眠を何回か繰り返し
て目覚めるというパターンを持つのです。これに対して鬱病の人の睡眠
は、入眠後すぐにレム睡眠が訪れ、第一周期からレム睡眠の時間が長く
なる傾向があります。つまり、鬱病の人の眠りはとても浅いのです。三
環系抗鬱剤は、このレム睡眠を抑制する働きがあるのです。このように、
不眠は鬱病に発展することが多いのです。日大医学部の内山教授は、次
のようにいっています。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 不眠などの体の症状がまず自覚され、その後、表情のなさなどが現れ
 る。本人が鬱病を自覚するのはずいぶん先になる。 ──内山教授
――――――――――――――――――――――――――――――――
                      ──[鬱の話/10]
posted by キーヘルス at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 鬱の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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