として3について考えます。
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1. 涙を流す
2.呼吸を合わせる
→ 3. グルーミング
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グル―ミングとは何でしょうか。英語で、そのスペルは次の通りです。
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grooming ──”groom” に ”ing” を付け足して、”grooming”
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「グル―ミング」という言葉はペットを飼っている人であれば、誰で
も知っています。ペットを撫でることをグル―ミングというのです。現
代はペットブームといわれますが、この現象はそれだけスキンシップの
機会のない孤立した人間が増えていることを意味しているのです。
しかし、ペットはしゃべらないので、コミュニケーションは成立しな
いという人がいますが、そんなことはないのです。なぜなら、それは、
言語コミュニケーションがないだけであり、前頭前野がつかさどる共感
力を使ったコミュニケーション──非言語コミュニケーション、グルー
ミングがあるからです。
共感力を使ったコミュニケーションはいろいろあります。仲間と一杯
やるというのもグルーミングですし、女性のよくやっている井戸端会議
もグルーミングの一種なのです。全員が同じ場所にいて、同じ空気を吸
いながら、打ち解けて会話を交わす──これがグルーミングなのです。
有田秀穂先生によると、非言語コミュニケーションには次の3つがポ
イントになるといっています。
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1. 呼吸
2.心臓の鼓動
3. 視線
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赤ん坊はおなかの中にいるときから、母親の心臓の音を聞き分けてい
ます。そして生まれてからは母親と肌を接しているので、母親の呼吸の
状態を感じているのです。赤ん坊は本能的に母親の呼吸と自分のそれを
合わせるのです。
そのように呼吸を合わせていると、母親が怒っていれば呼吸が荒くな
りますし、赤ん坊はそれを感じておびえるのです。母親があせっている
ときは赤ん坊も落ち着かなくなりますし、母親がやさしい気持ちでいる
ときは、赤ん坊は安心して穏やかなのです。
最後に赤ん坊はつねに母親の目を探しています。赤ん坊は母親の目を
見て、それがどこに向いているかを認識しているのです。そういう意味
で乳母車に乗せて赤ん坊を運ぶにはあまり感心しないのです。なぜなら
赤ん坊が母親の視線を感じられないからです。そのため、美智子皇后は
乳母車にバックミラーをつけていつでも母親の視線を見られるようにし
た話は有名です。
●非言語コミュニケーションができない大人の出現
非言語コミュニケーションができない大人が増えています。どうして
そういう大人が増えたかというと、母親の社会進出が増えて子どもとの
スキンシップが取れないままに過ごす時間が多くなり、子どもは非言語
コミュニケーションを身につける機会が減ってしまうからです。
現代は物質に恵まれています。とくにテレビは子どもが喜ぶので、母
親は忙しいとつい一人で見せてしまいがちです。これについて、有田秀
穂先生は、次のようにいっています。
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子どもはテレビを観ていればおとなしいからと、テレビに子守をさせ
る。ところが、テレビというのは一方的なコミュニケーションでしか
ありません。もり赤ん坊がいくら笑いかけても、テレビは反応してく
れないのです。そうした環境で日常生活を送っていれば、他人に共感
することができない人間に育ってしまうのは、ごく自然の成り行きと
いっていいでしょう。その結果、子どもに脳の発達障害が起こるので
す。とくに脳のうちでも、人間を人間らしくしている前頭前野という
のは、人生経験を重ねるにしたがって発達していく部分です。それが
うまく発達できないわけです。
──有田秀穂著 『ストレスに強い脳、弱い脳』/青春新書
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最近の子どもはけんかをしないそうです。けんかをすると、どこでや
めるべきかを自然に悟るのですが、けんかをしないと、その歯止めがわ
からなくなるのです。これは現代の陰湿ないじめが起きる原因になりま
す。
それではそういう共感力を持っていない大人は、もはや直すことはで
きないのでしょうか。そんなことはありません。セロトニン神経を鍛え
前頭前野を活性化させると、共感力は戻ってくるのです。
──[ストレスと脳の話/11]
: 森田啓子のサンランド