2008年01月10日

●コレステロールと死亡率との不思議な関係

●コレステロール値が低い人はうつ病になりやすい

 コレステロールの話題を今回も続けます。ミネソタ大学のジェーコブス教授の研究と同じ目的を持つ研究は、1990年当時からいろいろな学者によって行われていたのです。そのひとりであるピッツバーク大学のマルドーン教授はやはり多くの事例からメタアナリシスを行っています。
 マルドーン教授の研究結果によると、コレステロールを薬や食事で低下させると、心筋梗塞による死亡率は15%程度低下するが、全体の死亡率はあまり変わらないそうです。全体の死亡率が変化しないとすると、心筋梗塞による死亡率が減った分、何かの死亡が増えていることになります。何の死亡が増えているのでしょうか。
 マルドーン教授のチームの調べた結果によると、うつ病による自殺と事故死の率が高いことがわかったのです。ここでいう事故死とはうつ病による事故死だけではなく、一般の事故死も含まれるのです。交通事故などは心理的な影響による原因がかなり関与しているといわれます。
 1997年になって、オランダのライデン大学のウエーバーリング・リジュンブルガー氏のチームの研究が発表されたのです。このチームは、平均年齢が89歳の642人の高齢者を対象に、1986年12月1日から1996年の10月1日までの約10年間を追跡調査したのです。
 死亡率に関しては、コレステロール値が194ミリグラム/デシリットル以下の低いクラスの全体死亡率を1としたときの割合では、低いクラスの死亡率が最も高く、コレステロール値が高くなるにつれて、死亡率が低くなっているのです。
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   194ミリグラム/デシリットル以下の死亡率 ・・・・ 1.0
   194〜245ミリグラム/デシリットルの死亡率 ・・ 0.8
   246ミリグラム/デシリットル以上の死亡率  ・・・ 0.7
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 さらに、死因に関しては、極めて興味深い結果が出ているのです。心筋梗塞を含む心血管障害は、コレステロール値が高いほど死亡率が高く、コレステロール値が194ミリグラム/デシリットルと比較すると、246ミリグラム/デシリットルでは、死亡率が17%近く増えています。これは常識的な結果であるといえます。
 ところがこれとは逆に、ガン、呼吸器障害、認知症のいずれもコレステロール値が高い方が危険は低いのです。とくに認知症の場合は、コレステロール値が低い方が高い方の倍以上かかりやすくなっているのは注目に値します。

●血中コレステロールと脳内コレステロールとの関係

 日本でもコレステロール値の高い人の方が低い人より死亡率が低いという調査は多く見られます。大阪府守口市で、1997年度に健康診断を受けた住民、約1万6000人を5年間にわたって調べたところ、男性の場合、コレステロール値の高い人の方が死亡率は低かったのです。
 男女あわせると、糖尿病の患者や喫煙者は、そうでない人に比べ死亡率が高かった一方、高コレステロール血症の人は、かえって死亡の危険が小さいという結果が出たのです。そのため、コレステロール値を薬や食事で下げる治療は、心臓病患者に限定して行うべきであるという意見も出ています。
 はっきりしていることは、血中のコレステロール値の高い人は心臓病――心筋梗塞の危険性が高いということです。これはどの調査でもはっきりとあらわれています。しかし、どうしてコレステロール値の高い人が心臓病以外の病気では死亡率が低くなるのかはまだ究明されていないのです。
 そもそもコレステロールは、人間の体内で1日に1グラム程度が代謝される――新しいものと入れ替わるのです。このうち体内で作られる分が60%、残り40%は食事で摂取されるのです。この場合興味深いのは、体内のコレステロールの合成は、食事でたくさんコレステロールをとると自動的に制御され、一定程度以上には増えないようになっていることです。
 もうひとつ知っておくべきことがあります。血中のコレステロールはそのまま脳には達しないということです。これは、特殊な方法でマークをつけたコレステロールを人の血管に注射して、その動きを追跡して調べた結果、血液を伝わって脳には達しないことがわかっているのです。
 脳内のコレステロールは、グリア細胞で作られるので、血中のコレステロール値は、脳内のコレステロール値とは関係がないように見えるのですが、両者は何らかの連携をとって、一定のバランスを保っているという説があります。これは、認知症とコレステロールとの関係を探る研究から、わかってきたことなのです。これらの研究から、「コレステロール値の高い人は認知症になりにくい」ことは確かなようです。
 なお、コレステロールには、善玉と悪玉の違いがありますが、これはコレステロールそのものではなく、コレステロールとその運び屋であるリポタンパクの複合体を指すのです。しかし、どちらもコレステロールを運ぶという重要な役割を担っており、その運び方の違いから善玉、悪玉といわれているに過ぎないのです。したがって、どちらも必要なのです。           
posted by キーヘルス at 05:22| Comment(0) | TrackBack(1) | コレステロール | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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