2007年07月29日

●脳活性化マシンで脳は活性化するのか

 最近脳を活性化させる「ニンテンドーDS」(任天堂)というマシンが売れているそうです。松島菜々子のCMでブレークしたのです。このマシンは東北大学の川島隆太加齢医学研究所教授の指導の下に開発されたということですが本当にこのようなマシンで脳が活性化するものでしょうか。川島教授は、次のようにいっています。
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 脳の機能は青年期を過ぎると加齢とともに低下します。これはごく普通の生活をしていても体力や筋力が年々低下するのと同じです。しかし体力や筋力は毎日の運動習慣で低下を防ぐ、もしくは向上させることができます。つまり体力は鍛えることができるのです。そして私たちの脳についてもこれらと同じだということがわかってきています。毎日、積極的に脳を使う習慣をつけることによって、脳の機能の低下を防ぐことができるのです。
                    ――川島隆太東北大学教授
       http://www.nintendo.co.jp/ds/andj/introduction/index.html
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 川島教授はアルツハイマー病の人たちを対象に行ったテストの結果から、脳の「前頭前野」の働きがよくなることを発見したのです。「前頭前野」というのは、脳の中で35%を占める前頭葉の中にある人間のこぶし程度の大きさの部分のことです。前頭前野は、記憶、感情、集団でのコミュニケーション、創造性、学習、そして感情の制御や犯罪の抑制を司る司令塔のような存在です。
 読書をしたり、計算をすると脳内の血流量が増えることは確かなのです。川島教授は、読書や計算をすることによってより多くの血液が脳内に流れるさまをビジュアルに示し、脳内の血流量の増加は、脳が活性化された結果――前頭前野が刺激された結果であると結論づけたのです。
 しかし、テレビゲームなどのやり過ぎは前頭前野の活性化には寄与しないと川島教授はいうのです。それどころか、それによって前頭前野の司令塔としての機能は働かなくなり、種々の問題を引き起こす恐れがあるといいます。
 脳は神経細胞(ニューロン)同士がつながって働くことはわかってきています。脳内に流れる血流量が増えるということは、神経細胞の働きが活発になることを示すひとつのサインであることは確かですが、他の原因で血流量が増えることもあるとして、京都大学の久保田競名誉教授は、次の式は必ずしも成立しないといっています。
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        「脳の血流量増加」 = 「脳の活性化」
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●脳年齢が若いということは「未熟」であること

 もうひとつおかしいことがあります。「脳年齢」ということばです。体力は35歳前後を過ぎると衰えてきます。したがって、「体力年齢」は若いほどよいわけですが、脳は使えば使うだけよくなっていくのです。
 人間の脳は60歳ぐらいから縮小していくものです。脳は加齢にしたがって萎縮するのです。そして、一度萎縮した脳は元には戻らないのです。これは人間である以上避けることはできないのです。しかし、そういう制約の中でも脳は使えば使うほど、よくなっていくのです。
 前出の京都大学の久保田競名誉教授は、「脳年齢」について次のようにいっています。
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 脳はさまざまな経験や刺激によって成熟しますが、それは「脳年齢が高くなっている」ということです。「脳年齢が若くなる」ことは、「未熟になる」ことを意味します。脳年齢テストなどを行って、「脳年齢を若くしたい」と思う方は、脳について誤解していると言ってよいでしょう。
  ――久保田競京都大学名誉教授/「潮」2006年8月号特集より
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 久保田教授は、世界で最も権威のある「米国神経科学会」で100点以上の研究発表を行った日本の脳研究の最高権威的存在ですが、脳を活性化するには脳を刺激して「快感」を得ることが大切であると説いています。
 少し専門的にいうと、脳の中には「腹側被蓋野」(ふくそくひがいや)という重要な領域があり、この領域が働くと、神経細胞の軸索の末端で、ドーパミンという神経情報を伝える働きをする物質が分泌され、脳全体が活性化するというのです。脳の働きを活発化し、考える力と運動能力を向上させるカギはこの腹側被蓋野にあるといえます。
 久保田教授によると、腹側被蓋野を日常生活の中で働かせるには、次の3つのことをやればよいといっています。誰でも実行できることす。
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           1.おいしいものを食べる
           2.美しいものを見聞する
           3.美しい音楽を鑑賞する
―――――――――――――――――――――――――――――――以上
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2007年08月02日

●料理は脳の前頭前野を活性化させる

 女性は男性に比べて認知症になりにくいといわれます。その原因はまだ解明されていませんが、女性が高齢になっても日々の料理を作っていることに関係があるようです。最近は男性も料理を作るようになりましたが、それでも女性の方が圧倒的に料理を毎日作っているからです。
 逆に女性が認知症になるケースで多いのは、何らかの事情で毎日の料理をしなくなったケースです。息子が結婚してお嫁さんがやってきて、料理をするようになる――この場合、料理をしなくなった母親は、少しずつ認知症の症状があらわれ、やがて料理ができなくなってしまうといいます。
 料理はさまざまな情報処理を行って仕上げる知的な作業なのです。主婦の多くはスーパーに行き、その日の特売品を見たとたんに夕食の献立を決めるといわれます。特売品の食材を中心にして献立に必要な食材を買い整えるのですがその時点から料理ははじまっているのです。
 そして実際の料理は、複数の調理をガスコンロの数や出来上りの時間を考慮しながら、順序良く素早く行うなどのかなり複雑な作業が要求されます。こういうとき、脳の前頭前野が大活躍するのです。つまり、料理は非常に脳を活性化させる作業なのです。
 こういうケースもあります。脳腫瘍のため、右前頭連合野を取り除く手術を受けた女性がいるのですが、彼女は、手術前にはできていた料理が、術後はできなくなってしまったといいます。この女性は、行動のプログラミングを担う前頭連合野を切除したために、料理ができなくなったのです。このように料理と脳の前頭前野の働きには密接な関係があるのです。
 それに加えて、料理をするとき誰でもおいしいものを作ろうとします。そのため狙い通りの料理に仕上がった場合は、その達成感がドパーミンの分泌をもたらし、脳の活性化を一層促進するのです。ある脳科学者は、脳の活性化に関して、次のようにいっています。
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 脳というものは、創造的な活動をしているときに最も活性化する。それは日常の行為でいえば、人を喜ばそうと努力しているときである。
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 確かに料理をする人には、何とかおいしいものを作って、食べる人を喜ばせようとする気持ちがあります。そういう気持ちをこめて料理をすると、一層脳の活性化を促進するのです。

●「おいしいものを食べる」は脳活性化のポイントである

 料理をすることを習慣づけると脳の機能がアップすることを東北大の脳科学部と大阪ガスの共同研究チームが調査をしています。この研究でも料理をしているときに、脳の前頭前野が活発に働いていることがわかっています。
 前頭前野とは大脳の一部で、おでこのすぐ内側にあります。ここは思考や感情をコントロールしたり、いろいろな情報を統合して判断したり、人間の知的活動の中枢で「脳の中の脳」と呼ばれています。この前頭前野の機能を保つことが、認知症予防などにも重要だとされているのです。
 料理においては、そのすべてのステップにおいて脳が活発に動いていることが確かめられています。
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        1.特定食材を中心に献立を考える
        2.献立に必要な食材を全部揃える
        3.野菜を切るなど準備を実施する
        4.複数調理を同時平行に実施する
        5.料理を盛り付けて食卓に並べる
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 このように料理をするプロセスにおいては判断力や計画性、調理の順序や仕上がりを美しくする工夫など、脳の前頭前野をフル回転させているのです。このような実験結果から、お年寄りに料理をさせることによって、脳を活性化できないかという仮説を実証する実験が行われたのです。
 この実験では、59歳から81歳の料理経験のない男性が料理講習会に参加し、自宅でも1日15分以上週に5回以上、料理をするという宿題を3カ月にわたってやってもらったのです。その結果、何もしていない人には変化がありませんでしたが、料理をしていた人たちには前頭前野の機能が明らかにアップするという結果が出たのです。
 この実験に参加したお年寄りたちに感想を聞いたところ、料理がとても楽しいこと、成功不成功にかかわらず、料理が完成したときに深い達成感が味わえること、そして何よりも作った料理を全員で試食するのが一番楽しいという意見が寄せられたのです。
 料理はそれを作る人も食べる人の脳もともに活性化させるのです。なぜならもともと「おいしいものを食べる」ことは、脳の働きを活性化させる第1のポイントであるからです。脳の活性化の方法はいろいろありますが、それが継続して長く実施できるものを選ぶべきです。「おいしいものを食べる」というのであれば誰でもそれを継続して実施できるのです。         以上
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2007年08月09日

●脳を活性化させることが健康のポイントである

 2007年から2009年にかけて、いわゆる「団塊の世代」約800万人が定年退職するといわれています。ところで、定年退職者が定年に当たってよく口にすることばがあります。それは次の3つであり、健康を維持するためにいずれも大事なことです。
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      1.定年後はゴルフ三昧――健康にも良いから
      2.スポーツジムに通って強固な身体をつくる
      3.毎朝必ずウーキングを励行して病気を撃退
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 このなかで1については、実現できれば最高ですが、実現の困難性もあると思います。日本人の場合、ゴルフは会社がらみが多く、相手がいなくなることと、それにお金がかかることです。しかし、気の合う仲間同士で、継続的、定期的にやればゴルフは知的なスポーツであり、脳の活性化に役立ちます。
 これに対して2と3については、ご本人の意思の力が強ければ続けられるでしょう。身体を動かすということは健康の維持に大事なことですし、大いにやるべきです。しかし、これだけでは、重要なポイントがひとつ欠けているのです。それは「脳を活性化させているかどうか」ということです。
 もちろん身体を動かすということは、脳を活性化させるのですが、基本的にスポーツというものは同じ動作の繰り返しであり、ましてジムのトレーニングとなると、同じ動作の反復が多いのです。脳はこのような同じ動作についてはたちまちパターンを覚えてしまい、それを他の器官に行わせて自分は休んでしまうのです。この状態が続くと、脳はさびついてしまいます。
 例えばウォーキングで、家を出発して自分が決めた一定のルートを歩いて約1時間かけて家に戻るとします。この場合、ルートをどこにしようかなどと考えながら歩いているときは脳は活性化しますが、毎日同じルートを繰り返し歩いていると、脳は働かなくなります。したがって、毎日ルートを変えるなど、未体験のことに挑戦するようにしないと脳は活性化しないのです。
 実は、この「脳の活性化」こそ健康を保つ秘訣なのです。したがって、つねに「脳は活性化しているかどうか」を考えて、行動することが大切です。

●見た瞬間に判断する右脳の力

 京都大学の久保田教授が提唱する脳を活性化させる3つのポイントの2つ目は「美しいものを見聞する」です。「美しいもの」といってもいろいろあります。美しい景色を見る、彫刻など芸術品を観る、美しい絵画を鑑賞するなどです。なかでも絵画の鑑賞などは、美しいものを見る代表的なものでしょう。
 さて、人間の脳には「左脳」と「右脳」があります。これら2つの脳には次の役割があります。
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   1.左脳 ・・・ 論理的な思考を行う脳/意 識脳/デジタル
   2.右脳 ・・・ 五感による感覚・感性/無意識脳/アナログ
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 左脳は、言語と理論でじっくり思考し、記憶したり計算する意識脳です。これに対して右脳は、本能的能力から発達した脳で見たまま聞いたまま、感じたままにイメージ、五感、直感で瞬間的に記憶したり、一瞬のうちに情報を取り込む無意識脳なのです。
 左脳と右脳で注目すべきことは、それぞれの情報処理理の速さの違いです。情報処理の速さにおいて、右脳は左脳を圧倒しています。その差は、左脳よりも右脳は10万倍以上速いのです。
――――――――――――――――――――――――――――――――
   左脳の情報処理能力 ・・・      40バイト/1秒間
   右脳の情報処理能力 ・・・ 4300000バイト/1秒間
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 左脳は論理的に思考しようとするので、どうしても遅くなりますが、右脳は全体を一瞬で判断してしまうのです。コンピュータに例えると、左脳は画像が扱えなかった初期のパソコンであり、右脳は人間がまだ作ったことのない超スーパーコンピュータということになります。
 現在の学校教育は「左脳偏重」になっていますが、左脳は記憶するエリアが小さく、疲れやすく、忘れやすいのです。これに対しては右脳は、五感を通じて頭に入ってくるので、速く認識し、忘れないのです。そういう意味で、右脳を鍛えることはとても大切です。なぜなら、どんな人も右脳という超スーパーコンピュータを持っているからです。
 「美しいものを見る」というのは、一瞬のうちに全体を掴んで感じ取るものであり、右脳が働きます。音楽は時間の芸術といわれます。音楽は始まってしばらく時間が経過しないと、その良し悪しの判断ができないからです。
 それに比べて絵画は感覚の芸術であるといわれます。優れた絵画はそれを見た瞬間人を圧倒します。右脳が1秒間に430万バイトの処理速度でそれを伝えるからです。「美しいものを見る」ことは――右脳を活性化させる有力な方法のひとつなのです。 以上                      
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2007年08月28日

●モーツァルトの曲は身体に良い!?

 「モーツァルトの曲を聴くと血圧が下がる」――こういうことがよくいわれますが、本当でしょうか。「モーツァルト音楽療法」というのもあります。モーツァルトの音楽にどのような効用があるのでしょうか。
 結論からいうと、モーツァルトの曲を聴くと身体に良いことは医学的にもいえることなのです。人間の身体に「自律神経」というものがあります。自律神経のコントロール・センターは脳にあって、内臓、血管などの働きをコントロールして、体内の環境を整えています。すべての内臓、全身の血管や分泌腺は自律神経に支配されているわけです。
 自律神経は、知覚・運動神経と違って、私たちの意思とは関係なく独立して働いているのです。内臓や血管を私たちの意思で自由に動かすことは出来ません。しかし、私たちの身体は意識しなくても呼吸をしたり、食べたものを消化するため胃を動かしたり、体温を維持するため汗をかいたりしますね。それは自律神経があるからです。

 自律神経は、次の2つから構成されています。
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           I―― 交 感神経 ・・・ 活動する神経
    自律神経 ――I
           I―― 副交感神経 ・・・ 休息する神経
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 「交感神経」とは、簡単にいうと、私たちが起きて活動しているときの神経のことです。これに対して「副交感神経」は人間が寝ているときの神経なのです。つまり、交感神経は緊張しているときの神経であり、副交感神経はリラックスしているときの神経といえます。
 少し医学的にいうと、交感神経が血管を収縮させたり、心臓の拍動を増加させるのに対し、副交感神経は血管を拡張させ心臓の拍動を抑えます。したがって、副交感神経が働いている状態になると、血管は拡張し、心臓の動きがおだやかになるので、血圧が下がるのです。モーツァルトの曲には副交感神経を刺激する要素が多く含まれており、曲を聴くことによって、交感神経のモードが副交感神経のモードに切り替わるのです。

●副交感神経に切り替えるスイッチがある


 高血圧、冷え性、便秘症、糖尿病などの生活習慣病のほとんどは、交感神経優位の状態で起こされているのです。現代社会はストレスの大きい社会でありそのストレスが緊張を呼んで交感神経優位の状況ができやすいのです。
 これを解決するには、ときどき副交感神経にスイッチを切り替えてリラックスする必要があるのですが、人間の意思の力ではスイッチを切り替えることができないのです。
 ところが、モーツァルトの曲の中には、人間の自律神経に働きかけて、創造性を高めたり、痛みを緩和する要素が含まれており、モーツァルトの曲を聴くと、その音が自律神経に働きかけて、交感神経から副交感神経に切り替えるスイッチを入れてくれるのです。その結果、交感神経優位の状態で引き起こされるさまざまな病気にブレーキがかかるのです。確かにモーツァルトの音楽には常に一定のリズムがあり、それが人間の生体リズムを活性化し、聴く人の心と体をリラックスさせてくれます。
 ある種の音が自律神経に働きかけて、副交感神経モードに切り替える力があることがわかったのは1957年であり、そんな前のことではないのです。フランスの耳鼻咽喉科医であるアルフレッド・トマティスが唱えて有名になったのです。これは「トマティスの理論」といわれています。
 モーツァルトの音楽を聴くだけで本当に人間の身体に影響が出ることを確かめる方法があります。これは、埼玉医科大学教授和合治久氏が勧めている方法です。和合教授によると、モーツァルトのすべての曲にそういう効果があるのではなく、特定の曲に限られるのです。
 それは、モーツァルトの「ヴァイオリン協奏曲/K218」の第3楽章を、できればヘッドフォンで聴いてみることです。そうすると、舌下腺から自然に唾液が出てくるそうです。和合教授は次のようにいっています。
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 唾液が出るということは、ウイルスを撃退する免疫物質の量が増えてきたという証拠です。唾液がよく出る一方、汗ばんできます。さらに冷え性の人は手の甲が25〜26度しかないんですけど、モーツァルトの僕の選んだものを聴くと、30分後に最高で10度上がった人がいます。血圧が高い人もすぐ安定します。モーツァルトの音楽は、副交感神経にスイッチが非常に入りやすいんです。――和合治久埼玉医科大学教授             
――『潮』2006年8月号/対談「脳とこころに効くモーツァルト」
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 京都大学の久保田教授が提唱する脳を活性化させる3つのポイントの3つ目は「美しい音楽を鑑賞する」です。美しい音楽を聴くことによって自律神経ををコントロールする脳が刺激され、副交感神経に切り替わるなど脳が活性化するのです。第3のポイントについては次回も取り上げます。      以上
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2007年08月30日

●高周波音を多く含むモーツァルトの音楽

 人間の身体には「延髄」といわれる部分があります。延髄は脳の最下部にあり、後頭部と首の境目あたり、すなわち俗に「盆の窪(ぼんのくぼ)」と呼ばれる位置にあります。
 プロレスの技に「延髄切り」というのがありますが、対戦相手の首の裏あたりにある延髄めがけて、ジャンプしながら相手の後ろまで足を回してキックを行う技です。延髄は人間の急所であり、蹴りがうまく当たると一撃で相手を倒すことができます。技の考案者はアントニオ猪木であるといわれています。
 さて、延髄からは副交感神経が出ているのですが、これは4000ヘルツ以上の高周波音に反応するといわれているのです。モーツァルトの音楽は、この4000ヘルツ以上の高周波音を多く含んでおり、そのため、モーツァルトの音楽を聴くことによって、交感神経を副交感神経に切り替えることができるといわれているのです。
 がんやアトピー、高血圧、心筋梗塞、脳梗塞などの病気は、交感神経の働きが過剰になっていることが原因で起こるのです。さまざまなストレスが現代人を襲い、常時交感神経過剰な状態に陥っているのです。そうすると、アドレナリンが過剰に分泌し、コルチゾールというストレスホルモンが増えて、これが病気の原因になるのです。この交感神経の働きを抑えるのが副交感神経なのですが、モーツァルトの音楽はその副交感神経を活性化させる働きがあるというわけです。つまり、神経がリラックスできるわけです。
 この音楽療法の第一人者である和合治久埼玉医科大学教授によるモーツァルトの曲を使った音楽療法の処方のひとつをご紹介しておきます。この順番に連続して聴くと70分以上かかりますが、血圧を下げる効果があるといわれています。ヘッドフォンで聴くと一層効果があるそうです。
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    1.「ピアノ・ソナタ第15番ハ長調/KV545」
    2.「ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調/KV216」
    3.「ディヴェルティメント二長調/KV136」
    4.「ピアノ協奏曲第23番イ長調/KV488」
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●社交ダンスとブキ・ウギ・ピアノ

 しかし、脳を活性化させるだけでは、健康な身体を作るには十分ではないのです。それには身体も同時に動かす必要があります。そういう意味で理想的なのは、社交ダンスです。映画『シャル・ウィ・ダンス?』の大ヒットによって最近とくに中高年層で社交ダンスをやる人が増えています。
 この映画『シャル・ウィ・ダンス?』――同名の映画を日米で作り、2つともヒットしているのです。1996年の役所広司主演の日本映画、2004年のリチャード・ギア主演の米国映画――それに便乗してか2006年より日本テレビが『シャル・ウィ・ダンス?〜オールスター社交ダンス選手権〜』という番組を提供して、かなりの高視聴率を稼いでいるといわれます。
 社交ダンス――とくに中高年層の人にとって健康に良い理由が3つあるのです。感情の老化の予防に効果があるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
    1.音楽のリズムに合わせて身体を動かす心身の活性化
    2.異性と踊ることによって恋愛感情が刺激されること
    3.踊りのバリエーションを工夫するなど頭を使うこと
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 音楽を聴くのはいいが、踊るのはちょっと・・という向きには「ブギ・ウギ・ピアノ」を聴くことをお勧めします。この「ブギ・ウギ・ピアノ」――最近若い人を中心に日本で流行しつつあるのです。
 「ブギ・ウギ」というと、中高年層では「笠置しず子」ぐらいしか出てきませんが、若きピアニスト、斉藤守也・圭土兄弟がピアノ連弾によって、ブギ・ウギの独自の世界を作り出しているのです。ブギ・ウギとは、ひとことでいえば、聴いていると誰でも自然に体が動き、踊り出したくなる音楽なのです。つまり、心も身体も揺さぶる音楽です。
 ブギ・ウギ・ピアノは、1920年代以降に主として黒人街の人気音楽であり、レコードも多く発売されたのですが、人種間の壁があり、白人には流行しなかったのです。ところが、1938年になって状況は一変します。3人の猛烈なピアニスト/ミード・ルクス・ルイス、アルバート・アモンズ、ピート・ジョンソンが、カーネギー・ホールで開催された「フロム・スピリチュアル・トゥ・スウィング」に登場し、ブギ・ウギ・ピアノを弾きまくったからです。彼らの物凄い音楽は聴衆を圧倒し、たちまち全米で大ヒットになったのです。
 興味があったら、聴いてみてください。きっと心と身体が活性化すると思います。CDをご紹介しておきます。
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   レ・フレール/Boogie on Quatre−Mains/OQMR1001
   レーベル/インディーズ・メーカー
――――――――――――――――――――――――――――――――― 以上
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2007年09月06日

●やってはいけない2つのこと

「音楽を聴く」ことと脳の活性化に関連して、昔から「音楽を聴く」ときにやっていけないといわれることが2つあります。
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        1.目をつぶって聴いてはいけないこと
        2.ライナーノーツを見ながら聴かない
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 第1は、「目をつぶって聴いてはいけないこと」です。
 音楽を聴くとき、目をつぶる人が多いです。コンサートでもそういう人をときどき見かけます。しかし、なぜ、目をつぶってはいけないのでしょうか。目をつぶって集中力を高めて聴く――どこがわるいのでしょうか。
 理由は2つあります。
 ひとつは目をつぶると寝てしまう恐れがあることです。音楽はときとして睡眠薬の効果を発揮することがあるからです。とくに自宅でCDを聴くのであればともかく、コンサートに行って音楽を聴くとき、目をつぶるのは少しもったいないです。せっかくの生演奏ですから、演奏を楽しむべきです。
 もうひとつは、目をつぶると過去の記憶が甦る可能性があることです。脳は一度でも聴いた曲は記憶しています。ベートーヴェンの第九交響曲を過去に聴いたことがあるとします。そのうえで、それとはまったく違うオーケストラと指揮者で第九交響曲を聴く機会があったとしましょう。
 そのとき目をつぶって聴くと、過去に聴いて脳に記憶してある第九交響曲が実際に音を出している第九の演奏に導かれて、古い第九が頭のなかで再現されてしまう可能性があるからです。この場合、脳は過去の音楽を再生しているだけで、現実に演奏されている音楽を聴いていないのです。
 第2は、「ライナーノーツを見ながら聴かない」です。
 CDを買ってきたとき、ライナーノーツ(解説書)を見ながら音楽を聴く人が多いようです。コンサートなどでもプログラムの解説を読みながら聴いている人をよく見かけます。
 しかし、文字を読みながら音楽を聴くと、肝心の音楽が記憶に残らないのです。文字を読みながら音楽を聴くと、理性的でロジカルな思考を優先的に働かせてしまうので、肝心の音楽が聞こえなくなってしまうのです。物理的には音楽は耳に届いているのですが、脳の優先順位は、ライナーノーツの読み取りになっているからです。
 最近ではオペラの公演で、アリアの歌詞やレチタティーヴォ(セリフ部分)の文字を表示させるようになっていることが多いですが、実際にそういう状況でオペラを鑑賞した人に聞いた話では終わったときに音楽がほとんど頭に残っていなかったといっているのです。
 要するに、音楽を聴くときは、目をしっかりと開けて脳を覚醒状態にさせ、演奏されている音楽を積極的に、客観的に聞き取ることが必要なのです。そうすることによって、音楽を聴くことは脳の活性化につながり、健康の維持・増進に役立つのです。

●「聴く」と「聞く」の違い

 ところで、ここまで「音楽を聴く」と書いてきましたが、「音楽を聞く」とも書けるのです。「聞く」と「聴く」はどう違うのでしょうか。
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       「聞く( hear)」 ・・・・・ 耳がある
       「聴く(listen)」 ・・・・・ 心がある
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 「聞く」は、音を耳に感じ取るという意味です。聞くというよりも聞こえるぐらいの意味であり、物理的に音を感じ取るのが「聞く」です。英語では「ヒア」がそれに該当します。
 これに対して「聴く」は音を注意して耳にとめるという意味です。「聞く」という文字を使って表現すると、「聞き取る」になります。英語では「リッスン」がそれに該当します。
 「音楽を聞く」は、流れてくる音楽を自然体のままに受け入れる――イージーリスニング的な聞き方であり、音楽を睡眠薬代わりにしたり、身体をリラックスさせたりするのに効果的です。血圧を下げる目的でモーツァルトの音楽を聞く場合は、このやり方で良いでしょう。
 これに対して「音楽を聴く」は、目を開けて脳を覚醒させ、文字通り音楽の心を聴き取る――コンサートに行ったときは、コンサートが始まる前にプログラムをよく読んでおき、音楽が始まってからは演奏されている音楽を聴き取ることに集中すべきです。こういう聴き方が脳を活性化させるのです。
 年をとってからの趣味にはいろいろありますが、そのなかでも、「音楽を聴く」ことは、あまりお金のかからない、誰でもできる、脳を活性化させる一番身近な方法であるといえます。以上
                   
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2007年09月13日

●加齢によって大脳は萎縮する

 老年精神医学の専門医である和田秀樹氏によると、人間の脳は感情をつかさどる部分から老化をはじめるといわれます。「脳の老化」をもう少し具体的にいうと、「脳が萎縮する」ということになります。
 大脳は、その前、横、後によって次のように呼ばれます。脳の萎縮は、前頭葉からはじまるといわれます。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
     1.前頭葉 ・・・・・ 大脳の前方の部位
     2.側頭葉 ・・・・・ 大脳の横側の部位
     3.後頭葉 ・・・・・ 大脳の後側の部位
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 感情をつかさどるのは前頭葉なのです。側頭葉には「側頭連合野」という部分があり、その上半分は聴覚による言語理解、下半分は形態の認知――顔を見て相手を識別する機能を担当します。後頭葉には、視覚に関係する領域である
「視覚領」があり、視覚情報の理解を行います。
 前頭葉には次の2つの部分があり、それぞれの役割があります。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
        I―― 前頭 極 ・・・ 自発性、やる気、スイッチ
  前頭葉 ――I
        I―― 運動前野 ・・・ 創造性、感情コントロール
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 前頭極は、自発性とやる気を担当しています。この部分が萎縮すると、自ら進んで新しく何かをやろうとしなくなります。高齢者がPC操作などの新しい技能の修得に手こずるのはこれが原因です。
 スイッチとは、気持ちの切り替えの機能です。この機能が衰えると、感情の切り替えが悪くなります。歳をとると、頑迷固陋の頑固オヤジが増えるのは、このスイッチが衰えることに起因します。
 運動前野は、運動の遂行や運動の準備に重要な役割を果たす部位であり、ここが衰えると、創造性や熟練を要する仕事ができなくなります。この部分でも感情を制御する機能があります。

●前頭葉の萎縮は老化とともに進行する

 シェーファーという神経病理学者は、平均77歳の正常に老化した人の脳と認知症の高齢者の脳を20代の若者の脳と比べて、神経細胞の減少の割合を調べる実験を行ったのです。その実験結果は次の通りです。
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             正常老化のケース   認知症のケース
   前頭極           28%減      31%減
   運動前野          22%減      36%減
   側頭連合野(下部)     23%減      42%減
   視覚領           13%減      20%減
                 ――和田秀樹著/祥伝社新書052
    『人は「感情」から老化する/前頭葉の若さを保つ習慣術』より
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 正常老化のケースと認知症のケースでは、その減少の割合にそれぞれ大きな差がついていますが、前頭葉の前頭極については、正常老化28%減、認知症31%減とあまり差がないのです。
 老年になると、もの忘れがひどくなったことを気にする人が多いですが、実は記憶をつかさどる脳の「海馬」という部分の減少は20%程度であり、たいしたことはないのです。それよりも、自発的な意欲の減退や、気持ちを切り替える力が弱くなることが先にくるのです。
 和田秀樹氏は、前頭葉の萎縮による自発的な意欲の減退について、次のように警告しています。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 さらに問題なのは、自発性や意欲が低下すると、日常生活の中で頭を使
う機会がますます少なくなってくることだ。何事につけ億劫になってくる
のでからだも動かさなくなる。出歩かないから、なおいっそう脳が刺激さ
れることも少なくなって、心身ともに老化が進んでしまうことになる。
                    ――和田秀樹氏の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 歳をとると感情をつかさどる前頭葉の萎縮が激しく進む――このことを知っている人と知らない人の差は大きいのです。加齢による脳の萎縮を防ぐ方法はないそうですが、それを意識してあえて新しいことに挑戦し、脳を活性化させる努力をしている人は、脳の萎縮の進行を遅くすることはできるのです。
 1月7日のフジテレビの番組「報道2001」で評論家の竹村健一氏は、この正月休みにスキーとマージャンとテニスの3つを楽しんだといっていましたが、竹村氏はスキーを57歳、テニスを50歳からはじめているのです。これは同氏の好奇心が今もって旺盛であることと、前頭葉がいかに若々しいかを示していると思います。以上                       
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2007年09月20日

●「年甲斐のない」人間になる

 日曜日の午前10時から始まるテレビ朝日の番組に「サンデー・プロジェクト」というのがあります。あの田原総一朗氏が司会を務める政治・経済をメインテーマとする番組です。
 今年はじめての「サンデー・プロジェクト」に、『失楽園』などの作品で有名な作家の渡辺淳一氏が出演し、最新の話題の映画『愛の流刑地』などについて語ったのです。映画『愛の流刑地』――1月13日に公開されたばかりなのですが、この映画はかつては売れていた小説家と人妻との愛を描き、大胆な性描写が話題の、いわゆる”渡辺淳一ワールド”なのです。
 日頃は固い政治・経済の番組であるだけに、何となく場違いな感じの渡辺淳一氏の出演ですが、ちゃんとした理由があるのです。それはこの作品が日本経済新聞朝刊に連載――2004年11月1日〜2006年1月31日まで――されたからなのです。つまり、この番組の視聴者のほとんどは日本経済新聞の読者であり、この作品はそういうサラリーマンによく読まれていたからです。
 渡辺淳一氏は1933年生まれの73歳――渡辺氏によると、この手の純愛小説だけは想像では絶対に書けないというのです。この作品を連載中に読者からよくクレームがきたそうです。「いい歳して、朝っぱらこんな作品を読ませやがって・・・恥を知れ!」という趣旨のクレームです。
 渡辺淳一氏はこの「いい歳して、恥を知れ!」という言葉に反発します。年寄りはそれでいいのだよと――そして「ぼくは年甲斐のない人間になる」と宣言したのです。自分は現在でも愛の現役であるからと・・・。
 この言葉によって、渡辺氏の前頭葉がいかに若々しいかがわかります。誰も前頭葉の萎縮は止められませんが、進行を遅らせることはできるのです。渡辺氏の場合、明らかに前頭葉の収縮の進行は止まっているようです。老年精神医の和田秀樹氏は、これに関連して次のように述べています。
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 日本では、老人に対して妙な生活規範や道徳観の押しつけがある。「年寄りは枯れて恬淡としているべきだ」と決めつけてみたり、中高年には洋服はグレーやアースカラーが似合うはずだと、本人も周囲も思いこんでいるところがある。麻雀よりも短歌や俳句のほうが高尚でふさわしいという雰囲気もあるし、しかも年を取れば取るほど規範や枠に当てはめようとする。しかし、これは本質的に間違っている。 ――和田秀樹著/祥伝社新書052
  『人は「感情」から老化する/前頭葉の若さを保つ習慣術』より
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●感動できる刺激を求める

 「箸が転げてもおかしい」――10代の頃はどんなに些細なことでも、予想に反することが起きるとびっくりし、おかしくて仕方がなかったことが、よくあったものです。この言葉はそれを表現しています。しかし、歳を取るにつれてさまざまな体験を積むことにより、大概のことには驚かなくなります。そして、さらに加齢が進むと、それに前頭葉の機能低下が加わって少々のことでは動じなくなるのです。これが「枯れて恬淡としている」ということであれば、それこそ老け込む原因そのものということになります。
 要するに、歳を取ると何事にも感動がなくなるのです。和田秀樹氏によると感動というのは「予想」と「体験」との差で起きるのです。歳を取るということは「体験」を積むことであり、「体験」は「予想」を的確なものにするので歳を取れば取るほど感動は少なくなることになります。
 一流のレストランに行って、有名なシェフの料理を食べるとき、日頃からそういうところで食べ慣れしている人は、相当の料理が出ても「こんなものか」とあまり感動しないものです。想定の範囲内のことだからです。
 しかし、「予想」以上のものが出れば感動するわけです。「予想」がつかないものは「体験」が乏しいことが原因なので、歳を取ったら普段はやらない、新しい、刺激的なことに挑戦すればそこに感動が生まれるわけれです。
 食べ物でいうなら、日頃和食を食べている人は洋食や中華を、洋食が多い人は逆に和食をいうように、または一度も食べてことのないタイ料理やインド料理を食べてみるなど、意識して感動できる機会を作る必要があります。そして感動できればできるほど、脳は活性化し、前頭葉の萎縮のスピードは抑えられるのです。
 「年甲斐のない」「いい歳をして」「いまさら何を」など――こうう批判に負けず、自己に未体験な新しいことをやってみることが前頭葉の萎縮を遅らせ、若さを保つ秘訣です。歌人、斉藤茂吉の未亡人の輝子さんは、80歳を超えた現在でも世界各国――それも南極やアフリカなど、ハードルの高いところばかり旅行しているそうです。
 それに73歳になっても恋愛感情を忘れず、体験に基づく『愛の流刑地』のような作品を作り、映画化された渡辺淳一さん、57歳からスキーをはじめ、スキューバダイビングも体験した竹村健一さん――いずれも「年甲斐のない」人たちばかりですが、いずれも若々しく、とても歳相応とは思えない元気さです。それはつねに感動を求め、自己が未体験のことに挑戦することをやめないからです。以上                       
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2007年09月27日

●団塊の世代が老年人口に入ると認知症老人が増える

 東京都は、1981年、1988年、1996年の3回にわたって認知症老人の調査をやっています。その結果、65歳以上の老年人口のうち、認知症老人の占める割合はいずれも約4%で大きな変化はなかったそうです。この数値は、欧米先進国でもほぼ同様――4〜7%であるといわれています。
 しかし、この数値はこれから老年人口に入ってくる層――団塊の世代以降の人には当てはまらないだろうといわれています。というのは、これまでの調査の対象になった老人たちは、若い頃テレビを知らず、主としてラジオを聴いて脳の前頭前野を活発に使っていた世代であるからです。
 これに対して団塊の世代は「テレビ世代」であり、子供の頃には既にテレビがあった世代なのです。団塊の世代とは諸説はあるものの1947年から1949年までの3年間に生まれた世代をいうのですが、1953年にNHKのテレビ放送が始まっているので、青春時代はテレビの面白さに浸った世代であるといってよいと思います。
 ラジオのように音声を聴くよりも、視覚を働かして視聴するテレビは、ともすると脳を休ませてしまう傾向があります。ラジオの場合は、脳をフル回転させて聴き取り、想像を働かせるのに対し、テレビ視聴は、受像機に映っているものを受身で見るという点が違うのです。
 もっともテレビの場合もちゃんと見ようという意思のもとに、きちんと視聴するならいいのですが、見るともなく、ただぼんやりと画面を眺めて、ときどき居眠りをする――そういうテレビの見方は、脳にとって最悪なのです。
 団塊の世代の人たちは、中高年になってからは、そういうテレビの見方をしてきた可能性が高いのではないでしょうか。家に帰って食事をし、テレビでプロ野球の中継を見ながら一杯やる――そういう生活パターンが定着したケースは少なくないと思うのです。
 そういう世代が2007年以降、約800万人も定年を迎えるのです。それらの世代が65歳以上の老年人口に入ってくる頃、認知症の割合が4%程度で済むかどうかははなはだ疑問です。既に要介護者と認定された老人が149万人もいるのです。団塊の世代800万人のうち、もし認知症老人が7%になったたけで、要介護老人の数は200万人を超えてしまうのです。

●「ゲーム脳」は認知症のはじまりである

 認知症の老人というと、物忘れが激しいと一般にいわれますが、一番困るのは引きこもりなのです。老人の引きこもりは子供のそれよりも始末が悪く、一日中外に出ないで、ぼんやりテレビを見ている――それ以外には何もやる意欲が湧いてこないのです。
 一人でボーッとしているから、脳は休眠し、そのうち、自分が誰なのかわからなくなってしまう。こういう認知症の老人たちの脳波を観察すると、前頭前野の活動が極端に落ち込んでいることがわかります。前頭前野は「やる気」をつかさどっているので、ここがやられると、やる意欲が欠落し、何もやらなくなるので、ますます前頭葉は萎縮してしまうのです。
 最近の子供は――一部の大人もそうですが、テレビゲームにのめり込んでいます。ところが、長時間テレビゲームをやっていると、前頭前野の動きが鈍ってくることがわかっています。これを「ゲーム脳」といいます。テレビゲームに熱中している子供の脳波を観察したところ、認知症の老人と同じ形になっていることがわかったのです。
 「ゲーム脳」になってしまうと、キレやすくなるといわれます。本来前頭前野は、人間らしい理性や感情をつかさどる部分であり、ここが不活性になることによって、暴力をふるったり、ひどくなると犯罪に走ったりするのです。
 しかし、同じテレビゲームでも友達と対戦させてみると、前頭前野の動きが活発になるのです。対戦相手がいると、相手の表情を読み取ったり、相手の動きに合わせて作戦を立てたり、言葉をかわすことで思考活動が強化されるので前頭前野が活発に動き出すのです。
 要するに、子供も老人も、一人になってしまうことに問題があるのです。人間は、人と人との関係性の中で生きており、対人関係を含む周囲の環境から刺激を受けて、人間らしい行動がとれるようになるのです。機械相手のゲームばかりやっていると、正常に前頭前野が働かなくなり、認知症の老人の脳波と同じようになってしまうのです。そうすると、思いやりのない自己中心的な最悪の人格が形成されてしまうのです。
 和歌山県立医科大学脳神経外科教授の板倉徹氏は、このことに関して次のように述べています。「キレやすくなる脳」の科学的解明といえます。板倉教授は、テレビよりもラジオを聞くことを勧めています。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 前頭前野が活性化していないというのはいい換えれば、脳が面倒くさ
 がり屋になっているともいえる。考えるのが面倒くさいから、思いや
 りもなくなってきている。脳の回路でいえば、あちこち情報を駆け巡
 らせて判断していくのが面倒くさいから、パッと短絡させて結論を出
 してしまう。
     ――板倉徹著、『ラジオは脳にきく』より 東洋経済新報社刊
――――――――――――――――――――――――――――――――― 以上
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2007年10月04日

●心[脳]と身体がいきいきと動くようにする

 人間の脳は大変な天才なのです。一度でもやったことはたちまち覚えてしまい、次に同じことをやるときは前にやったときの記憶に基づいて処理が行われるので、脳そのものはあまり働いていないのです。
 健康のために毎朝ウォーキングやジョギングをやっている人は多いですが、いつも同じ道を歩いていると、身体は動いていても脳はまったく働いていないことが多いのです。ですから、いつも道を変えて新しい道を行くようにしないと身体と脳は一緒に働かないのです。
 本を読むときでもテレビを見るときでも脳は働きますが、それから何かを掴み取ろうとして真剣に読んだり見たりしないと脳は働かないのです。したがって、脳を活性化させようとするならば、自分で意識して前向きにそれに立ち向かう必要があります。だから、テレビは寝転がって見てはだめなのです。
 エッセイストの山口文憲氏は読書の重要性を強調し、そのやり方について、次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 読書は必要ですが、ただ漫然と読んでいてはだめ。設計図を思い浮かべるように、構成と手順を意識しながら読むことが重要です。将棋の棋譜を読むのに似ていますね。文章は詰め将棋のようなもの。まず、最小手数で行く方法を考え、そこに少しずつ加えていく感じです。
             ――『プロとして生きるための文章術』より
                  2003年9月号「編集会議」刊
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 「ココロ」と「カラダ」といいますが、「ココロ」を脳と考えた場合、その両方がつねにいきいきと動いていることが健康の秘訣なのです。そういう意味で脳にとって一番いいことは「文章を書く」ことです。日記でもレポートでもいいですが、何かまとまったものを書こうとするとき、脳はフルに動いています。文章を書くことは脳の活性化につながるのです。

●ブログで日記を書こう

 とくに、定年退職者にお勧めしたいのは日記を書くことです。一日の出来事を書くのですが、毎日同じことをしていたら、すぐ書くことがなくなってしまいます。そうすると、人間というものは、自然に何かをしようという気持が起こってくるものです。
 そこで、いつもより真剣にテレビを見てメモを取ったり、新聞や本をていねいに読んだり、友人と会って話したり、近所を散歩したり、なるべく日記のネタになる行動をとろうとするものです。そして、夜にでもそれをまとめて文章化すると、ココロとカラダは両方ともバランスよく働くのです。
 日記は日記帳に書いてもいいですが、もっと効果のある方法は、最近流行っているブログを活用することです。ブログなら、ネットにつながるPCを持ってさえいれば無料で開設できます。ワープロ操作ができれば簡単で、毎日日記を書いてブログを更新することができます。
 もちろん、日記というものは本来は他人に見せるものではありませんが、公開する以上、なるべく面白い内容にしようと努力するものです。文章だって、少しでも読みやすい文体にしようと心がけるものです。それが脳にとってはとてもよいことなのです。それにブログは、あとでミスに気が付いたり、書き直したいときはいつでも簡単にそれをすることができるのです。
 けっしてうまい文章を書く必要はないのですが、他人が読んで、読みやすい文章になるよう心がける必要があります。これについて、芥川賞作家の平野啓一郎氏は興味深いことをいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 (読みやすい文章を書くには)どういう方法がいいかということになりますが、私の経験からすれば、やはり、ひたすら「読む」に限ると思います。必ずしも、声に出す必要はありませんし、むしろ、自分の内面に響く「音」にじっと耳を澄ます方が集中できていいかもしれません。とにかく大切なのは、その「音」を「聞く」という作業です。   
 ――平野啓一郎著、「書き手として文章の『リズム』を大切にしたい」                
                  2003年9月号「編集会議」刊
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 自分の書いた文章を何度も読み返してみて、その「音」の響きに耳を傾けよ――まことに含蓄のある意見です。文章のリズム――読むリズムを聞き取っておかしいところがあれば修正するというのです。リズムを大切にするのです。
 最近のジャズ・ミュージシャンの中には、リズムのパターンを先に作って、それに合わせて曲を書く人が多いのですが、それは文章にも当てはまることなのです。とくに全体を通してのリズムの持続性は、文章に力強い統一感を与えると平野啓一郎氏はいいます。
 ブログを開設して日記を毎日書いてアップロードする――脳を活性化させる一番よい方法です。日記をつけるということは、書くネタを作るためにも自然に活動が多様化し、ココロとカラダがともに活性化するものなのです。あなたも実施してみませんか。              以上                     
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2007年10月11日

●長野県の平均寿命はなぜ高いのか

 定年のあるサラリーマンよりも定年のない自営業者の方がどちらかというと長生きであるという話をよく聞きます。人間は働いている方が感情は老化しないので、長生きできるのです。
 全国の70歳以上の就業率のトップは長野県であり、約25%――4人に1人が働いている計算になります。最も就業率の低いのは47位の沖縄県で長野県の約半分です。その長野県の男性の平均寿命は78.90歳で第1位であり仕事を持って働くことが長生きにつながっていることを示しています。
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70歳以上の就業率  都道府県  平均寿命(男)  平均寿(女)
    第 1位    長野    78.90( 1)    85.31( 3)
    第 2位    山梨    77.90(18)    85.21( 8)
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    第45位    大阪    76.97(43)    84.01(46)
          統計情報部「2000年都道府県別生命表」より
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 この長野県と対照的なのは、70歳以上の就業率が全国第45位の大阪府です。大阪府の平均寿命は男性が76.97歳で第43位、女性は84.01歳で第46位と、長野県とは大きな差があります。
 ちなみに長野県は1人当たりの老人医療費が60万2000円と全国最小であるのに対して、大阪府は89万2000円で北海道、福岡に次いで全国第3位、長野県と実に29万円の差があるのです。
 歳を取っても仕事を持っている人は、心(脳)と身体はつねにフル回転しており、それが健康に結びついているのです。その点サラリーマンは定年があるので、長年仕事をしてきてある日突然仕事がなくなる――その激しい落差が心と身体に変調をもたらすのです。

●歳をとってからの勉強は寿命に影響する

 オランダのアムステルダム・フライ大学の学者たちによる興味深い調査があります。アムステルダムに住む55歳から85歳の地域住民2380人を対象に実施した4年後死亡率の追跡調査です。この調査がユニークな点の第1は、さまざまな病気の有無でどのくらい死亡率が違うかを調査していることです。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
   ≪心臓病≫          4年後の死亡者数(死亡率)
    心臓病あり   458人     83人(18.1%)
    心臓病なし  1922人    180人( 9.4%)
   ≪癌疾患≫
    癌疾患あり   208人     36人(17.3%)
    癌疾患なし  2172人    227人(10.5%)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 地域住民2380人中、心臓疾患のあった人は458人、癌を患っていた人は208人いたのですが、それぞれの4年後の死亡率を調べると、18.1% 17.3%と疾患を持っていない人と比べると、4年後の死亡率が倍近く高いことがわかったのです。しかし、これは当然のことです。
 この調査がユニークな点の第2は、歳をとってからの知能と死亡率の関係を調べていることです。そうすると、驚くべき結果が出たのです。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
   ≪情報処理速度≫
    上位ランク  1200人     69人( 5.8%)
    下位ランク  1180人    194人(16.4%)
   ≪流動性知能≫
    上位ランク  1161人     81人( 7.0人)
    下位ランク  1219人    182人(14.9%)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 情報処理速度は、決められたルールにしたがってデータを処理する能力のテストであり、流動性知能は今まで経験したことのない新しいことを学習する能力がどのくらいあるかを調べるテストです。
 何が驚くべきかというと、情報処理速度の速い人の上位1200人の4年後の死亡率がわずか5.8%であったのに対して、下位1180人の死亡率は、16.4%と3倍も高くなっていることです。さらに、流動性知能のテストにおいても、上位1161人の4年後の死亡率が7.0%であるのに対して、下位1219人の死亡率は14.9%と倍になっています。
 注目すべきは、この16.4%、14.9%という死亡率が心臓病を持つ人と癌疾患のある人のそれぞれ4年後の死亡率、18.1%、17.3%とあまり差がないことです。これは、歳をとってからも高い知能を保っている人は、長生きできるが、勉強しないでぶらぶら遊んでいると、早く死ぬ傾向が強いということを暗示しているように思えることです。
 このアムステルダム・フライ大学の調査は、和田秀樹著「40歳から何をどう勉強するか」(講談社刊)を参照いたしました。     以上
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2007年10月18日

●新聞を読まない人が増えている

 最近、若者を中心に新聞離れが進んでいるといいます。「どうして新聞を読まないのか」と聞くと、「インターネットで読むから・・」という答えが返ってくることが多いのです。
 現代社会において、一番情報伝達の早いメディアはテレビです。昔は外で働いている夫と家にいる妻とでは圧倒的に夫の情報取得量が多かったのですが、最近では家にいる妻の方が情報を多く取得しています。日中テレビを見られない夫とつねにテレビを見ている妻の違いです。
 インターネットでもリアルタイムでニュースを見ることはできますが、テレビは電源スイッチを入れるとすぐ見られる点が、いろいろな操作の必要なインターネットとは大きく異なります。そういう意味において、最近流行しつつあるワンセグ放送を受信できる携帯電話はビジネスマンの情報取得のツールとしてとても便利であるといえます。
 それはさておき、テレビと携帯電話に代表されるメディアの多様化の中で、若者を中心とする読者の新聞離れによって、百数十年の歴史を持つ日本の新聞が、歴史的岐路に立たされているのです。
 といっても、新聞の総発行部数は横ばい傾向であり、今のところ減少に転じてはいないのです。しかし、危機的状況にあることには変わりはないのです。今ところ発行部数に影響が出ていないのは新聞が世帯財であるからです。「家庭をもったら新聞は取るもの」という昔からの習慣が辛うじて残っているからです。したがって、この習慣が崩れると、新聞は減少に転ずるはずです。
 テレビも電話も、もともとは世帯財だったのですが、だんだん個人財化しています。テレビはPCにチューナとして付く時代になり、携帯電話にまで付いて個人財化し、電話もしだいに携帯電話が中心となって世帯財ではなくなりつつあるのです。新聞が世帯財でなくなるのは時間の問題です。

●新聞の記事を音読すると脳は活性化する

 「新聞は読まなくてもインターネットで見るからよい」といいますが、これは新聞を読むことの代わりにはならないのです。インターネットの場合、自分の好きな情報を選び取って見るところがあります。最初からターゲットを絞って、情報をゲットしようとするのです。これに対して新聞は、読む・読まないの好き嫌いはあっても、すべての情報――社会、経済、外交、世界情勢、スポーツ、連載小説、それに広告、ラジオ・テレビ欄まで付いており、つまりさまざまな分野が一覧できるのです。
 各種の情報を一覧して見渡せるということは、脳を刺激するという点からもよいことなのです。新聞には意外な事実やニュースが満載されています。それを一覧して目を通す行為はつねに脳に新鮮な刺激を与えるのです。あらかじめ新聞を開くまではどのような情報が出ているかはわからないわけであり、その中から興味のある情報を探すときは脳は活発に動いているのです。
 そして、その中に興味のある情報があると、当然熟読します。統計数字などもテレビならすぐ消えてしまいますが、新聞なら何度も見て覚えたり、切り抜いて保存しておくことができ、インターネットよりはるかに便利です。
 新聞でも読書でもそうですが、文章を読むという行為は読む真剣さの度合いによっても違いますが、前後、行間を読み取るなど、脳を活発に使うことになります。読みながらより深い内容を理解しようとしたり、想像をしたりするなど、複雑な脳の働きが加わるのです。
 その点テレビの視聴や映画鑑賞、それにマンガを読む場合は、脳はあまり活性化しないのです。それはあまりにも具体的であるため,想像力が働く余地が少ないからです。見たり、読んだりすることによって脳に与える刺激を大雑把な数値で示すと、次のようになります。
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           視聴する ・・・・・ 30
           黙読する ・・・・・ 50
           音読する ・・・・・ 80
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 脳力トレーニングの開発者として有名な東北大学の川島隆太教授は、これに関連して次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 目を閉じて考え事をしているときは、案外脳は活動しておらず、黙読しているときは、視覚情報の入る後頭葉以外には前頭前野の言語を扱う部分が中心に活動している。ところが、音読すると脳全体が活性化することが示されている。――板倉徹著、『ラジオは脳にきく』より 東洋経済新報社刊
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 音読が身体にも良いことを説くのは斉藤孝著『声に出して読みたい日本語』(草思社刊)ですが、これは声を出すことによって脳全体が活発化するからです。そこで、誰でもできるのが新聞を毎日ていねいに読み、これはという記事を音読する――そうすることによって、脳は活性化し、しかも読んだ記事は鮮明に記憶に残るのです。これなら、定年生活の人でも誰でもできる脳の活性化法です。ぜひやってみていただきたいと思います。以上
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2007年10月25日

●子どもの左利きを矯正すべきか

 このところ週刊誌『AERA』で、右利きと左利きの問題を連載して取り上げています。身近な話題でありながら、意外に知られていない、興味深いテーマであるといえます。
 そういえば、最近若い人が左手で文字を書いたり、左手で箸を持って食事をしたりするのをテレビなどでよく見ることが多いように思います。左利きであることを多くの人がほとんど気にしなくなっているのです。
 『AERA』編集部の調査によると、20〜75歳までの男性115人、女性145人の計260人中左利きの人は、27%(男性27%、女性26%)だったのです。一般的にいって、左利きは全体の10〜12%といわれているのですが、『AERA』の数値が高くなっているのは、テーマに関心を持った左利きの人が多めにアンケートに参加した結果であると思われます。
 昔は子どもが左利きであることがわかると、親は必死になって右利きに矯正したものです。「ぎっちょは家を滅ぼす」とか、とくに女の子については「左利きだとお嫁に行けない」といって、厳しく矯正したので、大人になってからそれがトラウマになるケースも少なくないようです。
 一方、同じ左利きでもスポーツの世界では「サウスポー」、最近はサッカーなどで「レフティ」と呼ばれ、何となくそれがかっこよいようにいわれています。これも左利きを隠さなくなった原因のひとつと思われます。
 ちなみに『AERA』の調査では、子どもが左利きだとわかったとき、それを矯正すべきかという問いに対する答えは次のようになっています。
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      ≪子どもの左利きを矯正すべきか≫
       矯正すべきである  ・・・・・ 11%
       矯正すべきではない ・・・・・ 59%
       どちらともいえない ・・・・・ 30%
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 しかし、世の中の道具というものは右利き用に作られています。例えば、お茶を入れる急須を考えてみてください。左手でお茶を入れるとき、取っ手と注ぎ口が逆になるのでとても変な格好になります。しかも茶碗が自分の手で隠れて見えにくいので、すぐこぼしてしまったり、なにより注ぐその姿が美しくありません。左手ではどうしても不自然になってしまうのです。
 もっとも最近では、左利き用の道具も登場しています。左利き用マウス――レフテイマウスなどがそうです。しかし、左利き用の急須というのはあまり聞いたことがないのです。左利きがソンなことはたくさんあるのです。

●指組み/腕組みと脳との関係

 右利き、左利きと脳との関係はどうなのでしょうか。
 一般的には、「右利き=左脳型、左利き=右脳型」ということがいわれていますが、その科学的な根拠は薄いようです。左脳は論理派、右脳は感覚派といわれますが、もし、「右利き=左脳型」が正しいとすると、世の中の大半の人が論理派になってしまいます。そんなことはありえないことです。
 しかし、神戸親和女子大学の神経心理学教授の坂野登氏の説はとても興味深いものがあります。坂野教授は利き腕の判断に使われる指組みと腕組みによって、利き脳が判断できるそうです。自然に両手を組んだとき、どの指が上にくるか、また、自然に腕組みしたとき、どちらの腕が上にくるかによって、物事を理解したり、表現したりするタイプが違ってくるといいます。
 坂野教授は、指組みは「入力・理解」、腕組みは「出力・表現」に関係することを指摘し、指組みや腕組みのしかたによって、次のことがいえるといっているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
  第1タイプ:右指上/右腕上 ・・・ 論理的に理解し、論理的に
                    表現
  第2タイプ:左指上/左腕上 ・・・ 直感的に理解し、直感的に
                    表現
  第3タイプ:右指上/左腕上 ・・・ 論理的に理解し、直感的に
                    表現
  第4タイプ:左指上/右腕上 ・・・ 直感的に理解し、論理的に
                    表現
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 確かに左利きの人でも右指や右腕が上になる人は結構たくさんおり、そういう意味でも坂野教授の説は興味深いと思います。
 このように右利きか左利きかが脳に影響するとなると、それを無理に矯正することには問題があるといえます。左利きを箸とペンについては右で使うよう矯正を受けたある男性は、子どもの頃から慢性的な片頭痛に悩まされ、病院でCT検査を受けたところ、医師から次のようにいわれたというのです。
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 もしかして左利きを矯正しましたか?そのせいで脳にゆがみができ、 左脳の発達が遅れているようです。――『AERA/07.2.5号』
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 矯正には問題があるようです。しかし、右利きを前提とする諸道具、書道、武道などの世界、右利きを採用条件にしている企業まであり、右利き社会は左利きの人にとってけっして住みやすい世界ではないようです。以上
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2007年11月01日

●NHKスペシャル『脳は何歳からでも鍛えられる』

 2月25日(日)午後9時から放送されたNHKスペシャル『脳は何歳からでも鍛えられる』をご覧になったでしょうか。
 東北大学の川島隆太教授の指導で認知症のお年寄り数人が脳の学習指導を受け、学習前とは見違えるように回復する様子を放映したのです。既に述べたように、人間のおでこの後ろの部分にある前頭葉、とくに前頭前野は「やる気」を担当しており、人間を人間たらしめている脳の部分なのです。
 なぜ、人間を人間たらしめているかというと、犬や猫の額を触ってみると分かりますが、人間のようにおでこが出っ張っている動物などいないのです。それはサルもゴリラも同じであって、前頭葉の前頭前野は硬いおでこの骨の奥に大切にしまわれている人間特有のものであるからです。
 テレビでは、この前頭前野が衰えたお年寄りが登場したのですが、いずれも学習前は表情が暗く、生気がなく、無気力な状態であったのです。学習を担当するトレーナーと目を合わせない、声をかけても反応が鈍い、自ら積極的に体を動かそうとはしないなど、認知症特有の症状が明確に出ていたのです。
 それが、簡単な計算をさせ、印刷されている文字を声を出して読ませることを繰り返すだけで、前頭前野に血液が流れ、脳が活性化するのです。そういう学習を何日か続けることによって、表情が生き生きとしてくる様子をカメラはよくとらえていました。脳が活性化するにつれて、だんだん人間らしくなっていったのです。
 若い人でも、交通事故などに遭って前頭前野が傷つくと、まったく意欲のない人間になってしまうことがわかっています。事故前にはいつも積極的に出かけて、何にでも興味を示した人が、事故後何もやる気がなく、家に閉じこもってしまうということはよくあることなのです。この大人の引きこもりは子どものそれよりも一層深刻なのです。
 それほど、人間にとって前頭前野は大事な部分なのですが、川島隆太教授は学習によって、前頭前野が鍛えられることを実証的に示したといえます。脳が休んでしまって何もしない状態が一番いけないのです。とくに高齢者は、加齢によって前頭前野は萎縮するので、意識して自ら前頭前野を鍛える必要があることを25日のNHKスペシャルは教えてくれたのです。

●手書きで手紙を書くと脳はフル回転する

 NHKスペシャルの番組の中で、認知症のあるお年寄りに手紙を書かせているシーンがありました。学習指導を受けるかたわら、家族に年賀状やはがきを書かせたのです。
 最初の手紙では、単に「来てください」としか書けなかったお年寄りが、次の手紙では「元気ですか。来られるのをお待ちしています」というように書けるようになったのです。川島隆太教授によると、これも脳の学習効果であるといっているのです。
 実は「手紙を書く」――もちろん、手書きで書く――というのは、脳の活性化にとても役立つのです。手紙を書くとき、どのように脳が働くか、そのプロセスを検証してみましょう。
 紙に向かって字を書こうとします。紙を見るというのは、視覚野つまり後頭葉が働くのです。実際に字を書いてみます。漢字は側頭葉から頭頂葉の両方を使いますが、かなは頭頂葉だけを使うのだそうです。このように漢字とかなで働く脳の部分が違うのは日本語だけであるといわれます。
 日本語は漢字とかなでできているので、日本語で文章を書くとき、脳の幅広い分野が動くことになります。そういう意味で、日本人の脳はきわめて特殊であるといえるのです。
 さて、漢字やかなを書くときは手を動かさねばならないのです。これをコントロールするのは前頭前野なのです。そして、手紙を書くとき、相手のことを思いやりながら書くことになるので、前頭前野はますます活性化することになります。このように、後頭葉、側頭葉、頭頂葉、前頭葉――脳全体のほとんどを使うことになり、手紙を書くという行為ほど、効率的に脳を活性化する方法はないことになります。
 さらに、文字を書くときは、自分の目で字をチェックしながら書いているわけですが、ペン先がどの方向を向いているか、力の入れ具合はどうかという感覚を身に付けている必要があります。ペンを載せたときの紙に対する圧力がわからなければ、文字は書けないからです。こういう感覚を「体性知覚」といいますが、これも手紙を書くとき必要になってくるのです。したがって、脳はフル回転することになります。
 現代人は文章を書くとき、ほとんどワープロを使っていますが、ワープロでは、文字を書くのではなく、キーを動かしているので、脳はフル回転しないのです。したがって、たまにはワープロをやめて、手書きの手紙を友人に送ったら相手も喜ぶし、自分にとっても脳の活性化に役立つのです。
 とくに定年生活を送っておられる人は、友人に手書きで、簡単なイラストを添えてはがきを書くことは脳の活性化につながるのです。そのさい、文字がきれいに書けるかどうかは問題ではないのです。わかりやすくきちんと書くことができればそれでよいのです。 以上                  
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2007年11月08日

●朝食をとるかとらないかは脳の機能に関係する

 脳は非常に燃費の悪い臓器といわれます。それは、脳が体重の2%の重さしかないのに、エネルギー消費は全体の18%も占めているからです。脳の唯一のエネルギー源はブトウ糖です。脳はエネルギーとして、1日120グラムものブドウ糖を必要とするのです。
 驚くべきことに、血液中にあるブドウ糖の何と50%が脳によって消費されているのです。やっかいなことに脳はブドウ糖を貯めておくことはできないので、つねに補給しなければなりません。どのように補給するかというと、ブドウ糖は肝臓にグリコーゲンとして一時的に貯蓄され、脳が要求したときにブドウ糖に変換して補給する――これを繰り返すのです。
 しかし、肝臓のストックも12時間が限度であって、それまでに補給しないと、予備のブドウ糖もなくなってしまいます。とくにブドウ糖不足になるのが朝なのです。朝起きたとき、脳は既にエネルギー不足に陥っているのです。したがって、朝食を食べないで出かけたりすると、脳はエネルギー不足で十分な力を発揮できないことになります。
 最近の国民栄養調査によると、朝食を食べない人の割合はかなり高くなっています。20歳代の男性の3分の1、女性の5分の1が朝食をとっておらず、その割合は年々増加しつつあります。子どもに関しては次のようになっており朝食を用意してあげない親が増えていることを物語っています。子どものとき朝食をとらないと大人になってからもとらないので問題が多いのです。
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           小学生 ・・・・・  4%
           中学生 ・・・・・ 10%
           高校生 ・・・・・ 14%
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 国立教育政策研究所の平成15年度の調査によると、毎日朝食を食べる子どもほど、ペーパーテストの得点が高い傾向にあることが明らかになっているのです。脳の活性化のことを考えると、朝食は抜いてはならないのです。
 さすがに60歳以上の高齢者については、朝食の欠食率はせいぜい2%程度であり、少なくなっています。

●朝食は記憶を司る海馬に作用する

 ロンドンのタクシーの運転手は、複雑なロンドンの市街を目的地まで道を間違えずに非常に効率よく運転できるそうです。最近の日本のタクシーの運転手は、ナビゲーター頼りの人が多く、なかにはお客に道を教えてもらう人までいます。職業運転手として道を知らないことをそれほど恥ずかしいとは思っていないようです。
 なぜ、ロンドンのタクシーの運転手は道をよく知っているかというと、ロンドンでタクシーのライセンスをもらうのには、2年間かけて市街地図やよく使うルートを覚えることが義務づけられているからです。
 この点に目を付けた女性の認知神経学の学者がいます。ロンドン大学のエレノア・マグアイアー博士です。彼女はロンドンのタクシー運転手16人と一般人50人を対象に脳の構造を調査したのです。
 マグアイアー博士の研究によると、タクシー運転手の脳のうち「馬」と呼ばれる部分の後ろの方が肥大している人が多いことがわかったのです。海馬というのは、脳の内側にある脳神経細胞が集まったところをいい、記憶を一時的に残しておく働きをするのです。この海馬がベテランの運転手ほど肥大していることがわかったのです。
 海馬が肥大しているということは、その部分の脳神経細胞が増えたことを意味するのです。しかし、「脳神経細胞は再生しない」というのが、これまでの大脳生理学の常識だったのです。したがって、マグアイアー博士の発見は今までの脳神経学の常識を覆す大発見だったことになります。マグアイアー博士は次のようにいっています。要するに、アタマを使えば使うほど、脳神経細胞は増加するものであると・・・。
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  いつも道を探すことによる刺激が、ベテランほど脳の変化をもたら したのである           ――エレノア・マグアイアー博士
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 ところで、朝食をとると、血液中のブドウ糖が増えることによって、線維芽細胞成長因子――FGFというものが増加するのですが、それはとくに海馬に作用するのです。これは食後2時間30分ぐらいがピークとなります。このとき、FGFは正常の7倍ぐらいに増加するのです。それは、海馬の機能を活性化させ、その結果として記憶力が向上するのです。
 ですから、午前6時に朝食をとると、直後は胃や十二指腸に血液が集まるので、脳に行く血液は減ってぼんやりしますが、午前8時30分頃になると脳は活性化し、仕事をするときは最高のコンディションになるのです。
 ブドウ糖を補給してから2時間30分――この時間を覚えておくと、何かと便利です。何かの試験を受験するときになど、試験の2時間30分前に食事するとベストコンディションでのぞめるはずです。以上
           
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2007年11月15日

●手指を鍛えると脳が活性化する

●手指は大脳の出先器官である

 何年か前の話ですが、カルフォルニア大学で一風変わった実験が行われるのをテレビで見たことがあります。その実験とは、校舎の屋上から生卵を投げて地上の学生たちがそれを割らずに両手で受け止めるというものだったのです。
 成功させるのはとても難しいですが、何回か練習したら、絶対にやれないことではないと思う人が多いと思います。なぜ、そう思うのでしょうか。
 これをロボットなどの機械でやることは絶望的に困難なことですが、人間の手の微妙な感覚――その衝撃吸収の精巧な制御能力なら、やれるのではないかと思ったからなのでしょう。事実成功する学生も何人もいたのです。このように人間の手は、実に精巧にできているのです。
 実は子どもの場合、手指の発達と脳の発達とは、成長過程を通してリンクされているのです。そのように考えてみると、昔から伝わる子どもの遊びには意識的に手指を使うものが多いことに気がつきます。
 あや取り、じゃんけん、お手玉、けん玉、ベーゴマなどなどです。子どもにとって、手を用いて遊ぶことは成長の重要なステップであり、子どもは手を使うことによって、自然に脳と心を発達させていくのです。
 指には感覚神経がはりめぐらされています。したがって、指でふれた対象が何であるかを判断することができます。テーブルの上にいろいろなものを置いておき、目隠しして、それらを指で触れて当てることを考えてみてください。
 おそらくかつて目にしたものであれば、そのほとんどを指でちょっと触れただけで当てることができるはずです。指の感触から入った情報が脳に届き、過去の体験にプラスして、想像力や判断力がダイナミックに作用した結果、それが何であるかを判断できるのです。すなわち、指先の動きは脳のセンサーそのものといえるのです。
 ドイツの偉大なる哲学者カントは「指は大脳の出先器官である」といっています。大脳は中心溝という溝で、前頭葉と頭頂葉に区切られています。その溝の前頭葉寄りには随意運動に関係する運動野があり、頭頂葉寄りには触覚や温覚などの皮膚感覚に関係する体性感覚野があります。このように、手指の動きは脳の動きと密接な関係があるのです。手はカントがいうように、まさしく脳の出先器官になっているのです。

●手指の強化は心の強化につながる

 NHKの今年の大河ドラマは「風林火山」――それも山本勘助を中心として展開するという新しい演出です。このドラマの中で仲代達矢演ずる武田信虎がしきりと手の中で何かを転がして、パチパチ鳴らしているのに気がついた方もおられると思います。手の中にあるのは、おそらく3個のクルミであり、それを転がして手の運動をしているのだと思います。
 手を強くするということは脳を活性化させることであり、健康につながるのです。クルミの転がしといえば、米国の著名な実業家、ジョン・デイヴィソン・ロックフェラーが、このクルミ回しの健康法を実施していたことはよく知られています。ロックフェラーは壮健であり、98歳で亡くなるまで現役を続けたといわれています。
 とくに手指を頻繁に使う仕事の代表はピアニストでしょう。単に手を動かすだけではなく、イマジネーションや感性の動きを指の動きに連動させ、音楽を作り上げているのです。このように、ピアノをはじめとする楽器の演奏は決まりきった単純な運動ではなく、複数の筋肉が相互に関連し合って働く協調運動であり、それが脳の活性化につながるのです。
 そのせいか、ピアニストには長寿を全うする人が少なくないのです。名ピアニストであったウラジミール・ホロヴィッツは、85歳で亡くなるまで精力的に演奏会を続け、死の直前にはレコードの吹込みをやっていたというのです。
 ピアニストほどではありませんが、PCを使い、キーボードを打ちながら文章を作成することも脳の活性化を促すよい方法です。キーボードに慣れないうちはキーを探しながら打つため、疲労を感ずる人が多いと思います。それは、指が疲労し、指に直結している脳が疲労するからです。
 しかし、キーボードに慣れ、リズミカルに文字が打てるようになると、打つリズムに思考の流れが乗ってくるのです。これは、指と目と脳が共鳴しはじめている現象です。このレベルに達すると、指の疲労は感じず、思考もラクになってくるのです。このことだけでも、指の強化は心の強化に結びついてくることがわかると思います。
 ここで大事なことは、何か文章を書くときは、まず下書きを書いて、それをワープロで打つというのではなく、下書きをせず、キーボードを打ちながら直接文章を作っていくということです。ワープロは、昔のタイプライター――清書マシンではないのです。何回でも書き直しができるのですから、頭に浮かんだことをキーボードで文章にしていけばよいのです。
 PCの前に座っていても文章は出てこないのです。指が動くと脳が働き、文章は自然に出てくるのです。なかなか最初の部分が書けないときは、何でもいいですから、文字を打ってみることです。「書けないな。困ったな」でもいいのです。そうすると、不思議に文章が出てくるものです。手指と脳の関係については次回も研究していきます。以上                  
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2007年11月22日

●正しい指の運動と握りこそ”生きた手”である

●人間にとって「自由な手」ほど大事なものはない

 人間の手足は魚では「ひれ」に当たるのです。ひれは水中の移動に不可欠なものです。この魚のひれは、カエルなどの両棲類やトカゲなどの爬虫類では足に進化しています。足は陸上を移動するのに必要なものであり、そこでは指も一定の働きをするのです。また、魚のひれは鳥では翼に進化しています。翼は空中を移動するのに不可欠なものになっています。
 哺乳類の一部は手足を使って樹上生活を始めています。このとき手足は枝にぶらさがったり、何かを掴む働きをしたのです。そのうち、哺乳類の一種である人間は樹から下りて、後ろ足だけで歩行するようになります。つまり、直立歩行をするようになったのです。
 そうすると手が自由になり、やがて道具を使うようになります。これに伴い手の動きを制御する大脳が発達するようになります。このように人間の手は、進化の最終段階で獲得されたものなのです。
 手と指の関係ですが、指は手の分かれたものであり、逆に手は指を総合したものです。それも単に総合しているのではなく、手はシステムとして指を総合しているのです。人間の動作を考えてみると、朝の起床からはじまって、洗顔洋服の着脱、食事、仕事というようにすべてが手を使うことによって行われるものばかりです。それらの手指の動きのコントロールはすべて大脳が行っており、手指は大脳の指令によって動いているのです。
 手がいかに人間にとって大切であるかを示す証拠として「手」という字を使う言葉がたくさんあるということが上げられます。思いつくままにいくつか上げてみると、例えば野球であれば「野手」「投手」「捕手」などがあります。これらは仕事の内容をあらわしています。「担い手」「受け手」「聴き手」という表現もあります。
 それから「握手」「手を組む」「手を切る」「手伝う」「手加減」「手に負えない」「手合わせ」「手短に」など、実にたくさんあるのです。握手は互いに利き手を相手に預け、互いに握ることで、武器を持っていないことを示す儀礼に発するといわれます。それから、法を犯した者には「手錠」をかけて、手の働きを封じて何もできないようにさせる――このように考えると手がいかに大事なものかわかると思います。

●指の骨の強度は健康と比例する

 「手の強さ」と健康とは密接な関係があります。生まれた直後の赤ん坊には既に十分な握力が備わっています。生後間もない赤ちゃんに鉄棒を握らせると自力でぶらさがることができるのです。凄い握力です。
 したがって、老年になって極端に握力が落ちて、物が握れなくなったり、理由もなく持っているものを落とすという症状が出たときは脳梗塞を疑ってみる必要があります。脳梗塞のリハビリテーションでは、足の回復よりも手の回復は遅くなるといわれます。それは手の運動が高度に分化したシステムであり、脳がやられると回復が遅くなるからです。そういう場合、指をしっかりと動かすリハビリテーションをすると、効果があるといわれます。指を動かすことによって、脳の障害をある程度回復させることは可能なのです。
 また、老化の進行を調べる方法のひとつとして、指の骨を調べる方法があります。この方法はカルシウムの沈着の度合いを見て、骨がどの程度もろくなっているかを判断するのです。
 人間の身体は使わないと衰えるのです。歩くことをやめると、単に足腰が衰えるだけでなく、足の骨に体重がかからなくなることによって、造骨細胞の活動が弱くなるのです。そうすると骨が減って、足の骨は弱くなってしまうのです。骨は使わないと、そのカルシウム分が血液の中に溶け出してしまうので、骨のカルシウムの沈着の度合いから骨の強度がわかるのです。
 骨の強度は筋肉の使用頻度に比例するといわれます。筋肉は使うことによって太く強くなります。その筋肉にかかる張力が刺激となって、骨を頑丈にするのです。したがって、手を握ったり、離したり、指を回したりすることを繰り返すと、脳が活性化され、健康を維持することができるといわれます。
 東大病院の現役医師である栗田昌裕氏は、両手の指をリズミカルにぐるぐる回転させる「指回し体操」の考案者ですが、これによる健康法を提唱しています。栗田氏は、剣道でもゴルフでも上達の鍵を握るのはグリップの強さにあるとして、近著において宮本武蔵の『五輪書』の次の一節を引用し、指の握りの重要性を説いています。文中「居着く」とは、「リズムを失う」という意味です。これによると、小指と薬指の重要性がわかりますが、ヤクザが不始末をした者の小指をつめさせる理由がこれでわかります。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 太刀の持ち方は、親指・人差し指を浮いた感じで持ち、中指を締めず
緩めず薬指・小指を締める感じで持つのである。手の形には、たるみがあることは悪い。(中略)総じて、太刀ででも、素手ででも、“居着く”ということを嫌う。居着くのは、死んだ手である。居着かない のが、生きた手である。よくよく心得ないといけないものだろう。   ――宮本武蔵「五輪書」より――栗田昌裕著『脳と体に効く指回し
               教室』より 健康人新書/廣済堂出版
―――――――――――――――――――――――――――――― 以上
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2007年11月29日

●指回し体操は老化を抑える効果がある

●指の動作で心をコントロールできる

 昔から「書は人を表す」といわれます。最近の入社試験では、本人に会う前に、特定のテーマに基づく作文を事前に提出させ、その結果によって面接するかどうかを決める企業が多くなっています。
 今どきのことですから、作文はメールで送らせる企業が多いなかで、作文をわざわざ原稿用紙に書いて履歴書と一緒に郵送することを求める企業があります。なぜ、そのようなことをするのでしょうか。
 作文を提出させるのは、文章を見ればその人の品格や性格それに教養の程度が手に取るようにわかるからですが、メールでは筆跡が分からないので、わざわざ手書きの作文を郵送させるのです。文章の内容に加えて、文字の書き方を見ると、さらに一層その人の人となりが見えてくるのです。
 事実、筆跡は個人を特定する重要な証拠として日本では筆跡鑑定が犯罪捜査に活用されていますし、外国では重要書類へのサインの筆跡が重視されます。この場合、字が上手に書けているかどうかは問題外です。どのような字を書いているかが重要です。きちんとして、ていねいに書いた文字とそうでない文字の差は明白であり、そこに性格がにじみ出ています。
 一方、気が乗らないで適当に書いた文字は筆跡にそれが表れていますし、心が乱れているときに書いた文字は、筆跡にも乱れが出ているものです。筆跡には心が宿り、人格を反映するといわれるゆえんです。
 筆跡が人格を表すのであれば、それは指の動作でつくられるので、逆から考えると、「指の動作を変えると人格が変化する」といえるのです。指の鍛錬をすることは単に指を強くするだけでなく、脳に刺激を与えて心を変化させることにつながるのです。
 長年修行を積んだ僧侶などの書いた書には、どことなく人の心を打つ力が秘められているといわれます。座禅を深く行じ、禅定という精神状態に入った人の書いた書を顕微鏡で観察すると、粒子の整列の度合いが高いといわれます。座禅によって心が整うと、指の運動に乱れがなくなり、その結果、高い粒子の整列が見られるのです。
 座禅を組むときは独特の手印を組みます。左右の親指の指先を合わせ、他の4本の指は、左手の指を上、右手の指を下にして重ねます。これを「法界定印(ほうかいじょういん)」というのですが、座禅中に雑念が生ずると、この手印が崩れるといわれています。しかし、禅定の状態に入ると、安定した心の状態が維持されるので、手印は崩れることはないのです。

●指の基本回旋法というものがある

 それでは、指をどのように鍛えれば良いのでしょうか。
 指の運動にはいろいろなやり方がありますが、東大病院の現役医師、栗田昌裕氏の開発した「指回し体操」が有名です。人気番組「おもいッきりテレビ」で紹介されて爆発的なブームになったからです。
 栗田先生の本から、その基本回旋法をご紹介します。
 両手の指を曲げながら、左右の指と指を合わせます。親指、人指し指、中指薬指、小指をそれぞれ接触させるのです。そうすると、両手でドームのようなかたちができます。これを「フィンガードーム」といいます。
 このフィンガードームのかたちを崩さないようにして、それぞれの指を回すのが基本回旋法です。ポイントをまとめます。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
        1.左右の指を一本ずつ回転させる
        2.フィンガードーム形を崩さない
        3.指と指は接触しないようにする
        4.右回しと左回しをそれぞれ行う
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 親指を最初に回します。右回しを10回、左回しを10回、続いて人指し指中指、薬指、小指のそれぞれにも同じことをします。全部で100回です。難易度としては、親指と人指し指はやさしく、中指は中ぐらい、薬指と小指はかなり難しいです。とくに薬指は思うように回せず、無理に動かそうとすると、フィンガードームが崩れてしまいます。
 しかし、ピアノやタイプライターをやった人は、薬指を単独で動かすことに慣れているので、上達は早いと思います。自分の指であるのに、このようにうまく動かない指があることを知っておくのも無駄ではないと思います。そして何回もやっているうちには動かせるようになるということも・・・。
 栗田先生によると、薬指を回すのがとくに難しいのは、50歳代、60歳代の男性だそうですが、個人差はあるということです。男女の比較では、女性の方がうまく回せるパーセンテージが高いということです。そして、うまく回せるようになると、老化をストップさせる可能性があります。指の回転が脳を刺激し、身体全体がスムーズに動くようになるからです。
 詳しくは、栗田先生の次の本を読んで訓練することをお勧めします。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
  栗田昌裕著 『脳と体に効く指回し教室』/健康人新書/廣済堂出版
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2007年12月06日

●「ぶらり途中下車の旅」的散歩の勧め

●工夫すれば「散歩」も健康に十分寄与する

 かつて「ジョギング」が健康の決め手のようにいわれたことがあります。そのため、老若男女こぞってジョギングをはじめ、一大ジョギングブームになったことがあるのです。
 しかし、ジョギングは「有酸素運動」であり、ある程度のスピードで一定時間以上持続的に走る必要があります。とくに脂肪燃焼を目的とする場合、脂肪が効果的に燃え始めるのは運動を開始して20分ほどしてからなので、それ以上の時間をかけてやることになります。
 有酸素運動は全身持久力向上に役立つだけでなく、中程度の強さにとどめておくと、体内の糖代謝、脂肪代謝を改善するので、生活習慣病の予防、治療に役立つのです。ちなみに、有酸素運動の一つであるエアロビクスダンスは「有酸素の」を意味する英語「aerobic」 からとった名前であることも覚えておいて損はないでしょう。
 しかし、ジョギングはかなり激しい運動なので、始める前に十分なストレッチなどの準備体操をする必要があり、とくに高齢者にとってはかなり身体の負担になるケースが多いので注意が肝要です。ジョギングのやり過ぎで亡くなるお年寄りは少なくないのです。
 ジョギングの流行の後にきたのは「ウォーキング」です。しかし、ウォーキングもなかなかきつい運動なのです。背中を伸ばし肘は軽く曲げ、足をまっすぐ伸ばして踵がつくようにし、少し汗ばむ程度のスピードで歩くというのが基本です。したがって、ウォーキングはジョギングと少しも変わらないきつい運動であり、お年寄り向きの運動とはいえないでしょう。
 そこでお勧めしたいのは、散歩です。散歩であれば、ゆっくりとマイペースで好きな場所をぶらぶら歩く――それでいいのです。ゆっくりと歩きながら、周囲の風景を眺めたり、季節の花を見たり、鳥のさえずりに耳を傾けて、楽しみを味わいながらゆったりと歩くのです。また、iPodかMDウォークマンに音楽を録音して、それを聴きながら散歩するのも良い方法であり、やっている人は多いようです。音楽は脳に刺激を与えるのです。
 このようにして歩くと、脳が広い範囲にわたって活性化するのです。足腰を動かすだけでなく、視覚や聴覚の運動野を大いに刺激するからです。それも意識して毎日違うルートを歩くようにすると、右脳を刺激するので、脳はフル回転して活性化します。知らないところを歩くと、右脳にはその場所の地図ができ上って行くからです。

●長寿旅番組『ぶらり途中下車の旅』に学ぶ

 日本テレビ系列で、毎週土曜日の午前9時30分からの1時間番組に『ぶらり途中下車の旅』というのがあります。毎週ひとつの鉄道路線を決めてタレントが途中下車していろいろな場所を訪ねる列車・旅番組です。
 散歩の途中にたまたまあったレストランに入って食事をしたり、和菓子屋でお菓子を食べたり、珍しいものを売っているお店があると、入ってお店のご主人の話を聞いたりと、なかなか興味ある番組です。
 この番組は、1992年10月3日から放送されている長寿旅行・列車旅番組なのです。スタートから昨年暮れまでは30分番組だったのですが、今年から1時間番組に昇格したのです。
 脳を活性化させる散歩のお手本はこの番組の中にあります。まず、最寄り駅の周辺からはじめてください。いつも自分が降りる側とは逆の側をぶらりと散策してみましょう。そうすると、自分が住んでいるごく近くであるのに、まるで知らない光景が広がっていることを発見するでしょう。
 そこを歩きながら、まさかタレントのやるようにいろいろな人に話しかける必要はありませんが、珍しいお店を発見したら入ってみたり、ケーキ屋さんがあったら食べてみるぐらいのことはできると思います。
 こういう体験をすると、脳にフレッシュな刺激を与えるので、脳が広く活性化するのです。新しい未知の場所を訪ねることは、冒険心というものを刺激します。冒険心は、未知の世界を切り開くことによって脳を刺激し、脳に無限の空間を作り上げます。脳が作り上げたこの無限の空間は、どんどん拡大して行くことになります。
 このように未知な世界を旅するといっても、別に海外旅行をしなくても自分の住んでいる最寄の駅からはじめて、『ぶらり途中下車の旅』でやっているように降りる駅を変えていけば良いのです。そうすれば、無限に脳にフレッシュな刺激を与える小さな旅を体験することができるのです。
 定年退職者で自分の住まいの付近を散歩する人は多いようですが、いつも同じ道を歩いているケースがほとんどです。脳にとって未知の場所を体験すると右脳が働いて脳に地図が刻み込まれて行くので、一度体験したコースを通るときは右脳は働かないのです。したがって、同じ場所を散歩しても脳は活性化しないことになります。
 そういう意味で『ぶらり途中下車の旅』の散策法は、脳をフレッシュにさせる散歩のしかたのヒントを与えてくれます。また、番組で紹介されている場所に実際に行ってみて、テレビで紹介されたお店に入ってみる――こういうやり方もお勧めです。以上                         
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2007年12月13日

●それでもあなたはタバコを吸いますか

●マリファナのほうがタバコより習慣性がない

 今週は愛煙家にとって少々耳の痛い話しをします。東京駅丸の内の地下一階のホールにかなり広いガラス張りの空間があります。別に椅子が用意されているわけではなく、待合室ではありません。実はコレ、喫煙空間なのです。
 出勤前の午前8時30分頃、そこでは大勢の人がタバコを吸っています。外から眺めると大勢の人が檻に入っているようにみえます。今までなかっただけに何となく異様な眺めです。タバコを吸う場所が日増しに減って、遂に愛煙家は、こういう喫煙空間に押し込められてしまったようです。喫煙空間があるということは、駅のそれ以外の場所では禁煙ということを意味しています。
 ところで現在米国では、次のようなことがまことしやかにささやかれているといいます。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
    マリファナのほうがタバコより習慣性がなく、害も少ない
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 そんな馬鹿な!――そう考える人は多いと思います。しかし、タバコは普通考えられているよりもはるかに恐ろしいものなのです。これからそのことを実証していきたいと思います。
 タバコの活性成分は「ニコチン」です。これは一度に大量摂取すると死にいたるという急性毒性を持っているのです。もし、紙巻きタバコを10本も食べれば――食べられませんが――人間は確実に死んでしまうのです。
 だからこそ紙巻きタバコに火をつけて吸うのです。火をつけると、熱でニコチンの大部分が破壊されるので、体内にはごくわずか量のニコチンしか吸収されないのです。だから、死なずに済んでいるといえます。しかし、ごくわずかの量でも積もり積もれば、身体にとって有害であることは誰でも理解できるはずです。そのことを認識していない愛煙家はいないはずです。
 ニコチンは、その組成を見ると、神経伝達物質である「アセチルコリン」に似ており、覚醒剤やコカインのように脳の中枢神経に興奮をもたらす働きをします。もっともそれは覚醒剤やコカインよりもはるかに軽微であり、疲れたときに吸うと、頭がスッキリするように感じられるのです。つまり、麻薬などより、タバコは即効性が強いのです。
 しかし、精神的依存性は、タバコの場合、アルコールやマリファナよりも強いのです。したがって、吸い始めるとなかなかやめられないのです。冒頭に述べた「マリファナのほうがタバコより習慣性がなく、害も少ない」は、決してウソではないのです。

●ニコチンが蓄積すると脳障害を引き起こす

 ニコチンは、確かに脳に軽い興奮作用をもたらしますが、同時に血管を収縮させる作用があります。ニコチンを吸収することによって、動脈や毛細血管が縮み、流れる血液の量が低下します。そのため、脳にいかなければならない血液の量が減ってしまうのです。
 脳細胞は大量の酸素を必要とするのですが、ニコチンはその酸素を運ぶ血液の流れを阻害するわけです。これでは、脳はフル活動できないのです。それでもニコチンを身体に吸収し続けると、さらに血管は収縮し、軽い脳障害を起こすところまでいくのです。これは、自覚症状のないまま少しずつ進行するので気がついたときは手遅れになってしまうのです。
 ある医学博士が次の実験をしたのです。一分間に2本ずつの割合でタバコを吸い、15分間続けさせる――つまり被験者に15分間に30本のタバコを吸わせて、実験的にヘビースモーカーを作り上げたのです。
 そして、ある問題を出して正確な答えを出すまで、どくらい時間がかかるかを調べたのです。その結果は次の通りです。
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   フィルターなしのタバコ ・・・・ 通常より12%の遅れ
   フィルター付きのタバコ ・・・・ 通常より 6%の遅れ
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 このように大量にニコチンを吸収すると、明らかに脳の機能は低下するのです。タバコを吸うと頭がスッキリするので、むしろ脳は活性化するなどという人はいますが、この実験はそれがウソであることを示しています。
 しかし、それでもやめられないのがタバコなのです。そういう場合、どうしたらよいかについて、この実験をした医師のアドバイスを紹介しておきます。
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         1.一日に数本程度でやめること
         2.ふかして、肺に入れないこと
         3.先端だけ吸って、あとは消す
         4.必ずフィルターをつけて吸う
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 歩きタバコが条例で禁止され、愛煙家は公園などで吸っています。しかし、これもやがて禁止される運命にあります。東京駅の喫煙空間もやがてなくなる日がくると思います。健康は病気になってはじめてわかるものです。害があるということがわかっているタバコはやめるのが得策であると思います。 
posted by キーヘルス at 05:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 脳と老後 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月20日

●日本人は左脳を使い過ぎている

●虫の音が聞こえない西洋人

 ある日本人の学者がキューバで開催された学会に出席したときの話です。そのときの会議は、窓から蝉時雨のように虫の音が入ってきて、その学者は会議に集中できなかったというのです。ところが西洋人たちは、慣れているのか、虫の音は全然気にならないとみえて、熱心に会議に参加していました。
 夜になって何人かの学者たちと宿舎のホテルに戻るさい、道路わきからまた虫の音が聞こえたので、立ち止まって聞き惚れて、そのすばらしさを学者たちに伝えたのですが、彼らにはまるで通じなかったのです。彼らは不思議そうな顔をして「先生はお疲れのようですから、今日はお休みください」といたわってくれたというのです。
 この日本人の学者は東京医科歯科大学の角田忠信教授なのですが、この体験から、日本人と西洋人は耳の構造が違うのではないかと疑問を持って調べはじめたところ、興味深いことが次々とわかってきたのです。
 耳は脳につながっています。一般的にいって、左耳から入った音は右脳によって処理され、右耳から入った音は左脳で処理されるといわれます。その特徴を簡単にまとめると次のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
      右脳 → 音楽脳 ・・・・・ アナログ的
      左脳 → 言語脳 ・・・・・ デジタル的
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 右脳はアナログ的な情報を直感的に処理する脳であり、左脳はデジタル的な情報を論理的に処理する脳ということになります。
 ところが、虫の音を聞くのはどちらの脳か調べてみると、西洋人は機械音やノイズと同じように音楽脳、すなわち、右脳であるのに対し、日本人は言語脳すなわち、左脳で処理していることがわかったのです。
 西洋人は虫の音も車の騒音と同じようにうるさい音としか聞こえないのに対し、日本人は人の話し声と同じように左脳で虫の音を聞いているのです。角田教授がキューバ人の討議に集中できなかったのは、人の話し声と虫の音が一体となって左脳に入ってくるため、うまく処理ができなかったことが原因であったことがわかったのです。

●自然音を言語脳でとらえる日本人

 『虫の声』という誰でも知っている童謡があります。日本では虫の音に聴き入る文化があるのです。
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   あれ松虫が鳴いている  チンチロ チンチロ チンチロリン
   あれ鈴虫も鳴き出した  リン リン リン リン リーン リン
   秋の夜長を鳴きとおす  ああ おもしろい 虫の声
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 この童謡のように、日本人は虫の音を左脳――言語脳で処理するので、擬音や擬態語に変換して聞いているのではないかと角田教授はいっています。確かに蝉は『ミーン・ミーン』とか、『ツクツクボーシ』とか鳴き、『チンチロ・チンチロ』とか、『スイッチョ・スイッチョ』とか、虫のどの鳴き声も擬音で表現しています。
 虫の音だけではなく、風の音も日本人は「左脳」で感じており、『びゅー、びゅー』『そよそよ』『ゴーゴー』というように、すべて擬音で表現していることがわかります。明らかに言語に直しているのです。こういうことは西洋人には見られない現象なのです。
 これは、日本語に原因があるといわれています。
 それは、日本語に母音が多いことです。確かに日本語は子音すべてに母音が組み合わさって成り立っており、なかには「愛―アイ」や「青―アオ」のように母音だけでできている言葉もあります。これは世界中でも日本語だけの特徴なのだそうです。
 それでは、日本人の場合、音楽はどちらの脳で処理しているのかというと、西洋人と同じように右脳で処理しているのです。しかし、邦楽については左脳で処理が行われるのです。つまり、ヴァイオリンやピアノは右脳で聴き、三味線や琴は左脳でチン・トン・シャンと擬音化して聞いているのです。
 しかし、これがマイナスになることもあります。外国語を習得する場合、日本人は外国語を左脳に入れてしまいます。したがって、いちいち翻訳しながら読解する学習をするということになり、どうしてもその習得が遅くなります。外国語は、そのまま右脳で音声として聞き入れればよいのですが、それが日本人にはできない――だから日本には外国語会話学校がたくさんあるのです。
 以上のことが本当であるとすると、日本人は何でもかんでも左脳を使い、かなりくたびれています。左脳の使い過ぎです。2つの脳は意識して使いわけることが大事なのです。ときどき音楽を聴いてリラックスする――これは日本人にとって2つの脳のバランスを取り、左脳を休めるためにも必要です。
 また、「音楽」と「自然音」を聴きながら運動をすると、脳は右脳と左脳を行ったり来たり(右往左往)し、脳が活性化されます。これは日本人にのみ許された脳の活性化の方法です。                 
posted by キーヘルス at 04:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 脳と老後 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月27日

●ブドウ糖の補給と脳の活性化の関係

●マイクロソフト社の会議室に飴玉のある理由

 人から聞いた話ですが、米国のマイクロソフト社の会議室には、氷とミネラウオーター、それに飴玉が置いてあるそうです。氷とミネラウオーターはわかりますが、なぜ飴玉が用意されているのでしょうか。
 関係者に聞くと、それは脳にブドウ糖を与えるためだというのです。会議で良いアイデアを生み出すために、参加者の脳は働きやすい状態にあることが大切ですが、そのためにはブドウ糖の補給が効果的なのです。脳が働くためにはブドウ糖を切り離しては考えられないからです。
 1950年に米国のハーペンという学者がやった実験があります。小学生を対象に45分おきにブドウ糖を与えながら、朝から昼まで算数の問題を解かせたのです。その結果、ブドウ糖が与えられるたびに、その直後は解答の正解率が跳ね上がったというのです。
 こんな実験もあります。ブドウ糖を与えた人と与えない人に時速70キロ以上で車を運転させたのです。そうしたところ、ブドウ糖を与えない人の運転ミスが急増したというのです。とくに時速100キロを超えると、その差は顕著になり、ブドウをとらない人のミスがとった人の6倍にもなったそうです。なお、時速70キロ以下では、両者にほとんど差はなかったといいます。
 人間が生きていくために必要なエネルギーは、呼吸によって体内に取り込んだ酸素と食べ物からとったブドウ糖が化学変化を起こしたときに生ずるものなのです。
 もちろん、脳以外の各器官でもエネルギーの供給は必要です。しかし、脳以外の器官は、ブドウ糖をいったん乳酸に分解したあと、再び肝臓や筋肉で「グリコーゲン」として加工できるので、ブドウ糖の貯蔵ができるの対し、脳はそれができないのです。脳はブドウ糖を消費するだけで、貯蔵できないので、体外からそれを取り入れるしかないのです。
 しかも、脳のブドウ糖の消費量は他の器官に比べると大きいので、頻繁にブドウ糖を補給する必要があるのです。日本では、一日朝、昼、晩の3度の食事と、午後3時に「おやつ――甘いもの」を食べる習慣がありますが、これは脳にブドウ糖をバランスよく与えるための昔の人の知恵なのです。

●総カロリーを変化させず食事を4回に分ける

 身体の貯蔵庫といわれる肝臓で貯蔵できるグリコーゲンの量はせいぜい55グラム程度といわれています。これで脳以外の身体全体のブドウ糖を補うのですからけっして多い量ではないのです。
 健康体といわれる人の体内には、血液100CC中に約100ミリグラムのブドウ糖があります。これが血糖値です。しかし、ジョギングやエアロビクスなどの少し激しい運動をしたり、何かを真剣に考えて脳を集中的に使ったとすると、通常血糖値は60〜70ミリグラムぐらいに下がるのです。
 血糖値が60〜70になると、音に対して敏感になり、情緒が不安定になって、ささいなことに腹を立てるようになるといいます。さらに血糖値が50ミリグラムまで下がると、手先に震えがきたり、ものごとに集中できなくなったりとして、仕事が手につかなくなるのです。
 トライアスロンなどの激しいスポーツをする選手は、運動のさいときどき飴玉を口に放り込んで、一時的にブドウ糖を補給しているといわれます。このさい重要なのは、血糖値を上げることではなく、つねに正常な血糖値を保つ必要があるということです。減りすぎてもいけないし、増えすぎても、もちろん、いけないのです。
 京都大学名誉教授の大島清氏は、正常な血糖値を保つために一日4食を提案しています。ちょっと考えると矛盾しているように思えますが、1日の総カロリーを変えずに、食事の回数を4回にするとよいといっているのです。
 さらに、食事に当たっては、まず、食事の4分の1ぐらい食べたら、いったん箸を置いて、10分くらい休み、そしてまた食べ始める――これを繰り返すことを勧めています。または、一口食べたら箸を休め、口の中のものを意識して何度も噛むというやり方もよいといいます。
 どうしてこのようなことをするのかというと、食事の途中で休むと、一時的に脳は満腹感のシグナルを出すからです。このシグナルが出ると、今まで食べていた量が食べられなくなり、ダイエット効果につながるのです。
 痩せたいからと、1日3回の食事を2回に減らす人がいますが、逆効果になることが多いのです。食事の回数を減らすことで、逆に一度に多くの量をとるようになってしまい、太ってしまうからです。食事の速さと量は比例しているのです。早ければ多く食べてしまい、ゆっくり食べると量は減るのです。
 最近塾通いの小学生たちに成人病が増えているといわれます。それは塾の前や後に食べるハンバーガーなどが一食分になって、総カロリーが増える4回食事が習慣となっているからです。大島清教授は次のようにいっています。
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 教育とは知育、体育、徳育を指すが、現代では「食育」というものを加える必要があるのではないか。このままでは人間の家畜化が進むばかりである。
       ――大島清著、『頭脳200%活性法』より PHP文庫
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posted by キーヘルス at 04:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 脳と老後 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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