2010年09月09日

●「ストレス」とは何か

 「ストレス」はあらゆる病気の原因になります。ところで、ストレス
とは何でしょうか。ストレスには次の3つの種類があります。
――――――――――――――――――――――――――――――――
           1.物理的ストレス
           2.精神的ストレス
           3.化学的ストレス
――――――――――――――――――――――――――――――――
 物理的ストレスというのは、人間が生きているだけで感じてしまうス
トレスのことです。暑さ、寒さ、冷たさなど肌で感じてしまうものは、
物理的ストレスとして分けられます。騒音などもその一つです。
 精神的ストレスは、別名心理的ストレスともいい、現代社会において
はこのストレスが一番多いと考えられています。仕事、家事、人間関係
などの自分が苦手とする分野に対して、長時間その環境にいることで、
体が自然と拒否してしまい、精神的ストレスに陥ってしまいます。物理
的ストレスが誘発してしまう恐れもあり、油断できないといえます。
 化学的ストレスとは何でしょうか。聞きなれない名前ですが簡単に説
明すれば、「薬、お酒、栄養不足」から来るストレスを化学的ストレス
といっているのです。お酒はストレスを発散させるものとして、昔から
親しまれていますが、「飲みすぎては体に毒」という言葉があるように
体にストレスとして負担を掛けていきます。また、薬は現代の医療にお
いて、欠かせないものですが必ず副作用というものがあり、これがスト
レスになるのです。
 ストレスは個人差というものがあります。ストレスに強い人と弱い人
はいるのです。そこで自分のストレス度というものを知っておくと、参
考になると思います。ストレス度診断は多くのサイトで無料でやってく
れますが、40の質問に答えるだけでチェックできるメディシナル研究
所の「ストレス度チェック!」をぜひ受けてみてください。
――――――――――――――――――――――――――――――――
        http://www.genic-net.com/stress/
――――――――――――――――――――――――――――――――
 ストレスに強いかどうかは生まれつきの性格や経験によって左右され
ると考えられてきたのですが、最近の脳科学の研究によって、そうでは
ないことがわかってきたのです。ストレスに対する耐性の違いは脳の活
性化と深くかかわっているのです。

●だるまに象徴される「図太い心」

 ストレスに対する耐性──東邦大学医学部統合生理学教授の有田秀穂
氏は、これを「図太い心」と名づけ、だるまを例にとって説明していま
す。だるまが「図太い心」を体現しているというのです。
 第1は「だるまには手がない」ということです。
 手がないということは、いやなものを払いのけたり、ものごとをうま
くコントロールできない状況をあらわしています。だるまに手がないこ
とは、ストレスや悩みに対して、無駄な抵抗をしないことを意味してい
るのです。
 第2は「だるまには足がない」ということです。
 足がないということは「逃げる」ことができないことを意味します。
手がないので戦うことをせず、足がないので逃げられないのです。ただ
そこにじっとたたずんで耐えるだけです。
 第3は「七転び八起き」できるということです。
 だるまは手足がないので、叩かれたり、押されたりするとすぐ倒れて
しまいます。しかし、いったんは倒れても、すぐ起き上がります。「七
転び八起き」です。仕事でミスして上司に叱られ落ち込んでいたが、次
の日は何事もなかったように出勤してくる──これは倒れても元に戻る
ことができる人です。
 第4は「片目が描かれている」ということです。
 大願成就を祈るだるまには、はじめから片目が描かれています。あの
目こそ「図太い心」の象徴なのです。これは人間の生き方の象徴です。
だるまの目について、有田教授は次のように述べています。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 大願が成就すると、ダルマのもう片方の目に目玉が入ります。信念を
 もち続け困難や障害にあっても「七転び八起き」でやっていくと、最
 後には願いが叶う──そんな象徴として、私たちは願をかけて、神棚
 や目立つ場所にダルマを飾るわけです。願いというのは人によって、
 お金持ちになりたい、いい成績をとりたい、美しくなりたい、試合に
 勝ちたいなどさまざまでしょう。そうした夢や希望を思い描いて、私
 たちは努力を積み重ねます。そして、努力が実を結んで夢や希望が叶
 い、お金持ちになったり試合に勝ったりといった報酬が私たちにもた
 らされると、それに合わせてもう片方の目が開かれるわけです。そう
 して見ると、願いごとが叶ったときに入れる片目は、「生きる目標」
 の象徴と呼んでいいでしょう。         ──有田秀穂著                 
            『ストレスに強い脳、弱い脳』/青春新書
――――――――――――――――――――――――――――――――
                  ──[ストレスと脳の話/01]
posted by キーヘルス at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ストレスと脳の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月16日

●セロトニンとは何か

 駅のプラットフォームなどを歩いているとき、誰かが強くぶつかって
きて、「失礼」とも何もいわず、行ってしまったとします。こういう状
況になれば、誰でもハラは立ちます。
 しかし、そのハラの立ち方が時によってかなり違うことがあります。
いつまでも「イヤなやつだ」という不快感が残るときもあり「まあ、悪
気があったわけではないから」と忘れてしまうときもあると思います。
 このときの気分を医学的にいうと、セロトニンの状態の違いによるも
のなのです。もっと正確にいうと、セロトニンの量がどのくらい脳内に
蓄積されているかによって違ってくるのです。
 脳内にセロトニンがたっぷりあると、図太い心が生じ、少々のことで
は気持は動揺しないのです。しかし、セロトニンが少ないと、ちょっと
したことでハラを立てたり、しかもそれをいつまでも忘れないのです。
 ところで、セロトニンとは何でしょうか。ウィキペディアでは、セロ
トニンを次のように定義しています。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 セロトニンはヒトを含む動植物に一般的に含まれる化学物質で、トリ
 プトファンから生合成される。人体中には約10ミリグラムのセロト
 ニンが存在しており、そのうちの90%は小腸の粘膜にあるクロム親
 和細胞(EC細胞とも呼ばれる)内にある。クロム親和細胞はセロト
 ニンを合成する能力を持っており、ここで合成されたセロトニンは腸
 などの筋肉に作用し、消化管の運動に大きく関係している。ここで合
 成されたセロトニンの一部(総量の約8%)は血小板に取り込まれ、
 血中で必要に応じて用いられる。残りの2%のセロトニンは中枢神経
 系にあり、これらが人間の精神活動に大きく影響している。
                       ──ウィキペディア
――――――――――――――――――――――――――――――――
 これから問題にするセロトニンは、中枢神経系にある約2%のセロト
ニンのことです。セロトニンを分泌するセロトニン神経は、脳幹という
場所に存在する脳内神経です。
 脳内には合計で約150億個の神経細胞があるといわれていますが、
そのうちの数万個がセロトニン神経に当たります。脳幹というのは脳の
中枢部のことであり、その中央の部分にセロトニン神経はあるのです。

●大脳について知る必要がある

 セロトニン神経を理解するには脳についての知識が必要になります。
ごく簡単にエッセンスについて説明します。
 大脳について知っておくべき重要な部分は、次の5つです。以下、こ
れについて簡単に説明します。
――――――――――――――――――――――――――――――――
            1.大脳皮質
            2.大脳辺縁系
            3.前頭前野
            4.視床下部
            5.脳幹
――――――――――――――――――――――――――――――――
 「大脳皮質」とは、脳の外側をおおっている部分であり、言語や知能
をつかさどっています。人間が動物に比べて高度な知能を持っているの
は、大脳皮質が発達しているからなのです。
 「大脳辺縁系」は、大脳皮質の奥にある部分であり、感情を司ってい
ます。喜怒哀楽や快・不快などの感情や情動はここから発生しているの
です。
 「前頭前野」とは、大脳皮質にあり、人間として社会生活を送るのに
不可欠な働きをする部分です。集中力や意欲もこれに関わっています。
 「視床下部」とは、大脳辺縁系の奥にある構造であり、食欲や性欲な
ど生存に欠かせない行動に関連しています。
 「脳幹」とは、脳神経の中枢部であり、呼吸、血液循環など生命の維
持に不可欠な機能を司り、脳や体全体の活動レベルを調節する働きをし
ます。進化の仮定でいうと、最も古くから存在する部分であることから
「最古の脳」といわれています。セロトニンは脳幹の縫線核という部分
に当たります。いわば脳のへその部分にセロトニン神経はあるのです。
 「脳幹」について概要をまとめておきます。脳幹の定義は次のように
なっています。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 脳幹は中枢神経系を構成する器官集合体の一つ。延髄、橋、中脳、間
 脳、を合わせて脳幹と呼ぶ。狭義の「脳幹」では間脳すなわち視床お
 よび視床下部を除外するが、この意味をより明確に表すため下位脳幹
 という用語が用いられる。また、脳幹・(間脳)・小脳・大脳を合わ
 せて脳と呼ぶ。脳幹は多種多様な神経核から構成されており、その機
 能も当然ながら多様であり、この小さな部分に多数の生命維持機能を
 含む。                   ──ウィキペディア
――――――――――――――――――――――――――――――――
                  ──[ストレスと脳の話/02]
posted by キーヘルス at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ストレスと脳の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月24日

●セロトニン神経はどういう働きをするか

 言葉を話したり、体を動かす、何かを見る──実はセロトニンには直
接肉体を動かす機能がないのです。心や体の活動レベルをコントロール
しているだけです。セロトニン神経の働きをまとめると次の5つになり
ます。
――――――――――――――――――――――――――――――――
      1.すっきり爽快な意識をつくり出す
      2.平常心を維持する
      3.交感神経を過度に興奮させる
      4.痛みを軽減させる
      5.よい姿勢を維持する
     ──有田秀穂著『ストレスに強い脳、弱い脳』/青春新書
――――――――――――――――――――――――――――――――
 セロトニンは、大脳皮質の活動を調節してその働きを高いレベルに保
つ働きをします。その結果、1の「すっきり爽快な意識をつくり出す」
ことが可能になるのです。
 人間の心は、内外のさまざまな刺激やストレスを受けますが、セロト
ニンはそれによって大きな感情の振幅を抑えて、平静を保つ機能を果た
すのです。これが2の「平常心を維持する」働きです。
 セロトニンは自律神経をコントロールすることができます。自律神経
には、交感神経と副交感神経の2つがありますが、セロトニンは交感神
経に適度の刺激を与えるのです。これが3の「交感神経を過度に興奮さ
せる」です。以上の1〜3は、有田秀穂氏のいう「図太い心」を育てる
のです。
 セロトニンは、痛みによる神経の伝達を抑制する働きをします。そし
て気分を落ち着かせます。これが4の「痛みを軽減させる」です。
 姿勢を維持するには、首の筋肉、背骨まわりを支える筋肉、下肢の筋
肉、表情を作る筋肉などがありますが、セロトニンはそれらの筋肉に適
度の緊張感を与える働きをします。これが5の「よい姿勢を維持する」
です。

●ストレスと脳内セロトニンの関係

 セロトニンがそのように重要なものであるなら、それを多く作りだす
ことはできないのでしょうか。
 結論からいうと、それは困難なのです。脳内のセロトニンの量は日々
減っていくからです。それには次の2つの理由があるのです。
――――――――――――――――――――――――――――――――
       1.セロトニンは自己受容体であること
       2.ストレスに弱いと量が減少しやすい
――――――――――――――――――――――――――――――――
 第1は「セロトニンは自己受容体であること」です。
 自己受容体とは何でしょうか。
 セロトニン神経は各細胞のセロトニン受容体に向けてセロトニンを送
るのですが、自分自身に対してもセロトニンを分泌しています。脳の神
経系細胞は末端から軸索というケーブルを使って他の神経細胞と繋がっ
ており、データの伝達を行います。この軸索を通して戻ってきたセロト
ニンを受け取るのがセロトニンの自己受容体で、受容体の数が多いとセ
ロトニンの放出を抑えようとする働きがあるのです。
 第2は「ストレスに弱いと量が減少しやすい」です。
 人間の体は、肉体的、精神的なストレスを受けると、脳内の視床下部
のストレス中枢が刺激されるのです。そうすると、セロトニンが多く放
出され、その量が減少してしまうのです。
 しかし、現代社会はストレスがあまりにも多いのです。ストレスのな
い場所はどこにもないのです。しかし、ストレスは主観的なものだとい
うことです。同じ状況でも、それをストレスと感じるかどうかは、人に
よって違います。たとえば、原稿を依頼され、その締め切りが切迫して
きたとき、それをストレスと感じる人もいれば、逆にやる気が高まる人
もいます。
 また、まわりに困っている人がいるとき、それを面倒なことと感じた
り、ストレスになると感じる人もいれば、逆に助けることに喜びという
ものを感じる人もいるのです。どちらになるかを決めるのは、主観的な
受け止め方しだいなのです。このことは、実際にストレスにどう対処す
るかを考える場合にとても重要なことです。要するに、ストレスはエネ
ルギー源にもなれば、その一方で病気の原因にもなるということです。
 しかし、それにも限界があります。いずれにせよ、ストレスに対応す
るセロトニンの分泌量が少ないと、心はネガティブになり、脳の活動は
次第に低下していくのです。その結果、引き起こされるのが鬱病なので
す。鬱病と脳内セロトニン濃度の低下が関係していることは、鬱病で自
殺した人の解剖結果から明らかになっています。
 鬱病になったまま、セロトニン神経を鍛えることを怠ると、セロトニ
ンはますます減っていく一方になります。それではどうすれば、セロト
ニン神経を鍛えることができるのでしょうか。次回にお話しします。
                 ──[ストレスと脳の話/03]
posted by キーヘルス at 20:22| Comment(0) | TrackBack(0) | ストレスと脳の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月30日

●セロトニン神経を鍛える3つの方法

 セロトニンを増やすには、脳内にあるセロトニン神経を鍛えて、セロ
トニンが十分に分泌されるようにする必要があります。セロトニン神経
を鍛える基本は次の3つです。
――――――――――――――――――――――――――――――――
         1.太陽の光を浴びること
         2.リズム運動をすること
         3.スキンシップの必要性
――――――――――――――――――――――――――――――――
 びっくりする位簡単なことであり、誰でもできることなのです。この
3つのトレーニングを毎日20分〜30分続けることによって、セロト
ニン神経の活動レベルを高い水準で維持できるのです。

●太陽の光を浴びること

 第1は「太陽の光を浴びること」です。
 太陽の光を浴びる──おそらくこれはセロトニン神経を活性化させる
最も効果的にして簡単な方法です。そうかといってそんなに長い時間浴
びる必要はないのです。5分からせいぜい30分、長くても1時間以内
です。
 セロトニン神経を活性化させるには、2500ルクス以上の照度が必
要なのです。ちなみに蛍光灯の光は500ルクスであり、会社や自宅の
照明での代替は無理なのです。その点日中の太陽光であれば、曇ってい
ても5000ルクスはあるので、太陽光を浴びることが必要なのです。
 なぜ、2500ルクス以上の照度の光を浴びることが必要なのでしょ
うか。
 網膜に与えられた光の刺激が脳に伝わって、それがセロトニン神経を
活性化させるからです。晴れている日に外に出て普通に歩くだけでも十
分光は取り入れることができますが、サングラスをかけるのは効果的で
はないのです。肝心の目を覆ってしまうと、目の網膜に与えられる光の
刺激が弱くなるので、好ましくないからです。
 それでは、太陽の光を浴びる時間帯はいつがベストでしょうか。
 それは朝がベストなのです。それは次の2つの理由によるものです。
――――――――――――――――――――――――――――――――
     1.日中に比べて朝は太陽の照度が強くないこと
     2.副交感神経から交感神経に支配が切り替わる
――――――――――――――――――――――――――――――――
 大昔から人間の一日の行動を見ると、基本的には太陽が昇ると目覚め
て、太陽が沈むと眠りにつくというものです。これはセロトニン神経を
鍛える重要な生活習慣だったといえます。

●リズム運動をすること

 第2は「リズム運動をすること」です。
 リズム運動とは、一定のリズムで筋肉の緊張と弛緩を繰り返す運度で
あり、この条件を満たしていれば、何でもいいのです。ウォーキング、
ジョギング、自転車、ダンスなどです。一番簡単なのは、ウォーキング
です。歩くとき心がけることは、できるだけリズミカルに体を動かすこ
とです。リズムに乗って軽快に歩くと、セロトニンの分泌が盛んになっ
てくるのです。
 しかし、ウォーキングで気をつけるべきことは、ダイエットを目的と
した運動とはぜんぜん違うということです。ダイエットを目的とする運
動は、いかにエネルギーを消費して脂肪を燃焼させるかに重点が置かれ
ますが、セロトニン神経を鍛えるのはそんなに激しい運動でなくてよい
のです。
 一番ベストなのは、朝晴れている日は外に出て適当に歩くことです。
なぜなら、太陽の光を浴びながら、リズム運動ができるからです。

●スキンシップの必要性

 第3は「スキンシップの必要性」です。
 人間が行うスキンシップのなかでセロトニン神経の活性化につながる
のは、人と人が軽く触れ合うことです。これをトレーニングにしたのが
「タッピングタッチ」です。有田秀穂先生はこれを次のように紹介して
います。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 タッピングタッチを開発したのは、心理学者の中川一郎氏です。原則
 的に2人でおこなうもので、相手の背後に立ち、背中や肩、首筋、頭
 を、左右交互にごく軽く叩くようにポンポンとタッチします。正面か
 ら顔を向き合わせるわけではないので、緊張や圧迫を感じることがあ
 りません。叩くリズムは1秒間に1回くらい。ちょうど心臓の拍動と
 同じというのが重要なポイントです。その点からすれば、これもまた
 広い意味でのリズム運動といってよいかもしれません。
──有田秀穂著『ストレスに強い脳、弱い脳』/青春新書
――――――――――――――――――――――――――――――――
                  ──[ストレスと脳の話/04]
posted by キーヘルス at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ストレスと脳の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月07日

●過ぎたるは及ばざるが如し

 『過ぎたるは猶(なお)及ばざるが如し』という格言があります。物
事には程度というものがあり、その程度を過ぎると、かえって不足する
のと同じようによくないことになるという意味です。
 実はセロトニンを増やすのに、この格言はぴったりと当てはまるので
す。たとえば、太陽の光を浴びるといっても、限度を超えると、セロト
ニン神経は弱まってしまいますし、ウォーキングもやり方しだいで、セ
ロトニンが出るウォーキングとそうでないウォーキングに分かれます。
 それでは、どの点に気をつければよいでしょうか。そのキーワードは
次の2つです。
――――――――――――――――――――――――――――――――
             1.時間
             2.集中
――――――――――――――――――――――――――――――――
 第1は「時間」です。
 例えば、ウォーキングをやり過ぎると、疲れてきます。気候のよいと
きはいいですが、暑い日に30分も歩けばバテてしまいます。疲労感を
感ずるようになると、セロトニンの「自己抑制作用」が働いて、セロト
ニンはかえって減少し、しまいには出なくなります。これに関して、有
田秀穂先生は次のように述べています。
――――――――――――――――――――――――――――――――
セロトニンの自己抑制作用は、セロトニン神経のしくみと深く関係し
ています。セロトニンの神経細胞の軸索には、その細胞自身に戻る
「自己受容体」が存在しています。トレーニングを長時間続けている
と、この自己受容体が働いてセロトニンの分泌量が抑制されてしまう
のです。疲れたうえに、セロトニン神経を鍛える効果がないのでは意
味がありません。ですから、トレーニングで大切なのは、1回の時間
を長くするのではなく、むしろ一日5分でも10分でもいいから、毎
日続けるということにあるとおわかりいただけるでしょう。 
──有田秀穂著『ストレスに強い脳、弱い脳』/青春新書
――――――――――――――――――――――――――――――――
 第2は「集中」です。
 ウォーキングをしながら考え事をしている人がいます。これは歩行に
集中していない証拠であり、この状態では、セロトニンは増えないので
す。理性や言葉を司る大脳の部分を働かせていると、ウォーキングして
いても、セロトニン神経は活性化されないのです。

●音楽を聴きながらウォーキングするのは効果的

 誰でもできる簡単な方法があります。それは音楽を聴きながらウォー
キングをすることです。それも片耳ではなく、両耳を使うステレオヘッ
ドフォンで聴くと効果的です。
 できれば、アップテンポのリズミカルな曲がよいでしょう。そうした
音楽を聴いていると、人間はほかのことを考えられないので、自然に歩
くことに集中できるのです。
 しかし、音楽でも歌詞のついているもの、つまり歌は好ましくありま
せん。歌詞の内容が耳に入ってくると、何を歌っているのかを聴こうと
します。そうなると、大脳皮質の言語野といわれる部分が働いてしまい
セロトニンは増えなくなってしまうのです。
 講演テープ、英会話のテープを聴きながら、ウォーキングしている人
がいますが、同じ理由では効果がないのです。とくに人間の声は、その
まま言語脳を働かせてしまうので、効果がないのです。
 それではなぜ、集中するとセロトニン神経が活性化されるのでしょう
か。
 その秘密は脳波──とくに「α2波」にあるのです。リズム運動に集
中していると、だんだん脳波が変化していき、α2波という特別な脳波
が出てくることがわかっています。α2波とは、α波のなかでも、その
人が物事に集中していて、しかも平常心の状態にあるときに出る脳波の
ことです。
 つまり、ウォーキングに集中することによって、セロトニン神経は活
性化され、それが大脳に影響を与えてα2波という脳波を発生させるこ
とで、気分が大きく改善されるのです。
 集中とは、ひとつの事柄に意識を向けることをいいます。しかし、歩
くことに集中しなければならないとあまり意識すると、それはマイナス
になります。つまり、意識しないで無心の境地になれればよいのです。
自然にそうなるのが一番良いのです。音楽を聴くことはそれを助けるの
です。
 人間ですから、いろいろな雑念にとらわれることがあります。それは
それでいいのです。それにこだわらないことが大切です。いろいろアタ
マに浮かんでくるが、それにとらわれずにいると、いつの間にか消えて
いく──そういう状態が持続できればよいのです。
 この状態をつくるにはやはり図太い心を持つことが必要になります。
回りの刺激に動ずることなく、平常心でそれに対処する──これができ
ると、セロトニンは増加していくのです。      
                 ──[ストレスと脳の話/05]
posted by キーヘルス at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ストレスと脳の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月14日

●セロトニンにとって最高の食品はバナナである

 「必須アミノ酸」といわれるものがあります。必須アミノ酸とは、そ
の動物の体内で合成できず、栄養分として摂取しなければならないアミ
ノ酸のことです。必要アミノサン、不可欠アミノ酸ともいいます。「必
須アミノ酸」には、次の9種類があります。
――――――――――――――――――――――――――――――――
    1.トリプトファン      6.バリン
    2.リジン          7.ロイシン
    3.メチオニン        8.イソロイシン
    4.フェニルアラニン     9.ヒスチジン
    5.トレオニン
――――――――――――――――――――――――――――――――
 セロトニンに関係があるのは「トリプトファン」です。トリプトファ
ンを含む食品は、豆類、赤身の魚、乳製品、卵などがあります。いずれ
も日本の家庭料理によく使われるものであり普通に食事をしていれば、
セロトニンが不足することはないでしょう。果物でいうと、バナナやア
ボカド、青汁の原料であるケールにも、トリプトファンは多く含まれて
います。
 しかし、トリプトファンが脳内に取り込まれるには、炭水化物の助け
が要りますし、トリプトファンを合成するには、ビタミンB6が必要に
なります。炭水化物は、人間が活動するエネルギーを作り出しているの
ですが、脳の唯一のエネルギー源になるブドウ糖は、基本的に炭水化物
を起源とするものです。
 炭水化物は米をはじめとする穀類、イモ類、果物などに多く含まれて
います。よく毎日の食事を減らしてダイエットをしている人がいますが
炭水化物をとらないと、脳の活動が低下してしまう恐れがあります。
 ビタミンB6は、サンマ、イワシ、サバ、タイ、カツオ、マグロなど
の魚や玄米、大豆などに多く含まれています。このように考えると和食
はセロトニン神経にとっては、最適の食事といえます。とくに玄米は、
ビタミンB6と炭水化物が豊富であることとバナナはトリプトファン、
ビタミンB6、炭水化物のすべてを含んでおり、セロトニン神経にとっ
てベストな食品です。忙しくて食事が取れないときなどは、バナナだけ
は食べるようにすれば、脳の活動は衰えないでしょう。

●夜ぐっすり眠ることが良い循環をつくり出す

 ストレス──これは人間が現代社会で生活していくうえで避けては通
れないものです。有田秀穂先生は、ストレスに関して、2人の人物を引
き合いに出して、面白いことをいっています。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 ストレスは、お釈迦さまのことばでは「苦」に当たります。お釈迦さ
 まは、悟りを開くまで、あらゆる苦行をして自分自身にストレスをか
 けました。その結果、何ひとつとして苦に打ち勝つものは見出せない
 ことを知りました。つまり、生きることは苦であり、その苦に勝つこ
 とはできないというのがお釈迦さまの結論だったのです。もう一人ス 
 トレスについて重要な教えを残してくれたのは、カナダのハンス・セ
 リエ(1907〜82年)という医学者でした。セリエはストレスに
 関する研究を続け、ストレス学説を世界ではじめて発表しています。
      ──有田秀穂著『ストレスに強い脳、弱い脳』/青春新書
――――――――――――――――――――――――――――――――
 ハンス・セリエは恐ろしいことをいっています。セリエの学説による
と、ストレスがかかる状態が長期化すると、人間は胃潰瘍になり、免疫
力が落ちて、副腎皮質というところから「ストレス・ホルモン」を出す
ようになります。このストレス・ホルモンは、血圧を高めて糖尿病を起
こす原因になります。そしてこの状態が長く続くと、最終的には死にい
たることになります。
 多少イヤなことがあっても、一晩ぐっすり眠るとすっかり忘れてしま
う人がいます。要するに図太い心を持っている人です。問題は、このぐ
っすり眠るということが重要なのです。
 もし、ぐっすり眠れないと、ストレスが残っていろいろなところに悪
影響が出てしまいます。したがって、ぐっすり眠るということは、スト
レス解消に一番良いのです。
 それでは、どうすればぐっすり眠ることができるのでしょうか。
 眠りに深くかかわっているのは、メラトニンというホルモンです。こ
のホルモンは「睡眠ホルモン」と呼ばれています。それは、メラトニン
が脳から分泌されると、グッスリと眠ることができるからです。ところ
が、そのメラトニンをつくる原料になるのがセロトニンなのです。
 セロトニンは寝ている間は生成されないのですが、昼に太陽の光の下
で活動し、多くのセロトニンが蓄えられていると、メラトニンが多くつ
くられるので夜ぐっすりと眠ることができるのです。つまり、質の良い
睡眠をとるためには昼間にセロトニンがたくさん出るような生活をする
ことが必要なのです。
 夜ぐっすりと眠れると、朝の目覚めもよく、日中は多くのセロトニン
が出る生活を送る可能性が高いのです。質の高い睡眠→良い目覚め→セ
ロトニンが出る行動──この良い循環をつくるべきです。
                  ──[ストレスと脳の話/06]
posted by キーヘルス at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ストレスと脳の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月21日

●大脳の前頭前野はどのような働きをするか


 「心の目」というものがあります。2つの目とは違うもうひとつの目
──第3の目というべきものです。大脳はその位置によって次の4つに
分かれます。
――――――――――――――――――――――――――――――――
       1.前頭葉       3.側頭葉
       2.頭頂葉       4.後頭葉
――――――――――――――――――――――――――――――――
 前頭葉の中で一番先頭の部分を「前頭前野」といいます。ちょうど額
の部分と考えればよいでしょう。脳科学では、他人とコミュニケーショ
ンをとったりそれによって共感を覚えたりする部分は前頭前野の額の中
央に位置する「腹内側」(ふくないそく)という部分がそれを担うとさ
れています。
 この腹内側が何らかの事故で機能しなくなると、何が起こるでしょう
か。
 こんなケースがあります。これは実話ですが、交通事故によって、前
頭前野に杭が刺さって、その機能が失われた人がいるのです。しかし、
大脳の他の部分は異常はなかったのです。これについて、有田秀穂先生
は次のように説明しています。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 実は、表面的には何ひとつ変わっていないのです。手足の動きにも不
 自由はなく、目も開いており、ことばも普通に話せる。食事も自分で
 とれ、排泄もできる。要するに、一見したところは事故前と何も変わ
 っていなかったのです。それだけを見れば、生きていくうえでの大き
 な障害はないといえるかもしれません。ところが、大きな問題がある
 ことがわかりました。なかでも重要なのは、社会生活ができなくなっ
 てしまったこと。具体的にいうと、他人とのコミュニケーションがと
 れなくなつてしまったのです。その人は、確かにことばを話すことが
 でき、他人のことばを理解することもできました。ところが、相手の
 気持ちをくみ取ることができなくなってしまったのです。
     ──有田秀穂著 『ストレスに強い脳、弱い脳』/青春新書
――――――――――――――――――――――――――――――――
 人間のような霊長類は、知能が発達しているので、一人でも生活して
行けるように考えられますが、実は人間は群れのなかでしか生活ができ
ないのです。そのため「人間」は「人と人の間」と書くのです。
 仲間と一緒に生きるためには、コミュニケーションは不可欠であり、
言葉だけでなく、総合的な情報から相手の気持ちを読みとる「心の目」
が不可欠なのです。したがって、前頭前野に損傷を受けて「心の目」を
失った人には通常の社会生活はできないのです。

●前頭前野の4つの働きと3つの神経

 前頭前野には次の4つの働きがあります。この4つの働きによって、
人間は人間らしく生きられるのです。
――――――――――――――――――――――――――――――――
          1.強い意欲を持つ
          2.相手に共感する
          3.物事に集中する
          4.切り替える能力
――――――――――――――――――――――――――――――――
 これら4つの機能はすべて前頭前野でコントロールしているのです。
どの部分が何を担当しているか簡単に説明します。
 1の「強い意欲を持つ」部分は、前頭前野の内側、ちょうど目の上の
部分です。2の「相手に共感する」は、額の中央部、すなわち、腹内側
の部分です。3の「物事に集中する」は腹内側の左右外側の上方部分、
4の「切り替える能力」は左右のこめかみに当たる「腹外側」と呼ばれ
る部分です。
 これら4つの能力がどのように発揮されるかは、神経伝達物質がどの
程度脳内に分泌されるかによって左右されるのです。というのは、脳内
には膨大な神経のネットワークがあり、互いに神経伝達物質をやり取り
しながら、そのときどきの心や神経状態をコントロールしているからで
す。ここまで説明してきたセロトニンもそうした神経伝達物質のひとつ
であり、セロトニンを使って情報を伝達しているのがセロトニン神経な
のです。
 「ドーパミン」という言葉を聞いたことはないでしょうか。ドーパミ
ンも神経伝達物質のひとつです。ドーパミンを使って、情報伝達を行っ
ている「ドーパミン神経」というのがあるのです。上記の前頭前野の4
つの働きと神経との関わりは次のように対応しているのです。
――――――――――――――――――――――――――――――――
   1.強い意欲を持つ ・・・・    ドーパミン神経
   2.相手に共感する ・・・・    セロトニン神経
   3.物事に集中する ・・・・ ノルアドレナリン神経
   4.切り替える能力 ・・・・    セロトニン神経
                ──有田秀穂著の前掲書より
――――――――――――――――――――――――――――――――
                  ──[ストレスと脳の話/07]
posted by キーヘルス at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ストレスと脳の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月28日

●ドーパミンとノルアドレナリンの違い

 前回、前頭前野の4つの働きと対応している神経についてその関係を
示しましたが、再現して解説します。
――――――――――――――――――――――――――――――――
    1.強い意欲を持つ ・・・・    ドーパミン神経
    2.相手に共感する ・・・・    セロトニン神経
    3.物事に集中する ・・・・ ノルアドレナリン神経
    4.切り替える能力 ・・・・    セロトニン神経
――――――――――――――――――――――――――――――――
 第1の働きは「強い意欲を持つ」ことです。
 人間は何かの目標を目指して一生懸命に努力するというメカニズムが
脳に仕組まれているのです。ドーパミンという神経伝達物質は、私たち
に心地良さや快感をもたらします。前頭前野にドーパミンが分泌される
と、「快」の情動が引き起こされるのです。
 ドーパミンと性格とは関係があるのです。DNAによって、脳内にあ
るドーパミンのレセプター(受容体)のタイプが異なっていて、これが
好奇心などの性格に影響しているのです。ドーパミン・ハイのタイプの
人は、「当たり前のこと、日常的なもの」にすぐ飽きてしまって、「変
わったこと、新しいもの」を求める傾向が強いのです。ドーパミンの分
泌が強すぎると、問題が起きる可能性があるのです。
 第2の働きは「相手に共感する」ことです。
 人間は必ずしも言語を用いないでも相手の心を読むことができます。
「以心伝心」という言葉はそういうことを意味しているのです。これは
共感力の源泉であり、セロトニン神経が深く関係しています。
 他者とのコミュニケーションには次の2つがあるのです。
――――――――――――――――――――――――――――――――
       1.  バーバルコミュニケーション
       2.ノンバーバルコミュニケーション
――――――――――――――――――――――――――――――――
 バーバルコミュニケーションは言語によるコミュニケーションのこと
でありノンバーバルコミュニケーションは非言語によるコミュニケーシ
ョンを意味するのです。これは、相手のしぐさ、表情、動作などから、
その人の心の中、意図、目的を読み取ることをいうのです。
 現代はどちらかというと、バーバルコミュニケーションが発達し、非
言語コミュニケーションが弱くなっています。政治家や評論家などをテ
レビで見ていると、口数が多いだけで、相手の立場や状況を思いやる想
像力が欠けているように思います。それは共感力の不足を意味している
のです。

●共感力と切り替え能力が欠如すると恐ろしいことが起きる

 第3の働きは「物事に集中する」ことです。
 集中力はテキパキと仕事をこなす能力のことです。このとき、前頭前
野の左右外側にノルアドレナリンが分泌されているはずです。ノルアド
レナリンは、ドーパミンと同じく興奮物質ですが、もたらす興奮の質が
違うのです。ドーパミンは既に述べたように「快」をもたらすのですが
ノルアドレナリンは「怒りによる興奮」であるとか、「危険に対する興
奮」をもたらすのです。
 ノルアドレナリン神経が活性化される原因は、体の内外から加わるス
トレス刺激なのです。生命に何かの危険が及ぶと、ノルアドレナリンは
大量に分泌されるのです。これによって集中力を高めて人間はこれまで
さまざまな危機を乗り超えてきたのです。
 第4の働きは「切り替える能力」です。
 切り替える能力とは、自分の生き方や主義を途中で思い切って切り替
えて、柔軟にこれまでの生き方を修正する能力です。この能力は、共感
力と共にセロトニン神経が深く関与しているのです。有田秀穂先生は、
この共感力と切り替える能力がうまく機能しなかった悲惨な例としてあ
の秋葉原無差別殺傷事件を上げて、次のように述べています。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 2008年6月8日、東京の秋葉原で悲惨な事件が起こりました。2
 5歳の男が、トラックではねる、ナイフで切りつけるなどして、17
 人に危害を加え、そのうちの7人が亡くなったという無差別殺傷事件
 です。私は、事件についての報道を読み進めるにつれて、まさに事件
 の背景にあるのが共感カの欠如だと実感しました。一人きりで生活し
 ていた犯人は、誰にも読まれるあてのないブログをひたすら書き続け
 て発信していたといいます。ただでさえ他人とのコミュニケーション
 が希薄なうえに、数少ないコミュニケーションを言語だけに頼ってい
 たわけです。いや、もうそれはコミュニケーションとは呼べないもの
 でした。なにしろ、読者からの反応を期待しないで、一方通行で発信
 するだけでよしとしていたからです。
      ──有田秀穂著『ストレスに強い脳、弱い脳』/青春新書
――――――――――――――――――――――――――――――――
 これによると、共感力を失っているのは、事故で前頭前野をなくした
人だけでないことがよくわかります。 ──[ストレスと脳の話/08]
posted by キーヘルス at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ストレスと脳の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月04日

●「涙」には3つの種類がある

 前回、共感力と切り替え力が欠如すると秋葉原事件のような恐ろしい
ことが起きるということを述べました。この共感力と切り替え力をつか
さどるのが、セロトニン神経なのです。
 有田秀穂先生は、「共感」という側面から最も重要なこととして、次
の3つのことを上げています。
――――――――――――――――――――――――――――――――
           1.   涙を流す
           2.呼吸を合わせる
           3. グルーミング
――――――――――――――――――――――――――――――――
 第1は「涙を流す」です。今回は涙について考えます。「涙」という
のは、目の涙腺から分泌される体液です。眼球の保護がその主な役割で
す。こういってしまうと身も蓋もないのですが、有田秀穂先生によると
涙には3つの種類があるというのです。
 一つは、目が乾くのを防ぐ「基礎分泌」の涙です。
 最近ドライアイの患者が増えているそうですが、それはPCの画面の
見過ぎで、基礎分泌の涙が足りなくなった現象であるといわれます。
 二つは、目に入った異物を流し出す「反射の涙」です。
 これは自分の意思に関係なく、反射的に起きる現象であり、これも眼
球を保護するためのものといってよいでしょう。
 三つは、悲しいときや感動したときに出る「情動の涙」です。
 情動とは、笑ったり泣いたりすることのように、人間が持っている独
特の心の動きをいう言葉です。そういう情動によって出る涙が情動の涙
です。
 これら3つの涙のうち「情動の涙」は、感情の高ぶりによって出るも
のであり、人間しか出ないものなのです。そしてこれは、前頭前野に深
く関係しているのです。それでは、情動の涙はどのようにして出るので
しょうか。

●ウイリアム・フレイの実験

 感情が高ぶったときに、人はなぜ涙を流すのでしょうか。その研究を
した人がいます。生化学者のウイリアム・フレイ二世です。彼は涙は感
情的緊張によって生じた化学物質を体外へと除去する役割があるのだろ
う、という仮説を立てたのです。
 ウイリアム・フレイはその仮説を検証するために実験をしたのです。
実験の内容としては、次の2つの種類の涙を採取してその成分を比較し
たのです。
――――――――――――――――――――――――――――――――
       1.涙を誘う映画を見せて収集した涙
       2.同人に玉ねぎをむかせ収集した涙
――――――――――――――――――――――――――――――――
 ウイリアム・フレイは、自らも被験者になってやってみたのです。8
0人あまりの被験者の涙の比較は、感情による涙は、刺激による涙より
も、より高濃度のタンパク質を含んでいるということを示していたので
す。フレイはその実験内容を含む著書を1985年に出版しています。

●「情動の涙」を流すことは脳にプラスである

 大人になると、めったに人前で涙を見せることはなくなります。悔し
涙や悲しみの涙であっても流せなくなります。しかし、これはストレス
を貯めることになるのです。
 これに対し、映画や良いドラマを見て自然に流れる涙──これこそ情
動の涙なのです。この情動の涙はストレスや自我というものを通り越し
相手に関する共感によって流す涙なのです。有田秀穂先生は次のように
いいます。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 「情動の涙」は、前頭前野が発達した大人になってはじめて流せるも
 のであり、幼い子どもには流すことができません。なぜなら、この涙
 の根本にあるのは「他者への共感」だからです。さまざまな人生経験
 を積むことによって銀幕やテレビ画面の向こうにいる人間の心境を思
 いやることができるようになるのです。
──有田秀穂著『ストレスに強い脳、弱い脳』/青春新書
――――――――――――――――――――――――――――――――
 医学的にいうと、涙が出る直前の状態というのは、交感神経が高まっ
て興奮状態にあるのです。そして涙が出た瞬間、一気に副交感神経に切
り替わるのでその落差は大きいのです。脳がこの状態になると、しばら
くは元に戻れない状態になるといいます。
 こういう場合は、なるべく涙を流す方がよいのです。もし、涙を流す
まいとして我慢したり、涙が出そうな寸前で終わらせると、交感神経が
高まっているのをストップしてしまうわけで、これはストレスとなり、
脳にとってはマイナスの影響が出てしまうことになります。有田先生は
自然に涙の出る映画や、ドラマのDVDを集めてときどき見ているそう
です。               ──[ストレスと脳の話/09]
posted by キーヘルス at 03:22| Comment(0) | TrackBack(0) | ストレスと脳の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月11日

●呼吸を合わせることと共感とはどう関係するか

 前回「共感」という側面から最も重要なこととして3つをあげました
ので再現しておきます。今回は2について考えます。
――――――――――――――――――――――――――――――――
          1.   涙を流す
       →  2.呼吸を合わせる
          3. グルーミング
――――――――――――――――――――――――――――――――
 「呼吸を合わせる」ことは、共感を鍛える効果的な方法です。日本語
に「気が合う」という言葉があります。私たちは文字通りお互いが呼吸
を合わせることで、共感する能力を活性化させることができるのです。
 元新聞記者でVIP800人に取材したことのあるジャーナリストが
次のようにいっています。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 気になる人と、良い関係を築きたい場合。その人と、差し向かいで、
 話している時、簡単にできる一つの方法があります。それは相手と、
 吸う息、吐く息を、相手と合わせるんです。文字通り、「呼吸を合わ
 せる」んですね。相手が話をしている時、言葉を口から出す時は、息
 も出していますから、自分も息をゆっくり吐きます。そして、むこう
 が息継ぎをするときに、自分も息を吸います。これを、自然な風に、
 やります。あまり一生懸命、やろうとして、相手に「この人、何して
 いるんだろう?」と、不審に思われないように(笑)。呼吸を合わせ
 ていると、相手と、波長が合いやすくなります。2人のリズムが、合
 いやすくなります。会話は、リズムが大事ですからね。 
    http://ameblo.jp/sonomugi2/entry-10685119005.html
――――――――――――――――――――――――――――――――
 人間は、本能的に「呼吸を合わせる」能力を赤ん坊の頃から身につけ
てきているのです。赤ん坊はお母さんの腕に抱かれているときは、お母
さんの呼吸を肌で感じそれに合わせているのです。
 幼稚園や小学校では、子どもが社会に出て、多くの人とふれあい、共
感してやっていけるためのさまざまなトレーニングがカリキュラムの中
に含まれているのです。
 その典型的なものに「綱引き」があります。綱引きは、皆で声を合わ
せながら綱を引きます。これは呼吸を合わせて共感力を高めているので
す。綱を引いて勝つことが目的なのではなく、同じグループに属する人
が呼吸を合わせて、仲間意識や連帯意識を高める一種の共感トレーニン
グなのです。
 呼吸を合わせると書いて「合気」いいますが、合気道は呼吸を合わせ
ることで、無駄な力を使わず効率良く相手を制する武術です。合気道独
特の力の使い方や感覚を「呼吸力」ないし「合気」などと表現し、これ
を会得することにより、“合理的な”体の運用によって“相手の力と争
わず”に相手の攻撃を無力化し、年齢や性別・体格体力に関係なく「小
よく大を制す」ことが可能になるとしているのです。

●呼吸を合わせる簡単なトレーニングを実施する

 もうひとつ「呼吸を合わせる」典型的なものに、お祭りにおけるお御
輿かつぎがあります。あの「ワッショイ、ワッショイ」という掛け声は
呼吸を合わせるためのものです。このほか、農民が田植えのときに歌う
田植え歌、猟師が綱を引くときの舟歌も呼吸を合わせるために存在して
いるのです。
 有田秀穂先生は、現代において呼吸を合わせる行為として、サッカー
のサポーターを上げ、次のように述べています。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 私が興味深く感じるのは、サッカーのサポーターの応援です。サッカ
 ーの試合を観ているとわかりますが、サポーターは試合がはじまって
 から終わるまでの約90分間絶えず立ち上がって歌い続けています。
 「ご苦労だな」と思うかもしれませんが、スタジアムに行って観る限
 り、歌い続けていないとあまり意味がないのです。90分も歌い続け
 ることで、サポーター同士に共感が生まれ、いちいちことばで説明し
 なくてもわかる共感カや直感カが鍛えられていくわけです。もちろん
 それと同時に自分たちのストレス解消にもなることはいうまでもあり
 ません。脳科学的に見ると、サッカーのサポーターの応援というのは
 現代版のお神輿かつぎといっていいかもしれません。
      ──有田秀穂著『ストレスに強い脳、弱い脳』/青春新書
――――――――――――――――――――――――――――――――
 2人で行う簡単なトレーニングがあります。椅子に座った人の後ろに
立って次の指示をします。「息を吸って」、「止めて」、「吐いて」。
前に座っている人は,からだの中に詰まっているものを吐き出すような
つもりで,大きく息を吐き、それから,ゆっくり自分のペースで呼吸を
する。後ろの人は,自分の呼吸を前の人の呼吸に合わせます。しばらく
これを続けます。
 これを毎日続けると、セロトニンが分泌されるのです。ヨガのように
1人でもできますが、2人でやる方が簡単であり、長続きします。
                  ──[ストレスと脳の話/10]
posted by キーヘルス at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ストレスと脳の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月18日

●グルーミングとは何か

 「共感」という側面から最も重要なことは次の3つです。今回は最後
として3について考えます。
――――――――――――――――――――――――――――――――
          1.   涙を流す
          2.呼吸を合わせる
       →  3. グルーミング
――――――――――――――――――――――――――――――――
 グル―ミングとは何でしょうか。英語で、そのスペルは次の通りです。
――――――――――――――――――――――――――――――――
  grooming ──”groom” に ”ing” を付け足して、”grooming”
――――――――――――――――――――――――――――――――
 「グル―ミング」という言葉はペットを飼っている人であれば、誰で
も知っています。ペットを撫でることをグル―ミングというのです。現
代はペットブームといわれますが、この現象はそれだけスキンシップの
機会のない孤立した人間が増えていることを意味しているのです。
 しかし、ペットはしゃべらないので、コミュニケーションは成立しな
いという人がいますが、そんなことはないのです。なぜなら、それは、
言語コミュニケーションがないだけであり、前頭前野がつかさどる共感
力を使ったコミュニケーション──非言語コミュニケーション、グルー
ミングがあるからです。
 共感力を使ったコミュニケーションはいろいろあります。仲間と一杯
やるというのもグルーミングですし、女性のよくやっている井戸端会議
もグルーミングの一種なのです。全員が同じ場所にいて、同じ空気を吸
いながら、打ち解けて会話を交わす──これがグルーミングなのです。
 有田秀穂先生によると、非言語コミュニケーションには次の3つがポ
イントになるといっています。
――――――――――――――――――――――――――――――――
           1.   呼吸
           2.心臓の鼓動
           3.   視線
――――――――――――――――――――――――――――――――
 赤ん坊はおなかの中にいるときから、母親の心臓の音を聞き分けてい
ます。そして生まれてからは母親と肌を接しているので、母親の呼吸の
状態を感じているのです。赤ん坊は本能的に母親の呼吸と自分のそれを
合わせるのです。
 そのように呼吸を合わせていると、母親が怒っていれば呼吸が荒くな
りますし、赤ん坊はそれを感じておびえるのです。母親があせっている
ときは赤ん坊も落ち着かなくなりますし、母親がやさしい気持ちでいる
ときは、赤ん坊は安心して穏やかなのです。
 最後に赤ん坊はつねに母親の目を探しています。赤ん坊は母親の目を
見て、それがどこに向いているかを認識しているのです。そういう意味
で乳母車に乗せて赤ん坊を運ぶにはあまり感心しないのです。なぜなら
赤ん坊が母親の視線を感じられないからです。そのため、美智子皇后は
乳母車にバックミラーをつけていつでも母親の視線を見られるようにし
た話は有名です。

●非言語コミュニケーションができない大人の出現

 非言語コミュニケーションができない大人が増えています。どうして
そういう大人が増えたかというと、母親の社会進出が増えて子どもとの
スキンシップが取れないままに過ごす時間が多くなり、子どもは非言語
コミュニケーションを身につける機会が減ってしまうからです。
 現代は物質に恵まれています。とくにテレビは子どもが喜ぶので、母
親は忙しいとつい一人で見せてしまいがちです。これについて、有田秀
穂先生は、次のようにいっています。
――――――――――――――――――――――――――――――――
子どもはテレビを観ていればおとなしいからと、テレビに子守をさせ
る。ところが、テレビというのは一方的なコミュニケーションでしか
 ありません。もり赤ん坊がいくら笑いかけても、テレビは反応してく
 れないのです。そうした環境で日常生活を送っていれば、他人に共感
 することができない人間に育ってしまうのは、ごく自然の成り行きと
 いっていいでしょう。その結果、子どもに脳の発達障害が起こるので
 す。とくに脳のうちでも、人間を人間らしくしている前頭前野という
 のは、人生経験を重ねるにしたがって発達していく部分です。それが
 うまく発達できないわけです。
     ──有田秀穂著 『ストレスに強い脳、弱い脳』/青春新書
――――――――――――――――――――――――――――――――
 最近の子どもはけんかをしないそうです。けんかをすると、どこでや
めるべきかを自然に悟るのですが、けんかをしないと、その歯止めがわ
からなくなるのです。これは現代の陰湿ないじめが起きる原因になりま
す。
 それではそういう共感力を持っていない大人は、もはや直すことはで
きないのでしょうか。そんなことはありません。セロトニン神経を鍛え
前頭前野を活性化させると、共感力は戻ってくるのです。
                 ──[ストレスと脳の話/11]
posted by キーヘルス at 01:00| Comment(1) | TrackBack(0) | ストレスと脳の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月25日

●目標力をつかさどるドーパミン神経

 片目が入ったダルマの置物があります。もうひとつの目は願い事がか
なったときに入れるのです。われわれの脳のなかで「目標力」をつかさ
どっているのは「ドーパミン神経」なのです。
 ドーパミンは交感神経節後線維や副腎髄質に含まれるノルエピネフリ
ンやエピネフリン(ホルモンの一種)という物質とともに生体内アミン
の一種であるカテコラミンという物質のひとつです。
 私たちの食べ物の中に含まれるフェニルアラニンやチロシンというア
ミノ酸がチロシン水酸化酵素によってドーパになり、それがドーパ脱炭
酸酵素の働きでドーパミンになることがわかっています。このドーパミ
ンはさらにドーパミンβ 水酸化酵素という酵素でノルアドレナリンに
なりますし、これはさらにエピネフリンに変わります。
 学生は期末試験でよい成績を取ろうと努力します。そういう行為を脳
内で積極的にバックアップしているのがドーパミン神経なのです。つま
り、ドーパミン神経は、われわれの意欲の源泉であるといえます。その
源を引き起こす力は何かというと、ちょっとわかりにくいかもしれませ
んが、「報酬」なのです。報酬とはある動機によって起こされた行動が
達成されたときに得られるものと考えればいいでしょう。
 人間が日常何かをするときには、意識する、意識しないに関わらず、
必ず何らかの「動機」がその行動の背後にあります。試験に備えて勉強
をしたり、ゲームをしたり、勉強をしたり、スポーツをしたり、ジョギ
ングをしたり、あるいは朝起きて顔を洗うといった習慣などもそこには
「動機」というものがあります。
 ある生理学者が行動中の動物の脳に電極を刺して、どんなときにドー
パミン神経が活動しているかを調べてみたところ、ドーパミン神経は、
そのような行動の動機付けに関連して活動を増すことがわかってきたの
です。われわれのまわりで起こるさまざまな出来事がいいことであれ、
いやで危険なことであれ、とにかく自分にとって意味があって、何らか
の行動を引き起こすような場合には必ずドーパミン神経が活動していま
す。
 つまり、私たちは周囲の環境に適応し、学習しながら、生活するすべ
を会得していきます。言ってみれば人生は学習の連続です。ドーパミン
はそのような学習の強化因子として働いているのです。
 ドーパミン神経は大脳基底核とそれに指令を与える大脳皮質(とくに
前頭前野や帯状回など)に枝を伸ばしてドーパミンを分泌します。そこ
では技能を磨いたり、次第に行動を習慣化したり、そのような個々の行
動をどのような順番に組み合わせて行動を起こすかを企画したり、戦略
を練ったりする働きをしているのです。

●ドーパミン神経は暴走することがある

 ラットを使ったこんな実験があるのです。ラットの脳の特定な場所−
ドーパミン神経のある場所−に電極を入れそこに電気を流す実験です。
といっても人間が電気を流すのではなくて、ラット自身が自ら電流を流
す仕掛けを施しておいたのです。
 それに触れると、電流が流れるスイッチをラットが生活をしているケ
ージの中に設置しておきます。そして、そのスイッチにラットが偶然に
触れたときに電流が流れるようにしたのです。もし、そのときにラット
が不快感を感じたら本能的に二度とスイッチに触れないでしょうし、ど
うということがなければ、スイッチに触れたり、触れなかったりするは
ずです。つまり、スイッチに気を使わないはずです。
 しかし、意外な結果になったのです。ラットは偶然にスイッチに触れ
たあとで、そのスイッチを叩き続けたのです。スイッチが押されて電流
が流れ、ドーパミン神経が刺激されて快を感じると、その快を求めて繰
り返しスイッチを押す結果になったのです。
 この状態が続くと、やがて歯止めが効かなくなり、人間であれば依存
症の状態になってしまうのです。この依存症こそがドーパミン神経の持
つ重大な問題なのです。有田秀穂先生は、依存症について次のように述
べています。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 お酒を飲んだときに得られる快感が忘れられずに、お酒を飲まないと
 生きていられないと感じるようになるのがアルコール依存症。パチン
コで大当たりした快感が忘れられず、その夢を追いかけて朝からパチ
ンコ屋に入り浸るというのがパチンコ依存症です。そのほかに薬物依
存症、買い物依存症といった症状もまた、ドーパミン神経の暴走によ
るものです。 
  ──有田秀穂著『ストレスに強い脳、弱い脳』/青春新書        ――――――――――――――――――――――――――――――――
 このように依存症というのは、ドーパミン神経が強くなり過ぎること
によって、ドーパミン神経が暴走する結果起きるのです。それでは、こ
の暴走を止めるにはどうすればよいでしょうか。
 残念ながら、ドーパミン神経に人間が働きかけて、その分泌量を調節
することはできないのです。ただひとつだけ、ドーパミン神経の暴走は
セロトニンによって止めることができるのです。セロトニン神経が活性
化されればその暴走を止めることができます。        
                  ──[ストレスと脳の話/12]
posted by キーヘルス at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ストレスと脳の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月02日

●2つの原理

 セロトニン神経の権威である有田秀穂先生は、次の2つの原理を対比
させて使っています。
――――――――――――――――――――――――――――――――
           1.ドーパミン原理
           2.セロトニン原理
――――――――――――――――――――――――――――――――
 有田先生は、これら2つの原理の違いを最近の流行語である「婚活」
を例にとって次のように説明しています。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 最近の若い人は、多くの人がドーパミン原理で相手を探しているの
ではないでしょうか。「この人、どれぐらい稼いでくれるのかしら」
「いい生活ができるのかな」というわけです。結局は、すべてをお金
に換算しているわけです。こうしたドーパミン原理で婚活している限
り、いつまで経っても解決はしません。もちろん、女性だけではあり
ません。男性は男性で、「こんな美人と結婚すれば幸せだろうな」
「一緒に連れて歩くと自慢できるぞ」というように、美醜の基準にし
たがって婚括をしてはいないでしょうか。
──有田秀穂著『ストレスに強い脳、弱い脳』/青春新書
――――――――――――――――――――――――――――――――
 ドーパミンというのは、人間の意欲の根源ですが、その源を引き起こ
す力は「報酬」なのです。この「報酬」を前提とする行動を「ドーパミ
ン原理」というのです。したがって婚活をこの考え方でやると、どうし
ても稼ぎとか生活レベルなど、お金に換算してしまう傾向があります。
 しかし、これではたとえそういう理想的な相手が見つかったとしても
幸せな結婚生活が送れるとは限りません。結婚直後こそドーパミンで
「快」の気分になっているかもしれませんが、そのまま最後まで「快」
のままでいられるはずがないのです。
 これに対してセロトニン原理というのは、相手との共感やコミュニケ
ーションを重視する考え方です。結婚というのは、基本的に共感の世界
であり、相手と共感できるかどうかで、幸せな結婚生活が送れるかどう
かが決まってくるのです。有田先生は、共感の世界について次のように
説明しています。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 共感の世界というのは、他者とのゆるぎないコミュニケーションに基
 づいています。赤ん坊とはべったりとスキンシップをして、呼吸を合
 わせなくてはなりません。相手の親兄弟はもちろん、親戚づきあいも
 必要でしょう。そうした新しい社会のなかに、どっぷりと入っていか
 なくてはならないのです。 ──有田秀穂著の前掲書より
――――――――――――――――――――――――――――――――

●江戸時代はセロトニン原理社会 

セロトニン原理で行う典型的な活動にボランティア活動があります。
「情けは人のためならず」という言葉があります。相手に情けをかける
のは、相手のためにする行為のように見えますが、結局は自分のために
なる行為なのです。この言葉はそういうことをいっています。これこそ
セロトニン原理に基づく行動であるといえます。
 利益を追求する企業活動においても、必ずしも儲けを目的とせず、多
くの人のためになる企業の社会的責任に基づく活動があります。そうい
う活動が行われると結果的にはその企業自身に見返りがくるというわけ
です。
 NHKの大河ドラマ『龍馬伝』が終りましたが、国際金融経済学者の
榊原英資氏は『龍馬伝説の虚実/勝者の書いた維新の歴史』(朝日新聞
出版)という本の中で「明治という時代を素晴らしい時代という人がい
るが、江戸時代に回帰することが、今、必要である」と述べています。
 有田氏も「江戸時代はセロトニン原理が中心で動いていた時代」と述
べており、開国前の江戸時代を絶賛しています。つまり、江戸時代の社
会というのは共感力を働かせる社会だったといっても過言ではないので
す。
 侍の世界では、自分を捨てて人々のために何かをする「滅私奉公」と
いう価値観があり、江戸時代の共感力をあらわしています。それこそま
さにセロトニン原理そのものです。そういう意味において、江戸時代は
平和にして理想の時代であったともいえるのです。江戸時代を評価する
榊原英資氏は、坂本龍馬を西郷隆盛や桂小五郎よりもインテリであると
し、本の終りを次の文章で締めくくっています。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 勝や龍馬のような知性派が明治の改革を仕切っていたら、武断派の西
 郷や桂が引き起こした凄惨な戦いや長引いた混乱は、起こらなかった
 かもしれません。歴史にイフ(もしも)はないのですが少なくとも龍
 馬をそうした角度から評価し直す必要があるのではないでしょうか。
 龍馬なら、改革を進めるとともに江戸時代のいい部分を残したかもし
 れません。
──榊原英資著 『龍馬伝説の虚実/勝者の書いた維新の歴史』
(朝日新聞出版)より
 ―――――――――― ──[ストレスと脳の話/13/最終回]
posted by キーヘルス at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ストレスと脳の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。